ヤマネコとのドライブ

本日は仕事が休みだったので、ヤマネコを誘ってパンケーキを食いに出た。天気は、あいにくの雨。ヤマネコ宅の前に車をつけると、彼は、長靴を履いて外に出てきた。「お、長靴をはいた猫だな」と私が笑うと、「うるせえ。その本のせいで、しばらく、長靴を履くのが恥ずかしかったんだぜ」と眉間にしわを寄せた。「もう、吹っ切れたけどな。他人を気にせず好きな服を着れなきゃあ、どうしようもねえよ」
パンケーキの店は、郊外にある。しばらく車を走らせると、窓の外は、畑や田んぼばかりの絵になった。ヤマネコは、外の景色を見ながら、ゴロゴロと喉を鳴らしている。
「えらいご機嫌だな」と私が言うと、ヤマネコは「俺の故郷の景色に、似てるんだ」と笑った。疑問に思って、私が返す。「ええ、君はヤマネコなんだから、故郷は山じゃないのかい。ここはまだ、人里だぞ」
ヤマネコは、不穏な顔で私を見ながら、答える。「俺は、ヤマネコっていう名前だが、家猫だぜ。俺んち、駅近四畳一間なの、知ってるだろ。ヤマネコが、そんな狭い部屋で暮らせるわけ、ないだろ」
私は、「そうか」と言って、黙った。家猫にしては、彼は、巨体すぎるので驚いていたが、失礼にあたるような気がして、口には出さなかった。彼はまた、窓の外に視線を戻し、ゴロゴロと喉を鳴らし始めた。

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