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経験から学び成長する組織にするために#1

株式会社ブレーンバディ執行役員CHROの永井です。
今回は、経験からの学び(経験学習モデル)をテーマに、人材開発について考えていければと思います。
企業活動において、働く人は日々大量の経験をしています。その経験は、人材開発にとって非常に有益な資源です。ただ、全組織が経験資源を活用できている訳ではないのがリアルではないでしょうか。
僕は、日々の経験を成長の機会としてデザインしたうえで提供し、経験から学び、成長に繋げられるような組織をつくっていきたいです。
今回のテーマは少しボリュームが多くなりそうなので、概念整理のパートと実践パートの2回に分けて書いていきます。

経験学習モデルとは?

経験学習とは、行動経済学者のデービッド・コルブ氏が提唱している理論です。「経験」「内省」「持論化(概念化)」「実践」の4つのステップからなるサイクルを繰り返し、経験学習が行われると提唱しています。図で表すと以下のようなサイクルになります。

引用:『図解 人材マネジメント入門』

上記のサイクルを回していくことで、具体的な経験を通してマイセオリー(持論)を紡ぎ出すことができます。日々の経験が、自分の血肉となりより良い実践(仕事)ができるようになるという考え方です。
ビジネスにおいて、1980年代後半以降この経験学習モデルは注目されており、今でも人材開発のアプローチとして多くの現場で使われているものです。個人的にも経験学習モデルは、社内人材開発において非常に効果的なアプローチだと考えています。

なぜ経験学習モデルが注目されるのか

ではなぜ、経験からの学びを重視する会社が多いのでしょうか?その理由は、①大人の学習には特徴があるということ②日々大量の経験をしているということの2つだと考えています。

<①大人の学習には特徴があるということ>
大人の学習は近年、”リスキリング”や”リカレント教育”などと、社会構造の変化から注目されている領域だと思います。今回は特に社内人材開発の切り口で考えていければと思います。大人の学習については、「成人教育論」としてアカデミックな領域も存在しているのですが、その中で、大人の学習者には以下の特徴があると言われています。
・実利的である
・動機を必要とする
・自律的である
・レリーヴァンス(関連性)を必要とする
・目的思考性が高い
・人生経験がある

大人は子どもと比較すると学習準備状態に入っていないケースが多く、子どもより学ぶことが下手なケースが多いです。そのため、自分の利益につながる課題解決のために必要性を感じないと学びが推進されていきません。
また、大人は良くも悪くも自律的に学習します。子どもが教師や大人に依存するのに対して、大人は自分で学ぶための手法などを少なからず探求しようとします。度合いの違いはあれど、大人は学習に対して自己決定的な要素を持っています。
そして、大人はこれまでに多様な「経験」をしています。その「経験」は良い面も悪い面も存在しています。良い面としては、その経験と新たな学びを紡ぎ、良い持論をつくります。悪い面としては、「経験」に価値を置きすぎ、新たな学びをしなくなるケースです。

このように大人の学びには特徴があり、子どもの学びとは異なる部分があります。この特徴から考えると、成果や評価につながる日々の経験を活かし学びに変えることは、比較的目的が明確で実利にもつながる学習体験になります。そのため、経験学習が効果的であることがわかります。
ただし注意も必要です。例えば、日々の経験は、大人にとって良い影響、悪い影響の両側面を持ち合わせています。また、関連性の無い経験や実利・目的に繋がらない経験はネガティブに働く可能性もあります。

<②日々大量の経験をしているということ>
経験からの学びを重視する会社が多い理由の2つ目は、日々大量の経験をしてるということです。これは詳細を説明する必要もないかもしれません。現場では日々大量の経験が発生します。この経験を学習資源として活用できれば、コストパフォーマンス良く、効率的に人材開発が進められます。

経験を学びに変えるためには

経験学習の有益さと、その学習資源が溢れているという考え方は整理できました。しかし、実行するのは簡単ではないです。経験を学びに変え、人材開発をするためにはどうしたら良いか考えていきます。

【経験を学びに変えるために必要な要素】
 ①経験のデザイン
 ②サイクルを回すこと
 ③学びを推進する支援

<①経験のデザイン>
経験を資源(成長機会)にするためには、より成長につながる経験を設計したいです。すべての仕事が経験だとしても、毎日変化のない作業を繰り返していたり、自分の利益(成果・評価)に繋がらない経験ばかりでは、経験が成長資源に繋がらない可能性があります。そのため、大人の学習者が持つ特徴を考慮した上で、成長につながる経験をデザインしていきたいです。
また、できる限り見える見える領域で経験をデザインすることが望ましいです。②③の内容に繋がりますが、育成対象者が見えない領域の経験をしたとき、育成する側の支援難易度が上がります。学習効果を最大化するためにはできる限り見える領域でマネジメントできる状態をつくりたいです。

<②サイクルを回すこと>
ここで経験学習モデルに立ち返りたいと思います。経験を学びに変えるためには、「経験」→「内省」→「持論化(概念化)」→「実践」のサイクルを回す必要があります。よくあるケースだと、経験をしているが内省できていないために、概念化→実践のサイクルが回らないことがあります。これは、資産を垂れ流す非常に勿体無い状況です。そのため、経験がデザインできたら、経験を振り返り着実に次のステップに進め、概念化→次の実践(アクション)に移行していきます。そして、その実践が新たな経験となり学びがアップデートされていきます。

<③学びを推進する支援>
社内人材開発の観点で考えたときに、①②を意図的に設計・支援できる状態が理想的です。②については、会社の仕組みと上司含めた周りからの支援がないと機能しないケースが多いと思います。大人の学習者は自律的だと言っても、良質なサイクルを自分一人で回し続け、自己開発をし続けられる人は多くないと思います。そのため、人材開発をするのであれば支援体制を構築することが重要になります。

次回は具体的な取り組みから経験学習について考えていきます。

ここまで、概念的な部分を僕の考えも含めて整理してきました。次回は、できる限り具体例を交えながら、経験から学び成長する組織をつくるためにどうするのか考えていければ嬉しいです。


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