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人事評価で重要な納得感

株式会社ブレーンバディ執行役員CHROの永井です。本日は、評価・報酬制度をテーマに人材・組織開発について考えていきます。
スタートアップ企業で人事をされている方、経営者の方は評価・報酬制度設計について1度は悩まれたことがあるのではないでしょうか?評価・報酬制度に悩むのは、スタートアップに限ったことではないと思います。ただ、スタートアップは、0→1で制度を設計することや会社の方向性が日々変わること、組織規模が急激に変化することなどが原因で評価・報酬制度の設計難易度が比較的高いと思います。当社も評価制度設計は常にアップデートを繰り返しています。
本日は、スタートアップの評価・報酬制度の考え方について皆さんと一緒に考えられたら嬉しいです。

人事評価・報酬とは

人事領域でメンバーからのネガティブな意見を一番聞くのが、人事評価・報酬ではないでしょうか?リクルートマネジメントソリューションズが行った調査によると、世の中の5割程度の社会人は人事評価に不満を持っているという結果も出ています。
それだけネガティブな人が多いのに、なぜ会社が人事評価制度を設けるのでしょうか?それは、「利益分配の格差を明確にするため」です。利益を全員で均等に分配した場合、きっと「頑張っても頑張らなくても一緒」と社員は考えるでしょう。
また、人事評価には別の側面もあると考えています。それは、「企業文化の醸成と社員育成」です。人事評価は、会社として求める基準を明文化したものです。この基準をもとに社員が働き、フィードバックを繰り返すことで、中長期的な企業文化の醸成につながります。また人事評価は、社員ひとり一人がどうしたら成長していけるか、どうしたら活躍できるかを考える機会としても活用できます。配置変更も含めて短期長期の活躍に繋げることで、人事評価は育成にも大きく寄与します。

よくある落とし穴

「社員のモチベーションを上げるために報酬を高くする」という話をよく耳にします。そして、その施策はだいたい失敗しています。評価報酬を考える時に忘れてはいけないのが、金銭的報酬は衛生要因の排除にしかならないということです。
衛生要因については、ご存じの方も多いかと思いますので詳細な説明はしませんが、給与や待遇面はあくまで不満を排除する要因にしかなりません。内発的な動機づけには繋がらず、適切な報酬制度を設計しないと単に高い報酬を与えても不満は残り続けます。

大切なのは納得感

では、評価・報酬制度の中で何が重要になるのか。それは「納得感」です。納得感なく不満を感じてしまう時は、本人の期待に対してGAPが発生している瞬間です。人間は、論理的・非論理的要因から勝手に期待し、その期待をもとに行動します。そのため、期待と現実の差分をできる限り無くすことが納得感醸成に繋がります。
そして、期待は大きく3つの要素から発生します。
①ブランド契約:企業ブランドや業界の一般的な水準、口コミなどから読み取る黙示的契約
②取引的契約:契約書など明文化され双方で合意した契約
③心理的契約:非感情的で個人の解釈によって生まれる契約


この3つの期待をコントロールして、本人の期待と満足度のGAPをできる限り無くすことに注力する必要があります。

納得感の醸成方法

納得感を醸成するために気をつけることは大きく次の5つだと考えています。

①公平性:他社と比較し分配が公平であるか
②明確性:評価基準が明確であるか
③共感:評価基準に共感できるか
④予測可能性:自分の行動や成果に対してサプライズ評価にならないか
⑤透明性:評価の内容とプロセスが透明であるか

そのため、評価基準が重要であることはもちろん、誰が評価者であるかも非常に重要です。「自分のこと何も知らないのに」とメンバーが感じた時点で、納得感は得られません。また、人事評価と理念、採用基準との一貫性がないとメンバーは違和感を感じます。
他の人事機能と一貫性を持たせ、日々のメンバーコミュニケーションを通して期待値と満足度のGAPを無くすことができれば、納得感のある人事制度の運用ができます。また、それだけではなく、文化醸成や育成にも繋げることが可能です。

スタートアップとしての向き合い方

大手の評価・報酬制度や他のスタートアップの評価制度をそのまま運用していては、納得感の醸成に繋がりません。自社の企業文化や人事機能から最適な評価・報酬制度を設計することが必要です。極論、社長の決めで問題なく運用できるフェーズや会社もあると思います。単に作り込むことが重要なのではなく、会社がどのような基準を求めるのかを示し、評価を通して社員が中長期で活躍できる状態を育み、一貫性のある評価制度で動機付けを阻害する不満を起こさないようにするためにどうしたら良いか考えることが重要です。スタートアップは変化も激しく、リソース(お金・時間・人)も潤沢にはないです。限られたリソースの中でどこまで投資することが、会社を前に進めることに繋がるのか考えていきたいです。

次回は事例を踏まえて
今回も読んでいただきありがとうございます。次回は評価制度について当社の事例や他社の取り組みなども交ながら、具体事例を通して一緒に考えていければ嬉しいです。


<参考文献>


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