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リスキリングで未来を拓く:高齢者のデジタルスキル習得の重要性をみるー野口悠紀雄氏記事より

 現代ビジネスの、野口悠紀雄氏の「65歳以降も仕事は可能なのに…「いつまでも働ける社会」を阻害している「高齢者へのペナルティー」」の記事。大変興味深く拝読させていただきました。

 この記事では、米バイデン大統領が加齢による能力低下を指摘され、大統領選から撤退したことが取り上げられています。彼の辞退は、アメリカの政治における高齢者の役割とその限界についての議論を喚起しました。バイデン大統領の後任としてカマラ・ハリス副大統領が指名され、彼女の民主党内での人気が高いことから、民主党は望ましい世代交代を実現したと評価されています。この出来事をきっかけに、高齢者がすべての職務から退くべきだという風潮が広がるのではないかという懸念も示されています。

高齢者の働き方は?

 高齢者の働き方については、さまざまな視点から考察する必要があります。政治の分野では特に、豊富な経験が求められるため、年齢が必ずしもマイナス要因とはなりません。実際、1984年のアメリカ大統領選で73歳のレーガン大統領が再選に挑んだ際、高齢という批判がありましたが、彼は「政治家には豊富な経験が必要」と主張し、歴史的な大勝利を収めました。

 この例は、高齢者の「経験」が重要であることを強調しています。しかし、経験を理由に高齢者がいつまでも職にとどまることは組織や社会の停滞を招くため、適切な世代交代のルール作りが必要です。

世代交代を円滑に進めるために

 世代交代を円滑に進めるためには、社会的なルールと制度の整備が欠かせません。高齢者が働き続けられる環境を整えるためには、リモートワークやデジタル技術の活用が重要です。特に日本の大都会における通勤事情は劣悪であり、高齢者が在宅で仕事を続けられるようにすることは大きな意味を持ちます。リモートワークによって、これまでは会社を離れると就労が難しかった高齢者も、仕事を続ける可能性が大きく広がりました。また、デジタル機器の活用により、記憶力が衰えても検索やメモで補うことができるため、高齢者の仕事を支援する多くの手段が提供されています。

 一方で、企業依存から脱却し、フリーランサーとして独立して働くことも推奨されています。特に日本では、65歳までの雇用が義務付けられていますが、それ以上の年齢になると、企業での継続勤務は難しくなります。そのため、独立して働くことが望ましいとされています。具体的な仕事の内容は個々の条件によって異なりますが、資格を持っている場合には仕事を得やすいでしょう。資格がなくても、インターネットを通じて仕事を見つけることができる可能性があります。また、地方公共団体が高齢者向けの仕事を斡旋してくれる場合もあります。

 さらに、社会制度の改革も不可欠です。退職老齢年金制度や税制、社会保険料の制度など、高齢者の就労を抑制する制度は見直されるべきなのでしょう。例えば、退職後に年金を受け取る際に働くことが制約される制度は、高齢者の就労意欲を削ぐ要因となっています。所得税制についても、労働所得に対する給与所得控除はありますが、独立して所得を得る場合にはその恩恵が得られません。確定申告が必要なため、納税事務にかなりの労力と費用がかかることも問題です。消費税についても、個人で仕事をすると依頼者に転嫁しにくい場合が多いです。

リスキリングの重要性

 個人レベルでは、リスキリングが重要とのことです。テクノロジーの進化に伴い、ソフトスキルやデジタルスキルの習得が求められます。ハイブリッドワークやリモートワークの増加により、柔軟な働き方が可能となり、生産性や従業員の満足度が向上することが期待されています。

 リンダ・グラットンの『LIFE SHIFT-100年時代の人生戦略』では、より長く働く時代において、個人や教育機関、企業がどのように対応すべきかが論じられています。彼女は、共感力やチームワーク、創造性、適応性、問題解決能力などのソフトスキルの重要性を強調し、これらのスキルがAIには真似できないため、人間の仕事の価値が増していくとしています。

 また、AIやデータアナリティクス、クラウドコンピューティングなどのデジタルスキルの習得も重要であり、継続的な職業訓練と教育が求められます。

ネット時代は独学でリスキリングが可能

 インターネットとAIの時代には、独学でリスキリングすることが十分に可能とのこと。生成AIは単に知識を提供するだけでなく、独学のカリキュラムも準備してくれます。新しい技術を最大限に利用すれば、高齢者のリスキリングを大きく進展させることができるでしょう。社会全体が高齢者の経験や知識を活かし、世代間の知識と技術の継承を円滑に行うことで、持続可能な働き方と経済の発展を実現することが期待されます。
 野口氏の以下書籍でも詳細が解説されており、歳を重ねることの良さを実感させてくれます。

高齢者が自宅でリモートワークをしている様子です。居心地の良いホームオフィスには、コンピューターやタブレット、エルゴノミクスチェアが設置されています。高齢者はデジタルツールを効率的に使用し、落ち着いた表情で作業に集中しています。部屋は明るく、植物や家族の写真などのパーソナルな要素が配置され、快適で生産的な雰囲気が醸し出されています。高齢者がリモートワークを通じて働き続ける可能性を示しています。

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