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半月パン屋、半月エンジニアという働き方

鹿児島県出水市で Humme (ハムと読みます)というパンとお菓子の店を4月に始めた。パン屋として営業するのは月の半分。残り半分は東京の企業に勤めるエンジニア。

昨年8月に東京から移住し、今年3月までは、東京の企業の仕事をフルタイムで続けてきた。パン屋の準備は仕事終わりと土日と有休を使って進め、4月のオープンのタイミングで、半月パン屋、半月エンジニアというちょっと特殊な働き方を送るようになった。

いわゆる複業だが、通常と異なるのは、私の場合半月単位で完全に分離させているという点。二週間パン屋のことをしたら、二週間エンジニアとして働く。そしてまた二週間パン屋。その繰り返し。

当初考えていたのは、一週間のうち曜日で区切り半々にする働き方。でもそれだとどっちも中途半端に気になってしまい、一つのことに集中できない気がしたため、半月単位にした。

結果、この働き方は結構良い。
いや、かなり良い。
どちらともしっかり向き合うことができるうえ、互いの足りない部分を補えていると思う。
今回はその整理。

1. 健康
2. 適度な余裕
3. 利益
4. 時間

まず一つ目は、健康。
パン屋は長時間の肉体労働で立ちっぱなし。対してエンジニアは8時間程度のデスクワーク。どちらも辛いところはあるが(腰とか)、身体への負担はパン屋の方がかなり上。

パン屋は始めたばかりでまだ手探りということもあり、色々試しているところ。
営業時間は最初こそ11時からだったが、諸々間に合わず13時からと15時からも試している。
パンの種類は定まっておらず、毎回変える。製法も。
何日も前から少しづつ仕込み始め、前日は深夜まで仕込みをして、2時間程度仮眠して早朝から作業が常。寝不足と体力の限界で、閉店後は倒れてしまう。
つまり、結構無謀なことをしていて数日続けば限界を迎える。
ただ、それもどんなに長くても半月だけ。半月経てば、エンジニアの方は企業勤めなので規則正しい生活を送れる。その半月で体力を回復し、パン屋としてまた半月頑張ることができる。
どう考えてもパン屋の方はやり方が悪いのだが、これ以上ないくらいしんどい働き方をしてもやっていけるのは、半月は全く別の仕事があるおかげとも言える。

二つ目は、適度な余裕。
半月という単位は、集中して取り組むには十分、かつちょっと物足りない。もう少しやりたい!というところでもう一方に切り替わり、少し距離を置くことになる。だから次の半月後が楽しみで仕方がない。

そして、目の前のことで手一杯だったとしても、半ば強制的に客観的に見ることになる。
エンジニアの方はほぼ変わりはないが、パン屋はまだまだやり方が確立していない。次回はこうしようとか、これをやりたいとか、切り替わった半月を改善する期間に充てることができる。始まってしまうとやりたいことが多々あっても何もできずズルズル、、ということにならない。

三つ目は、利益。
パン屋は薄利多売。原価は3割ぐらいに抑えるようにはしているが、そこから光熱費やその他諸々を差し引くと、利益はかなり少ない。先に書いたような働き方をしても、手元に自身が使えるお金として残るのはほぼない。

これを改善するには、営業日を増やす、製造量を増やす、価格を上げるが考えられるが、営業日も製造量も体力的に難しい。価格も元々安くはないため、これ以上あげるのは憚られる。

で、その解がもう一つの仕事である。
リモートで作業しているためネット環境は必須だが、それ以外はかからない。自分が作らなければ売るものがないパン屋とは真逆。しっかりとアウトプットを出せば、給与としてお金を得ることができる。そちらを生活費に充てるので、パン屋は赤字にならなければ良いという余裕が生まれた。サラリーマンも色々あるが、やはりこの安定は捨てがたい。

パン屋という不確定なことが多い仕事と、エンジニアというある程度需要もある仕事の両立は、安定して冒険できるという、かなり良い働き方だと思う。
とはいえそれは勤めることができているからであって、フリーランスとなるとまた変わってくる。今の会社で働くのも終わりがあるため、その点については今後の課題。

四つ目は、時間。他のことができる。
パン屋は長時間労働で、睡眠時間や他の時間を削らない限り、パン屋以外のことができない。貴重な休みでさえ、雑務的なことをしていたら終わってしまうこともある。
それが比較的規則正しい生活を送れるもう一方の仕事があれば、仕事終わりに雑務をこなしたり、プライベートな時間を楽しむこともできる。

そしてどんな仕事もそうだと思うが、発見は日々の業務の中で見つかることは少ない。凝り固まった頭は置いておき、全く別なことをしているときに、これは使えるかもと閃いたりするもの。
だから全体として取り組む時間は半減しているが、成果は同等まではいかなくとも、7割ぐらいは出せていると思っている。量ではなく質が求められるものに限るが。

以上が2ヶ月で感じた半月単位の働き方の良いところ。
こうやって挙げてみると、パン屋の大変さをエンジニアが補っている。結果論だが、パン屋を継続するための一つの方法だと思う。

ちなみに、この働き方の難しいところも見えてきた。
営業していない期間の客離れ、食材の管理。もう一つの仕事の引き継ぎ。
ただいずれも考え方、やり方次第。取り組める時間は半減しているのだから、これまでと同じことをしていては成り立たない。目標をただ半減させるのではなく、目標そのものを変えることが必要だと思う。

最後に。
今はまだ一つ一つの仕事を分離して考えている。パン屋はパン屋。エンジニアはエンジニア。
でも将来的には全く別と分離するのではなく、お互いの良いところを取り入れて、相乗効果を生み出していきたい。それができれば、半月単位といわず、一ヶ月でも一年単位でも、何か新しいことができるのではと考えている。


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