インバウンド視点から見た日本の不便さ
9月1日から約3週間、日本を旅してきました。
神戸を拠点に、名古屋、東京、新潟、そして奈良も訪れました。
その旅の中で、不便に感じた点がいくつかあったので、ここにまとめておきます。
クレジットカードが使える場所が増えたのは便利
題名はさておき、まずは日本の良いところを賞賛したいと思います。
私は2023年に久しぶりに日本を訪れましたが、実に10年近くの間、日本に行っていませんでした。
そのため、いくつかの変化に気付いたのですが、中でも一番大きな変化として感じたのは、クレジットカードが使えるお店が大幅に増えていたことです。
以前の日本では、クレジットカードが全く使えないわけではありませんでしたが、特に少額の決済に関しては、現金を求められるケースが多かったのです。
例えば、カフェや小さなレストラン、個人経営のお店では、クレジットカードが使えないことが多く、手持ちの現金が足りなくなってしまうこともしばしばありました。
少額の支払いでもカードが使えるような状況は、少なくとも私が最後に日本にいた時にはあまり見られないものでした。
しかし、2023年に再び訪れた際には、この状況が驚くほど改善されており、感覚的には90パーセント近くのお店でクレジットカードを使うことができました。
小さなカフェや個人経営の飲食店などでもカードが利用可能になっており、支払いのストレスがほとんどなくなったように感じました。
これは非常に大きな変化で、特に外国人観光客やインバウンドにとっては大きな利便性の向上だと感じました。
この変化の背景には、恐らくキャッシュレス決済の普及があるのではないかと考えています。
最近では、日本でもPayPayや楽天ペイなど、多様な決済方法が利用されるようになり、その対応のためにターミナルが新しくなったことが、クレジットカードの決済機能の拡充にもつながったのだと思います。
こうしたシステムのアップデートが、日本国内の店舗でもクレジットカード利用の幅を広げ、結果的に顧客にとっての利便性が向上したというわけです。
また、個人的には、クレジットカードの利用が広がったことで、為替手数料に悩まされることも少なくなりました。
以前は、現金での支払いが主流だったため、手持ちの現金が不足することがしばしばあり、その都度ATMで現金を引き出す必要がありました。
しかし、クレジットカードがほぼどこでも使えるようになった今、現金不足を心配する必要がなくなり、外国からの旅行者として非常に快適に感じました。
クレジットカードが普及したことで、支払いの手間が減り、インバウンドにとって日本旅行が一層便利になったと実感しています。
旅行者にとっての支払いのしやすさは、滞在中のストレスを大きく軽減する要因となるため、この変化は非常に歓迎すべきものです。
これからも、日本がさらにキャッシュレス化を進め、観光客にとってより便利な環境を提供してくれることを期待しています。
ネット予約の不便さ
ここからは、日本滞在中に不便に感じた点について書いていきたいと思います。
まず、現状のネット予約に関する問題点です。
現在、ほとんどの予約サイトでは電話番号が必須事項として求められています。
これが非常に大きな障害となっており、日本国内の電話番号を持っていない海外居住者にとって、レストランやアクティビティの予約が非常に難しい状況です。
特に、人気のあるレストランや観光スポットなど、事前予約が必要な場合には、これが大きな問題となります。
かつては、SkypeOutや他のサービスを使って、日本の050番号を比較的簡単に取得することができました。
建前上、日本国内に住んでいることが条件でしたが、そこまで厳しく確認されることはなく、海外に住んでいても番号を取得できる方法がありました。
しかし、最近ではこのようなサービスの利用条件が厳格化され、日本の電話番号を手に入れるのがほぼ不可能な状態になっています。
一方で、海外居住者向けに日本のプリペイド番号を提供するサービスも存在しますが、最近ではローミングの無料化が進んでおり、そのためだけにプリペイドサービスを利用する合理性が薄れています。
さらに、こういったプリペイド番号は、日本に到着してからしか手に入らないことが多く、事前に予約を完了させることが難しくなるのです。
つまり、海外にいる段階での予約が困難であるため、観光やビジネスで日本を訪れる人にとっては、事前に計画を立てる際に大きな不便が生じてしまいます。
この問題に対しては、電話番号の代わりにデポジットを預ける形式にするなど、代替手段を導入してほしいと強く思います。
例えば、予約するお店やサービスに対して、予約の保証としてデポジットを支払うことができるシステムがあれば、電話番号を持っていない海外の旅行者にとっても予約がしやすくなるでしょう。
特に、海外からの旅行者は、長期間滞在する際に事前にしっかりと予約を確定させたいというニーズが高いため、こうした柔軟な対応があれば、さらに日本の観光業にとってもプラスになると思います。
実際、予約してまで行きたいと考えるレストランやアクティビティであれば、デポジットを預けることは海外旅行者にとっても問題ではありません。
むしろ、確実に予約を確保できるのであれば、多少のデポジットを支払ってでも安心して利用できるはずです。
こうした代替手段の導入により、より多くの海外旅行者が日本での予約をスムーズに行うことができ、日本国内のサービス利用者も増加することが期待できるでしょう。
ホテル予約もかなり不利な条件になる
ホテル予約に関してですが、直接予約をする際には、前述の電話番号の問題が大きな障害となり、海外からの旅行者にとって難しいことが多いです。
ほとんどのホテルの予約システムでは、日本国内の電話番号を求められるため、海外居住者にとっては非常に不便です。
このため、直接ホテルに予約するのではなく、booking.comやExpediaといった国際的な予約サイトを利用することで、比較的簡単に予約を行うことができます。
これらのサイトでは、電話番号の要件がなく、クレジットカードを使った支払いも容易にできるため、海外旅行者には非常に便利です。
ただし、予約自体はスムーズにできるものの、実際にチェックインの際には追加の手間がかかることがありました。
例えば、あるホテルでは「迅速なチェックイン」を謳っていましたが、海外居住者の場合は現地で追加の情報提出を求められたり、パスポートや滞在先の詳細を記入する必要があったりしました。
このような追加の手続きは、国内旅行者にはない手間であり、事前にオンラインで登録できるような仕組みが整っていれば、さらにスムーズなチェックインが可能になると感じました。
また、ホテルの各種特典が利用できないという点も、海外旅行者にとっては不便な部分です。
特に、アパホテルのような国内の大手ホテルチェーンでは、会員になると多くの特典を受けることができます。
例えば、アパホテルの会員特典の一つに、チェックアウト時間の延長があります。
通常、チェックアウトは午前10時ですが、会員になるとこれが午前11時まで延長されます。
旅行者にとって1時間の余裕があることは非常にありがたい特典ですが、残念ながら海外居住者はこの特典を享受することができませんでした。
アパホテルでチェックインを行う際、会員特典を利用するためにQRコードが渡され、そのQRコードをスマホでスキャンして専用アプリをインストールする手順がありました。
しかし、私の場合、このアプリが日本国内向けのGoogle Play Storeでしかダウンロードできず、海外のアカウントではインストールさえできませんでした。
この点について現地でホテルスタッフに確認したところ、やはり日本在住者でないとアパホテルの会員にはなれないとのことでした。
海外旅行者に対して、このような制限があるのは不便で、少し理不尽に感じました。
アパホテルでは、複数の拠点に連泊したにもかかわらず、非会員であるために特典を利用できないことに対して、非常に理不尽に感じました。
特に、会員になればチェックアウト時間が10時から11時に延長されるといった基本的な特典があるにもかかわらず、複数回利用しても非会員である限り、その恩恵を受けることができませんでした。
たとえ非会員であっても、複数のアパホテルに連泊している顧客には、少なくとも何らかの特典や優遇措置が提供されるべきだと感じました。
頻繁に利用しているにもかかわらず、特典が適用されないというのは、顧客に対して公平ではないと感じざるを得ませんでした。
このように、複数拠点に宿泊し続ける旅行者に対して特典が一切ないのは、理不尽さを感じさせるものであり、アパホテルの会員制度には改善の余地があると感じました。
一方で、名古屋で宿泊した「変なホテルエキスプレス」では、会員と非会員で大きな差が設けられておらず、チェックアウト時間などの基礎的なサービスに関しても差がありませんでした。
こうしたホテルは、会員制度に縛られずにシンプルなサービスを提供しており、海外旅行者にとっては非常に利用しやすいと感じました。
海外居住者にとって、日本国内でのホテル選びは会員制度や特典の有無が影響を与えるため、アパホテルのような特典が利用できないホテルよりも、変なホテルのようなシンプルなサービスを提供しているホテルの方が快適かもしれません。
このように、ホテル予約や滞在に関しては、特典の利用やチェックインの手間など、海外居住者には少し不便な点がありましたが、Booking.comなどの予約サイトを活用することで、全体としてはスムーズに旅行を楽しむことができました。
今後、より多くのホテルで海外旅行者向けの特典や簡素化された手続きが導入されることを期待したいです。
スマホ注文システム
最近、レストランでは人手不足の影響なのか、スマホで注文を行うシステムが増えてきているようです。
店員さんとのやり取りを最小限にし、効率化を図る目的があるのでしょう。インバウンドの視点から見ても、このシステム自体は大きな問題にはなりませんでした。
ほとんどのお店がウェブサイトを通じて注文を受け付けており、スマホでアクセスしてそのまま注文を完了することができたためです。
ただ、ローミングでデータ通信を利用している場合、通信速度が遅かったり、データ使用料が高額になったりすることがあるため、そうした状況では少し不便に感じるかもしれません。
この点については、店側がWi-Fiを提供することが重要だと思います。
幸いなことに、私が訪れたほとんどのレストランではWi-Fiが用意されており、これによって通信速度やコストの問題が解消されました。
Wi-Fiの存在は、海外旅行者にとって非常にありがたい要素です。
一方で、専用アプリをダウンロードしなければならないお店も一部存在するようです。
専用アプリは、そのお店のサービスに特化しているため、便利に感じる一方、海外からの利用者にとっては一部問題が発生します。
特に、日本国外のApp StoreやGoogle Playで利用できない「地域制限」がある場合、アプリのダウンロードができず、サービスの利用自体が難しくなります。
これは、インバウンド向けの対応として改善が望まれる点です。
このように、スマホ注文のシステム自体は非常に便利ですが、通信環境や地域制限など、細かい点での改善が求められる場面があると感じました。
特に、アプリやウェブサイトの地域制限がある場合、インバウンドにとっては利用が難しくなるため、グローバルな視点での対応が今後期待されます。
内向き志向はなんとかして欲しい部分がある
上記で述べた問題について、外国人旅行者にのみ影響があるように思われるかもしれませんが、実際には日本国外に住んでいる在外邦人にも大きな影響を及ぼしています。
日本の各種システムは多くの場合、国内需要(内需)のみを想定して設計されているため、海外在住者にとっては事実上利用が不可能なものが多いのです。
特に、決済システムやサービスの利用においてその影響が顕著に現れています。
たとえば、クレジットカードは日本国内で広く利用できるようになった一方、他の決済方法、特に日本国内で広まっているPayPayや楽天ペイといったシステムは、海外在住の邦人や外国人には事実上使えません。
これらのサービスを利用するためには日本国内の電話番号が必須であり、さらに多くの場合、日本の銀行口座が必要です。
海外在住者にとっては、日本の銀行口座を保持することが難しいため、これが大きな障壁となっています。
つまり、クレジットカードが広く使えるようになったとはいえ、これらの国内特有の決済システムは、事実上日本国内に住んでいる人々にしか対応していないのです。
加えて、これらの決済サービスは、クレジットカードをサポートしていない場合が多く、日本の銀行口座からの引き落としのみが可能となっています。
これにより、たとえクレジットカードを持っていたとしても、日本国内の銀行口座を持っていない海外在住者や外国人は、これらの決済方法を利用することができません。
日本国内で広く普及しているキャッシュレス決済システムが、こうした内向きな設計になっていることは非常に不便で、海外在住者や一時滞在者にとっては大きなハードルです。
さらに、日本のシステム全体において地域制限が大きな障壁となっています。
たとえば、アプリのインストールやサービスの利用に関して、地域制限がかかっているため、海外からはそもそもアクセスできない場合が多いのです。
これにより、海外に住む邦人や外国人は、日本国内で広く使われているサービスにアクセスすることが事実上不可能な状況に直面しています。
このような状況は、海外在住者や短期帰国者にとって非常に不便であり、さらに外国人観光客にとっても大きなハードルとなっています。
今後、日本が外需の取り込みを重視していく中で、こうした内向きなシステム設計を見直し、よりインクルーシブな対応が求められるでしょう。
特に、クレジットカードや日本の銀行口座に依存しない柔軟な決済方法を取り入れることが、日本国内外を問わず多くのユーザーにとって利便性を向上させ、国際的な競争力を高める上でも重要であると考えます。