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アンソロジー:子供の頃の夢が破れた日

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友人( https://note.com/kishibe )の誘いで、他のユーザーさんと一緒にアンソロジー作品を書いてみました。 皆さんそれぞれに思いがあって、読み応えがあって、…
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#エッセイ

夢敗れても、惨めなんかじゃない

夢敗れても、惨めなんかじゃない

 「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ」

 ぼくが、空に憧れたきっかけの音。
 1つ目の夢が生まれた音。
 本当はこれがスペースシャトルの音だったら良いのだけれど、そうではない。ボーイングの飛行機でもエアバスの飛行機でもない。

 中国人民解放空軍の戦闘機のジェットエンジンの音。

 ロシアと北朝鮮の国境に近い中国の片田舎に生まれたぼくは、幼い頃よく祖父に連れられて空港に遊びに行った。空港に入ることはなく

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Re:Cycle

母方の祖父が生前、自転車店を営んでいた。
庭先にある個人経営の小さな店だ。
遊びに行くといつも、埃と油の匂いに満ちた店舗兼工房で、祖父は工具を握りしめてパーツに命を吹き込んでいた。そこは、まさしく魔法の工房だった。ラチェットが刻むチリチリという小気味好い音。ペダルの動きに合わせて勢いよく空気を切り裂くスポーク。ダイナモを倒すと小さく輝き始める前照灯。工房内の全てのオブジェクトに魂が宿っているみたい

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