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新しい大人世代の情報誌 おとなDAYS Vol.10

【特集】おいでよ青の国へ 遊ぼうよ 野蒜で

 東日本大震災からの復興で宅地とJRを高台に移し、平成29年にまちびらきした東松島市の野蒜ケ丘。防災集団移転団地であり、閑静な住宅地の中にも見どころは多い。高台を下れば移転元地や低平地に観光スポットが広がり、目を閉じれば潮風が頬をなでる。東松島のイメージカラーは青。青い海と空。あらたなの夏がここにある。

●使い方は自由・無限大 皆が集える〝第2の家〟
【いろどりの丘】

 複合施設「いろどりの丘」は、我が家のような感覚で和める。初夏の日差しが降り注ぐおしゃれで開放的なアトリウムは木々の緑が映える集いの場。昼は地元食材を使ったランチやカフェで会話を弾ませ、バーの雰囲気が漂う夜は、酒やつまみをたしなみながらちょっとぜいたくな大人時間が広がる。

彩り豊かなランチが女性を中心に人気

 カーペットやクッションがある多目的ルームは昼寝に最適。日常の喧騒を忘れさせる風呂や岩盤浴で疲れを癒やし、ゆったり気分のまま、館内ホテルに泊まることもできる。医療介護の資格を持ったスタッフが常駐し、診療所や福祉施設も併設しており、いつでもどんな時でも安心がすぐそばにある。

医療介護の資格を持ったスタッフが寄り添う

 皆の家だからこそ使い方は無限大。愉しみ方も人それぞれ。伊東秀晃施設長(35)は「家として必要最小限な物を凝縮した場所。スタッフも訪れる人も家族的な感覚で関わり、困った時に寄り添える場にしていきたい。施設利用に細かなルールは不要。皆で創り上げていくのが『いろどりの丘』なんです」と話していた。

野蒜ケ丘の中心に位置する「いろどりの丘」

■いろどりの丘
 継続的被災地支援を行う医療法人社団KNIが運営。温泉や岩盤浴、レストランカフェ、ホテル、診療所、介護施設を融合した複合施設。「集い、愉しみ、心身共に健康になる新たなライフスタイルの発信地」がモットー。
▽住所=東松島市野蒜ケ丘2丁目25番2
▽電話=0225-98-5571


●季節の彩りと和の庭園 食に地域の〝味力〟ぎゅっと
【奥松島クラブハウス】

 旧野蒜駅西側の奥松島クラブハウスは、昨春オープンした観光施設。春は桜、夏は緑色の草木、秋は紅葉、冬は雪景色。四季で移ろう和の園庭風景を五感で感じながら味わう海の幸は格別だ。

園庭を眺めながら食事が楽しめる

 飲食棟では名産の皇室献上ノリを練り込んだ「海苔そば」と地元の海でとれた魚を特製しょうゆダレに漬け込んだ「木桶寿司」が目を引く。カキやホタテなどの活貝は、炭火で好みに焼き上げ、がぶりと頬張れば濃厚な味が口いっぱいに広がる。茶屋では「超熟成つぼ焼きいも」が絶品。この甘みを生かしたソフトクリームは女性の支持が高い。

東松島産のノリを使った「海苔そば」

 木塀で囲う野外盆栽庭園は、自然の癒やしを詰め込んだ和みの空間。鉢中に再現された繊細さと力強さ、奥深さは見る者を引き込んで離さない。事業部の菊田健二飲食部門責任者(40)は「奥松島にしかない魅力を発信し続けたい」と話す。

心を和ませてくれる野外盆栽庭園

■奥松島クラブハウス
 交流人口拡大に向け(株)アークリンク=東京都=が運営。飲食棟は「そば処奥松島庵」「炭火焼海味」、受付棟には「のびるノ茶屋」、屋外に盆栽庭園もある。「地域に明かりを灯す」をテーマに並木のライトアップも行う。
▽住所=東松島市野蒜字北余景15-1
▽電話=0225-98-8123
▽営業時間=10~18時
▽定休日=月曜



●器にどーんと毛ガニ1杯 採算度外視の豪華ラーメン
【えんまん亭】

 「えんまん亭」は東名運河沿いにあり、海の味覚を丸ごと味わえる豪華なラーメンで有名。その名も「海の幸ラーメン」(税込2000円)。器を彩るのはホタテにズワイガニ、アサリ、エビ、さらに毛ガニがまるごと1杯。海鮮だしのスープが麺と具材の旨みを十分引き出しており、麺が隠れるボリュームにも圧倒される。

えんまん亭名物の「海の幸ラーメン」

 もともと観光客向けの一品。写真映えするため、SNSでじわじわ人気が広まった。これをめあてに首都圏からも足を運ぶ。「出せば出すだけ赤字だよ」と笑う二代目の遠藤満店主。「それでも東松島に客が来るきっかけになるならね」と男気を見せる。

2代目店主の遠藤満さんが腕を振るう

 地域に根差し40年余。定食や麺類など幅広いメニューが並び、観光客だけでなく地元からも愛されている。

奥松島運動公園に近い「えんまん亭」

■えんまん亭
 奥松島運動公園体育館の南側に位置し、長年地域内外の人から愛される食堂で、海の幸ラーメン以外の麺類、飯類も人気。著名人も多く訪れている。
▽住所=宮城県東松島市野蒜北赤崎42-2
▽電話=080-5579-3769
▽営業時間=10時半~20時
▽定休日=不定休


●水曜だけ開店 香ばしい匂い 無添加、地場産にこだわり
【ぱぱいやぱんや】

 新東名の住宅街で水曜日だけ開店する「ぱぱいやぱんや」。国産小麦や米粉で作り、無添加で体に優しい。香ばしさが広がる店内には地場産食材を生かした約30種の焼きたてパンが並ぶ。季節限定品や新作も目白押しだ。

オリジナルの焼き立てパンが食欲を誘う

 地元農家のもち麦を使った「角食パン(税込320円)」は不動の人気。「よつぼし苺バターフランスサンド(300円)」はイチゴの甘さと香りが口いっぱいに広がる。骨の形の「ほねぱん(200円)」にはソーセージが挟まれ、ジューシーな肉のうまみがパンを引き立てる。

約30種類のパンが並び香ばしいにおいに包まれる店内

 軽めのランチや3時のおやつ、ちょっとした土産にも最適。カレンダーの水曜日にマル印を入れよう。

毎週水曜日だけ開店する「ぱぱいやぱんや」

■ぱぱいやぱんや
 震災の津波で被災した民家を改築して営業する小さな手作りパン屋。季節に合わせた創作パンがずらりと並ぶ。迷ったら500円のお得なセットがおすすめ。
▽住所=東松島市新東名1-10-9
▽電話=0225-24-9919
▽営業時間=11時半~18時(なくなり次第終了)
▽営業日=水曜日(第5水曜日は定休)


●海、山の幸の絶品会席 日本庭園眺める大浴場
【奥松島LANE HOTEL】

 奥松島観光の拠点とするなら県道27号沿いで野蒜ケ丘の入口にある「奥松島LANE HOTEL(レーンホテル)」はどうか。レストラン「嵯峨」では、中庭を眺めながらいただく本格会席が格別。地元産の海の幸と山の幸がコラボし、夏は旬のウニに舌鼓を打つ。

地場産の海と山の幸が一度に味わえる

 海や森などをイメージした洋室26室とモダンで落ち着いた和室3室。大浴場では窓の外の日本庭園を横目に体の芯を温め、ゆったり旅の疲れを癒やす。宿泊以外でも日帰り入浴やランチを楽しむことができる。

落ち着いた雰囲気の中で疲れを癒やすことができる

 ロビーには松島をモチーフにした鮮やかなステンドグラスがあり、7つのハートが隠されている。全て見つければ良いことがあるかも。

県道27号沿いに建つLANE HOTEL

■奥松島LANE HOTEL(レーンホテル)
 野蒜・宮戸地区の観光振興につなげるため、平成31年4月にオープンしたリゾート型ホテル。ランチ利用者は100円で日帰り入浴が楽しめる。
▽住所=東松島市野蒜ケ丘三丁目29-1
▽電話=0225-86-2501
▽営業時間=チェックイン15時、チェックアウト10時。日帰り入浴は11~18時、ランチは11~14時(L.O13時半)で水曜定休


【経営ノート】
松島農販合同会社社長 武田胞雄さん

●食用米で日本酒製造 海外も視野

 田んぼを守るために攻めるー。食用に作付けした「つや姫」を米価が下がったという理由で、大胆にも日本酒に転換してしまった。出来上がったのが純米酒「白銀の天酒」。製造販売のために松島農販合同会社=東松島市=を立ち上げた武田胞雄社長(67)は、何しろ行動が早い。海外も視野に、先の先を見据える。

 三陸縦貫自動車道の鳴瀬奥松島インターチェンジからほど近い東松島市の上下堤地区には、史跡や貝塚が点在しており、古くから人の営みがあったことで知られる。

 武田家も代々米作を家業としてきたが、両親が健在だったこともあり、自身は塩釜市の水産加工会社の営業マンとして日本国内はもとより海外を飛び回る生活を続けてきた。

先の先を見据える武田社長

 その経験を生かして10年ほど前に独立。仙台漬魚㈱の社長として魚のみそ漬け、粕漬、それに地酒などを組み合わせた通販に乗り出した。「自分の目を生かして、最高級のものを作りたかった」という。

 多少値は張っても、いい商品なら売れる。最初の5年で年商1億5千万円に達し、最近は2億円前後で推移している優良企業だ。「コロナが追い風になったこともあるかもしれません」と付け加えた。

 それがなぜ、日本酒の製造に向かったのか。もともと通販で米も扱っており、山形産で有名な「つや姫」の需要を見込んで、作り始めた。

 ところが米が出来たはいいが、米価はマイナス。収益が上がらなければ意味がない。そこでひらめいたのが、日本酒への転換だった。ツテを頼り、人脈をフル稼働、酒販免許も取得して昨年9月に松島農販を設立した。

水産加工品と組み合わせた贈答用もアピール

 初年度は1トン余りを塩釜市の阿部勘酒造に委託した。コンセプトは「さわやかですっきり、のど越しのいい食中酒」。イメージしたのは、国際線のファーストクラスで供される酒。海外で日本酒がブームになっていることも念頭にあった。

 小売りはせず、通販と海外輸出で勝負する。基本は2本セットで5500円、1本だと3千円。水産加工品と組み合わせた贈答用にもアピールしている。

 売り出した週に、さっそく20セットのオーダーが入って滑り出しは上々のようだ。日本酒への転換を構想してから1年足らず。驚異的なスピードと言っていいだろう。

 「黙っていられない、すぐ行動するタイプなんです」と平然とした口調に、自信がうかがえる。孫子の兵法にある「百選百勝」が頭にあるという。戦いにすべて勝つという意味ではなく、戦わずして勝つことが最高の策という教え。「勝つために何をするのか。常に考えている」。その姿勢が即行動に結びつく。

海外を意識した2つのラベルの日本酒

 酒は同じ種類だが、ラベルは2種類作った。叙情的な雰囲気の着物姿の女性と浮世絵風。海外を意識した作戦で、攻めながら手ごたえを楽しむ風でもある。サンプルを商社に託し、米国、オーストラリア、東南アジアからの反応を待つ。

 「私の代で田んぼを絶やすわけにはいかない。収益が上がる豊かな、輝かしい土地にしたいんです」と言う声は若々しくエネルギッシュだ。

 年に何度か出かけるゴルフが唯一の趣味。ほとんど休みなく働き続けるが、全く苦にしない。「それが生きがいでもあるので。性格なんでしょうね」と言って白い歯をのぞかせた。


【昭和レトロ館】戻ろう昭和の時代へ

●「帰りの会で言うからね!」 よく学び、よく遊べ

 教壇の黒板のわきの貼り紙が目に付く。「よく学び、よく遊べ」。ノートに書き写す。「よく遊び、よく遊べ」。うん、我ながらいい出来。ニヤニヤしながら顔を上げると先生と目が合った。

 「なんだ。なんかいいことでもあったのか?今は授業中。黒板に集中しろ」。慌てて教科書を開く。「あれっ?何ページだっけ」。隣の子が「43」と小声で教えてくれた。でももう遅い。出席簿が上から降ってきた。

「彫刻刀で机に傷をつけないこと」。こんな注意もたびたび。
今との違いを感じるが、なぜか小学校生活は楽しく、先生は厳しさの中にも温かみがあった

 〝愛のムチ〟とは実に都合のいい言葉。ルールを痛みで学んだこともあったが、これも今では体罰となるのだろう。算数は苦手だったが、そろばんの授業は楽しかった。習い事の成果が授業で発揮でき、ちょっとした優越感に浸れた。

 1、2級の同級生は机の上で指を弾き、暗算で答えを出す。あの仕草は今でもかっこいい。「僕だって2桁なら…」と張り合うものでもない。後悔があるとすれば、もっとそろばんを学んでいればよかった。十分使えるツールだったことは大人になって知った。

 もうすぐ放課後と思う矢先、とんでもない試練が待ち受ける。帰りの会だ。良いことも悪いことも名指しで発言し合う謎の会。男子の悪事に対し、女子たちの「帰りの会で言うからね!」は、強い抑止力となっていた。

◇   ◇   ◇   ◇

●ぺらっぺらのシート

薄いだけに折り目がつくともう聴けない

 サウンドシートは赤や青色をしたペラペラのレコード。商標のソノシートの方がなじみ深い。特撮、ヒーローものの絵本の付録にもなり、レコード盤と比べて音質は劣るも、そんなことはどうでもいい。音楽を聴けることがうれしかった。

 通常のレコードプレーヤーで聴くことができるが、黒く硬質のLPレコードとは違って材質が塩化ビニールであり、聴くたびに削れて劣化。今なら「音飛びか」って残念に思うが、少年期は盤が上手く回らず、何度も繰り返されるフレーズや音飛びが面白く、笑い転げていた。

 学習雑誌の付録に紙製のレコードプレーヤーが付いていたときもあった。手動だけにシートを回す速度も自由であり、まさにDJ気分。逆回転や速く回すなどくだらない遊びを考え、しまいにはシートの溝を指でなぞるなどもはや音楽から離れた遊びに発展した。度を超した遊びは、親の怒りにも触れた。

◇   ◇   ◇   ◇

●積み重ねろコンポ魂

重ねた分だけ満足感が得られた

 雑誌の付録だった手動レコードプレーヤーで満足していたが、思春期になるとそれなりのものに憧れるようになった。今や音楽プレーヤーはポケットサイズだが、昔は大きければ大きいほど魅力を感じた。

 据え置き型のオーディオコンポはレコードプレーヤーやチューナー、カセットデッキなどが独立しており、それをタワー式に組み上げる。スピーカーも横に置くなど配置次第ではおしゃれに見えたものだ。

 なけなしの金で購入したコンポを置くと小さい部屋がさらに小さく見えた。こだわったのはスピーカーの配置場所。雑誌を積み重ねて高さを出したり、壁の反響を考えたりするのが楽しかったが、ボリュームを上げて怒られたときはラジカセでもよかった気がした。

 もう少し時代が進むとセット型で小さいサイズのミニコンポが出始め、これを境にオーディオ機器はだんだんと小さくなった。

■松島レトロ館
▽住所=松島町松島字普賢堂48-1(国道45号沿い)
▽営業時間=午前9時~午後5時、無休。
▽入館料=大人400円、中高生300円、小学生200円
▽問い合わせ=☎022-355-0280


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