見出し画像

新しい大人世代の情報誌 おとなDAYS Vol.9

【特集】 春風香るハマスカ散策
利府町の海の玄関口「表松島」

 利府町東部の浜田・須賀地区(通称ハマスカ)は、日本三景松島の玄関口というとらえ方から別名「表松島」とも呼ばれる。四季で表情を変える景勝地が点在する穴場的な観光地であり、風情感じる宿や食堂、洒落たカフェ、そして海に面しているだけにマリンレジャー体験も魅力。春風に誘われるまま足を伸ばしてみよう。まだ見ぬ「松島」がそこにある。

■松島湾を独り占め天然桟橋 馬の背

 JR仙石線の陸前浜田駅前から国道45号を通り、右に折れて木立の中を進む。道は屈曲しているが、狭いほどではない。車数台が止められる駐車場から徒歩で細道を下る。伐採されているので歩きやすい。木々の先に「馬の背」がある。波の浸食が生み出した地形で長さ約200メートルの天然桟橋。海に突き出た姿が馬の背中に似ているため、こう呼ばれる。

「子馬」に続く林道から見下ろした「馬の背」。松島湾の島々に、海と空の青が映える

 付け根の部分は細くくびれ、人が一人通れる程度。先端まで進むと松島湾を一望できる絶景が広がる。松の緑と空の青、春の陽光にきらめくコバルトブルーの海。静かな波音が耳をかすめ、心地よい海風が肌をなでる。

 右手対岸には一回り小さい通称「子馬」が見える。まるで親子のような佇まいに心も癒やされる。いずれも自然の形をそのまま残しており、手すりなどはない。むしろ渡るよりも、本土から眺める馬の背の姿が一番美しい。

■新名所誕生「Jの木」 観光大使発見、命名

 利府町のほぼ中央に位置する館山公園は標高約90メートルの高台に位置し、街並みを展望できるスポット。園内東側の利府城跡に続く階段を上る途中、「J」の字に曲がった世にも珍しい杉の木がある。

これが「Jの木」。探し出してこそ充実感がある

 これは利府町観光大使で女子プロレスラーの藤本つかささんが発見、命名したもの。Jの木には「利府の新名所」との呼び声も。目印の看板は特に設置されていない。公園内を散策して探し当ててはどうか。


いつだってベストシーズン
民宿ハーバーハウスかなめ 海で豊富な体験メニュー

 松島湾でマリンレジャーを楽しみ、獲れたての海の幸をがぶりと味わえるのが民宿ハーバーハウスかなめ。「うちは代々人を楽しませることが好きな一族なんですよ」と語るのは、かなめを経営する漁師の櫻井保さん(55)。いつもどんな時でも、客を喜ばせ、笑顔を引き出すことに情熱を注ぐ。だからリピーターが絶えない。

 かなめでは四季に合わせたアクティビティをそろえる。春はイカダに乗ってのんびりと山桜を眺める。60畳ほどある広々としたイカダの上で、陽光を浴びながら寝ころべば、波音が子守歌のように聞こえ、時間が経つのを忘れてしまう。洋上なら3密回避の心配もない。宴を開いて、酒を酌み交わすのもいい。

民宿ハーバーハウス かなめ

 夏は若者に人気のバナナボートやサップのほか、無人島での海水浴、バーベキューが人気。獲れたての海の幸を浜焼きにして味わい、お腹がいっぱいになったら磯遊びに興じる。子ども以上に大人の冒険心をくすぐってくれること間違いなしだ。

 秋は湾に浮かぶ満月を愛でながら風流に浸り、冬になると雪化粧を施した趣のあるコントラストが目を楽しませる。もやが掛かった島々の深い景色が見られるのは雨の日限定。晴れの日にはお目にかかれない美しい景観が湾に広がっている。

 通年で追い込み・刺し網で行う伝統の漁業体験、釣り体験、海藻狩りやカニ獲りなど親子で楽しめるメニューが豊富。魚種も季節で異なるため、新たな発見と出会いがある。

海に親しみ、海を楽しむ。まさに楽園だ

 遊び疲れて宿に戻れば、旬の魚介類をふんだんに使った料理が胃袋を満たす。春はシラスやワカメを使った料理が定番。高級食材ふぐ刺しも並ぶ。表松島を巡る拠点として、かなめは持ってこいの場所だ。

 「この浜田・須賀地区には他では味わえないたくさんの魅力があり、その楽しさを『買って』もらうのが私の仕事」と櫻井さん。これだけたくさんのメニューをそろえ、観光客をもてなすのは「この地域に若者の生業を作り、何とか過疎化に歯止めをかけたい」という櫻井さんの思いが込められていた。

島々の景観を楽しみながら釣り糸を垂れる。この上ない休日だ

 かつてハマスカ地区は養殖漁業が盛んで、ワカメやノリ養殖業者がひしめき合っていたが、他地域との価格競争や担い手不足で漁業者はどんどん減り、現在では数えるほどになってしまった。

 「漁師はつらく大変な仕事であることに間違いないが、それだけにたくさんの可能性を秘めた仕事でもある」と櫻井さん。「だから漁師である私が漁だけではない、さまざまな事業に挑戦して、成功事例を作ることが大切だと思っている」と語りながら、ハマスカの明るい未来を展望していた。

  • ハーバーハウスかなめ
    ▽住所=利府町赤沼字須賀98
    ▽電話=022-366-7006
    ▽営業時間=各種体験は問合せ
    ▽定休日=無休


上品なのど越しと歯ごたえ
稲庭うどん瀧さわ家 ジャズ流れるモダン空間

 陸前浜田駅前から国道45号を仙台方面に歩いて5分。「稲庭うどん瀧さわ家」は、古民家を再生した隠れ家的な店で、モダンな店内には洒落たジャズの音色がしっとりと流れる。窓に映る緑々とした庭園の木々。落ちついた空間で味わうオリジナルの稲庭うどんは、二代目店主の瀧澤崇さん(48)の研究成果が凝縮された至極の逸品だ。本場秋田に引けを取らない味わいが人気を呼び、ミシュランガイドでも紹介されるほどだが、敷居は決して高くなく、手頃な価格で一流の味が楽しめるとして、家族やカップルデートなどさまざまなシーンで気軽に利用できる。

 そもそもなぜ、浜田地区で稲庭うどんなのか。それは先代で父の勝成さんが秋田県出身で、「稲庭うどんの旨さを多くの人に知ってほしい」との思いがあったから。有名店の佐藤養助商店=秋田県=の姉妹店として、昭和62年、「稲庭うどん七代養助松島店」という名で創業した。「県内で唯一、本格的な稲庭うどんが食べられる」と人気を博したという。

木のぬくもりが感じられるモダンな店内

 しかし、店は東日本大震災の津波で被災。店内には1メートル45センチの津波が入り、営業再開が困難な状況。勝成さん夫妻は一時、廃業も考えたという。そんな両親の姿を見て、立ち上がったのが当時、東京で働いていた息子の崇さん。古里にUターンし、二代目として店を継ぐ決意をした。

 県外から訪れた復旧ボランティアの協力を得ながら泥だらけになった店内を片付け。ボランティアの中には、地元利府高校の硬式野球部員たちの姿もあった。「あの時、助けてくれた恩は今でも忘れません」と感謝を語る崇さん。発災から約半年後に店を再開させた。

 事業継承した崇さんは、店のブランディング再構築から着手。店名を「稲庭うどん瀧さわ家」に改め、麺も「ここでしか味わえないものを」との思いから、オリジナリティを追求するようになった。本場の店を何件も食べ歩き、麺の配合やだしのとり方を研究。その後、秋田県の製麺所に独自の配合で発注した乾麺を使用するようになった。コシを高めるため、できる限り冬季製造にこだわり、透き通った乳白色で、ツルっとしたのどごしの良さと豊かな風味が特長だ。

稲庭うどんのツルっとしたのどごしが味わえる

 看板メニューの「二味せいろ」(1,045円)は、しょうゆとごまみその2つのつけダレで楽しむ上品な味わい。麺もだしも全て化学調味料を使わない無添加。だから素材の味がダイレクトに伝わる。

 店の内装や設備にもこだわった。梁や柱などは以前の作りをそのまま生かし、シックでモダン、落ち着いた雰囲気を醸し出した。家族がゆっくりと過ごせるよう、1階にはテーブル席と小上がり、2階には個室を設けた。バリアフリーにも気を配り、トイレも洋式に。BGMはよくある琴の音色から店の雰囲気にマッチするジャズに変更した。これらは「女性や子どもの目線に立ったおもてなしも必要では」という妻の陽子さんの助言が生かされている。

2階の座敷からは庭園と海が見渡せる

 生まれ変わった瀧さわ家の評判は瞬く間に広がり、常連はもちろん、口コミやSNSを通じて県内外から老若男女が多く足を運ぶようになった。また2017年版の「宮城県ミシュランガイド」では、町内で唯一「ビブグルマン賞」を受賞した。この賞は、メニューが3,500円以下と手頃で、かつ良質な料理を提供する店に与えられる名誉ある賞。崇さんは「支えてくれた皆さんのおかげ。勇気をもって進み、頑張ってきてよかったと思えました」と話していた。

 そんな崇さんは本業以外にも、地域の魅力を発信するイベントなどにも積極的に取り組んでいる。「表松島は食や景観など魅力にあふれた地域ですが、まだまだ工夫・改善の余地はあります。地域で一緒に前に進んでいけるように、地域に役立つ動きをしていきたいです」と決意を込めていた。

  • 稲庭うどん 瀧さわ家
    ▽住所=利府町赤沼字浜田100-83
    ▽電話=022-364-4844
    ▽営業時間=11時~15時(土・日曜、祝日は19時まで)
     ※つゆが無くなり次第終了
    ▽定休日=不定休


庭園眺めながら貸切風呂
ホテル浦嶋荘 季節味わう和会席

 馬の背に続く松林の入口にある「ホテル浦嶋荘」は、古き良き時代の雰囲気を残す小さな宿。ゆったりとした至福の時を独り占めできる貸切風呂「かめの湯」「玉手箱の湯」が自慢で、日本庭園を眺めながら体を温めれば日常の喧騒も忘れさせてくれる。代表の加藤亮一さん(65)は「安らぎとくつろぎの時間を楽しんでもらえるよう、真心を込めたおもてなしをします」と話す。

昭和40年創業の浦嶋荘

 浦嶋荘は、加藤さんの父が昭和40年に創業した宿。「浦嶋」の名は漁師だった祖父が所有していた船「浦嶋丸」にちなんで付けた。モータリゼーションの発展が目覚ましかった当時は若者の間でドライブや温泉がブーム。浦嶋荘も国道45号に面する立地も相まって、県内外から多くの観光客が訪れ、大きなにぎわいを見せていた。近年はコロナ禍で厳しい状況が続くが、自慢の風呂と地元で水揚げされた魚介をふんだんに使った料理は健在だ。

宿自慢の貸切風呂。2種類の湯が楽しめる

 2つの貸切風呂はいずれも事前予約制。誰にも干渉されない自分だけの空間がそこにあり、温かな湯に体を預ければ、旅の疲れも吹き飛ぶ。貸切風呂のほか「太郎の湯」「乙姫の湯」と冠した大浴場もある。

喧騒を忘れ、ゆったりと足を伸ばしてはどうか

 部屋は心落ち着く和室とカジュアルでモダンな洋室、大人数で泊まれる和洋室の計21室を備える。松島湾を染める夕焼けを楽しみながら酒をたしなむのも良い。お腹がすいたら和会席。旬の魚介を獲れたその日のうちに調理し、刺身や鍋、天ぷらのほか、春は白魚の卵とじなど彩りも鮮やかな料理が膳を彩る。

 加藤さんは「お客様に喜んでもらうことが、私たちの喜びです。旅の疲れを癒やしに足を運んでもらえれば」と話していた。

  • ホテル浦嶋荘
    ▽住所=利府町赤沼字井戸尻129
    ▽電話=022-366-2131
    ▽チェックイン=15時から
    ▽チェックアウト=10時


満月の日は夜まで営業 海辺で感じる異国情緒
MOLA MOLA CAFE(モラモラカフェ)

 瀧さわ家向かいに位置する「モラモラカフェ」は異国情緒漂う海辺のカフェ。「きれいな海辺の景観地で店を開きたい」と考えていたオーナーの末永統海さん(42)が4年前に開いたカフェであり、古民家を改修した開放的なアジアンリゾートの雰囲気が特長だ。窓際のカウンターで松島湾の絶景に目を癒やし、ひき立てのコーヒーや甘いレモネードは日ごろの疲れも取り除いてくれる。

カウンターから湾を眺めながら飲むコーヒーは格別

 「幅広い層に楽しい休息を」とメニュー構成にもこだわり、東南アジアや北欧のフード、デザートが目を引く。おすすめはベトナムのサンドイッチ「バインミー」。フランスパンに野菜やエビ、パクチーなどが挟まれており、魚醤やチリソースをつけて頬張ればエキゾチックな風味が広がる。タイの屋台をイメージした水餃子も人気だ。

野菜がたっぷりのベトナムのサンドイッチ「バインミー」

 練乳をかけて味わうベトナムコーヒーゼリーは食後のデザートにぴったり。アイスクリームはマダガスカル産の天然バニラを使用した本格的なものや、ベルギー産のダークチョコをぜいたくに使ったものなど多彩に取りそろえ、地場産の利府梨を使った自家製シャーベットは豊かな風味がくせになる。季節替わりのオリジナルパフェが味わえるのも楽しい。

 ドリンクも豊富でコーヒー、レモネードのほか、青森林檎ジュース、スパイシーチャイ、桃さんぴん茶など珍しいメニューが並ぶ。エメラルドグリーンが美しいミントソーダはインスタ映えすること間違いなし。

窓越しに四季折々の松島を眺めることができる

 満月の日は夜まで営業するなど遊び心も満点。ハートランドビール、モラモラモヒートなどお洒落な酒をたしなみながら月を愛でれば、まるで海外旅行をしているかのような木分も味わえるだろう。

 末永さんは「自由に気楽に、潮風や風景を楽しんでもらえれば何よりです」と話していた。

  • MOLA MOLA CAFÉ
    ▽住所=利府町赤沼字浜田100-55
    ▽営業時間=11時~17時(ラストオーダー16時半)
     ※満月時は21時まで(同20時半)
    ▽定休日=水曜(満月の日は営業)


【経営ノート 鳥の目・虫の目・魚の目9】
四季食彩「いまむら」オーナー料理人 今村正輝

 地元で育った人以上に石巻愛にあふれているかもしれない。日本料理の腕を振るうだけでなく、生産者の元へ通い、食の物語で「石巻を表現する」のが今村流だ。11年前に千葉県松戸市からボランティアでやってきて、そのまま移住、新規開店と30代を驚速で駆け抜けた。何事にも動じない現実主義者は、ひょうひょうとしたロマンチストでもある。

■石巻の味 五感で楽しむ

 満席の予約がコロナの感染状況悪化で全てキャンセルになった1月のある日。「じゃあフランスの家庭料理でも作ってみようかな」。普段できないことをやってみようと、すぐに頭を切り替えた。

 漁師から直接魚を買い付けるだけでなく、船に同乗して漁を体験し始めたのも、コロナがきっかけ。思わぬ時間ができたため、「やりたいと思ってたことをやってみよう」と2年ほど前に行動に移した。

 おかげで引き出しがどんどん増えた。例えば、タコのかご漁で使うエサはいわし。そこにシャコやつぶ貝が寄って来る。そうすると甲殻類が好きなタコが入って来る。「それならシャコとタコをいっしょに煮たらおいしいはず」。お客にブイヤベースを提供しながら、そんな話をする。牡鹿半島産の大きなけやきのコの字カウンターをはさんで厨房に立った時、目線がお客とほぼ水平だから、自然と会話が弾む。

 船上で神経締めして持ち帰った魚がうまくないはずがない。自らくんできた湧き水しか料理には使わない。米は土鍋で炊く。地元の食材を生かした、目でも楽しめるユニークな料理は評判を呼び、県外から訪れる人も多い。

今年の目標は「伝承料理への取り組み」

 石巻には東日本大震災後、1週間のつもりでボランティアにやってきた。いつの間にか店舗再生班のリーダーとなり、2年後には自分が店を出すことに。それまで修業した店では、まかない料理しか作ったことがなかった。

 そもそも料理の専門学校に通い始めたのは25歳の時。大学卒業後に、ヨーロッパやアジアを放浪するうち料理に目覚め、1年2カ月後に帰国した時には料理人を目指していた。

 その放浪旅が面白い。安宿で知り合った外国人に「君の家に遊びに行ってもいい?」。忘れたころに出かけていき、「本当に来たのか」と驚かれるが、歓迎され、家庭料理をごちそうになる。まるでテレビのバラエティー番組のような珍道中が人生の転機になった。

 店を出して9年。今は忍耐の時だが、悲壮感は全くない。今年の目標は、伝承料理への取り組みだ。

 「日本人、特に東北では春夏秋と準備して冬に食べるものを乾燥発酵させたり、塩蔵させたりしてきた。そういうことを勉強して、少しでも石巻を表現できたら」

 現実を受け入れつつ、なんでも楽しもうという精神が根っこにあるから悩まないのだという。朝、農家に仕入れに向かう時間がリラックスタイム。「日々が趣味」といってはばからない。心掛けているのは「普段から作業にならないように、いろんなことに恋すること」。花を見ては「あすつぼみが付くんじゃないかな」、きれいな山の稜線を見ては「遠回りして帰ろうかな」などと心をときめかせている。

■食は一期一会のロマン

 料理人仲間に驚かれることがある。レシピもタイマーも、この店には存在しないのだ。「食卓は一期一会」だから、一回一回が勝負。料理は五感で作るから、米を炊いても魚を焼いても音で頃合いが分るというのだ。

今一番の困りごとは、大好きな旅に出られないこと。石巻で得た伴侶で最高の相棒でもある由紀さん(33)と海外食紀行に出かけられる日が待ち遠しい。その時が来たら、半年ぐらい南米を1周したいそうだ。


【昭和レトロ館】戻ろう昭和の時代へ

■たばこのお釣りはお駄賃 ほぼどこでも喫煙OK

 父が吸うたばこがエコーからハイライトに変わった。小学生の僕は味の違いを知ることもなく、たばこ屋に駆け、ハイライトを2箱注文した。お釣りはお駄賃。お使いはそれだけが楽しみだった。

 オレンジがエコーで青がハイライト。色でしか区別できず、店頭の自動販売機で買うよりも店番のおばあちゃんから「お使いえらいね」と言われるほうがうれしい。だからいつも対面で買っていた。

ガラスケースに並ぶたばこ。隣には赤電話。たばこ屋の定番だ

 父にたばこを渡すと顔をほころばせながら一本取り出し、マッチに火をつける。「ライターは高温すぎる。たばこはマッチの低温でいぶして吸うのがうまいんだ」。子どもにうんちくを垂れるが、意味は全く分からなかった。

 大きく吸い込んだと思えば鼻穴と口から煙が漏れる。蒸気機関車のようだ。父はビールをあおりながら野球中継に没頭する。大人は変わったものばかりを好む。そんな印象が今も頭の片隅にある。

 駅や食堂はたばこの煙が充満し、映画やドラマでも俳優がプカプカ。思えばガソリンスタンドなど火気厳禁以外では、どこでも吸えたのかもしれない。

 子どもながらに指に挟んで紫煙をくゆらす大人たちの姿にかっこ良さを感じた。昭和はたばこに随分寛容な時代だった。

■丈夫なアルミ製弁当箱

 現在の弁当箱は、プラスチック製が主流だが、昭和50年代ごろまではアルミ製が中心だった。特に子ども向けは、描かれているキャラクターで時代をうかがうことができる。

 実はアルミ弁当箱は利点が多い。まずは軽くて丈夫、そして汚れも落ちやすい。だ円形なので洗いやすく、お母さんに優しい。その反面、ご飯がくっつきやすく、汁物も漏れやすい。物には一長一短があって当然だろう。

丈夫で洗うのも簡単。利点が多いアルミ弁当箱

 子どものころは弁当箱よりも描かれている絵にひかれた。アニメや特撮は放送終了後に次のキャラクターが出ると、なぜが前作の弁当箱は使いにくい。大人には分からない子どもの心理だ。

 親に買い替えを持ちかけるも「まだ使えるでしょ」と一喝。ここは今も昔も変わらないはず。小学校になると給食に伴って弁当箱も使われず、いつしか我が家のアルミ弁当箱は、台所で揚げ物の受け皿として第二の役目を果たしていたっけ。

■黄色の大きなそろばん

 政府は全国小中学校の全児童生徒がパソコンやタブレット型端末を使える環境を整えていく。いわゆる「1人1台」の時代だ。今や小学校にパソコンは当たり前だが、昔はあるわけない。計算と言えば電卓、そして「そろばん」だ。

そろばんを車のように走らせ、怒られた小学生時代を思い出す

 教室に指導用の大きなそろばんがあり、教員の動きを見ながら手元のそろばんをパチパチと動かす。教室に必ずと言えるほどそろばんの猛者がいた。中には机上で指を弾き、即答する暗算も。「かっこいい」。普段の授業で珍回答ばかりしているやつが、この瞬間はヒーローに見えた。

 休み時間となれば大きなそろばんにみんなで触れた。学ぶというよりも興味本位。ガチャガチャと動かすうちに「壊される」と察したのだろう。教員は素早く回収して職員室に持ち帰り、以降、私たちが触れることはなくなった。

 大きなそろばんを見ると小学校時代を思い出す。懐かしい。

  • 松島レトロ館
    ▽営業時間 午前9時~午後5時、無休。
    ▽入館料 大人400円、中高生300円、小学生200円
    ▽問い合わせ ☎022-355-0280


おとなDAYS Web版【創刊記念読者プレゼント】

ⒶMOLAMOLACAFE 食事券1,000円分 15名様

※写真はイメージです

オーシャンビューな席でも、野外席でも海の景色や香りを楽しめるMOLAMOLACAFEから食事券をプレゼント。淹れたてのコーヒーや自家製のレモネード等をどうぞ。

Ⓑ稲庭うどん瀧さわ家 食事券1,000円分 15名様

※写真はイメージです

本場秋田の稲庭うどんを好評の2種類「つゆ」でも楽しめる稲庭うどん瀧さわ家様から食事券をプレゼント。温かいうどんでも、冷たいうどんでもお好みでどうぞ。

Ⓒホテル浦嶋荘 日帰り入浴&昼食プランセット
ペア1組(2名様)

※写真はイメージです

日帰りプランの和洋室でゆっくりと過ごせるプランをペアでプレゼント。昼食および貸切風呂「かめの湯」「玉手箱の湯」男湯「太郎の湯」女湯「乙姫の湯」がご利用可能です。

希望の方はプレゼント番号Ⓐ~Ⓒの中から一つを選択し、その番号と郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号、おとなDAYSの感想や今知りたいこと、特集してほしいことを明記し、media@hibishinbun.comまでご応募ください。締切は2022年4月30日です。応募者の中から抽選でプレゼントを送ります。
※皆様からお寄せいただいた情報は、プレゼント発送時のみ使用します。発表は発送をもってかえさせていただきます。

■バックナンバーのご案内

ファイル容量が大きいため、Wi-Fi環境でのダウンロードをお勧めします。
※上記記事中、下記バックナンバーの広告に記載されているサービスや価格は、掲載当時のものです。現在は内容が変更になっている可能性がありますのでご了承ください。


最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。皆様から頂くサポートは、さらなる有益なコンテンツの作成に役立たせていきます。引き続き、石巻日日新聞社のコンテンツをお楽しみください。