【寓話】父さんはホラ吹き☆☆☆

「ぼくのお父さん」

神原高等学校2年 会田三雄

父さんは何度も世界を救ったらしい。
それどころか、父さんは世界を創ったらしい。
ぼくのいる、この世界を。

北極に氷を張ったのは若かりし父さんだ。
あと、始祖鳥に飛び方を教えたのも父さんだ。

ぼくが15歳になったとき、子細に教えてくれた。
うすうす気付いてはいたが、父さんは人ではないようだ。

母さんは父さんの話をする時いつも儚げな顔をする。
父さんは母さんのことをとても信頼している。
そのせいで母さんは人をあまり信頼していない。
もちろん、このぼくのことも例外ではない。

母さんはぼくの表面を見ない。
焦点がいつも少しだけズレているのだ。
ぼくの母さんはとても美しい。
しかし、ぼくは両親のようになりたいとは思わない。

あの二人(1,33人)はおかしい。
話さなくても何でも通じるし、
話すとその表現技法を褒めてはくれるが、
内容に関してはあまり興味がないようだ。
曰く「感じるものはみんな一緒、感じ方が違う」とか。

ぼくは人を信頼している。
話したことに過敏に反応してくれるからだ。
尾ひれをつけてもバレないし、色を変えても疑わない。
だから、人はとても信頼できる。
ぼくは人が大好きだ。
ぼくの好きなように動いてくれるから。

ごく一部、ぼくの言うことを真に受けない猿がいる。
彼らに出会うとぼくはウキウキする。
彼らを信頼するための方法を探る度に、
ぼくの人を愛する力が鍛えられるからだ。

ぼくは人を愛してる。
つまり、[父さんとごく一部の亜人]以外が愛おしい。
みんなもぼくのことを慕ってくれる。
ぼくはこのありのままの自分が大好きだ。

父さんが言うには、
ぼくのこの世界はあと二百年は安泰らしい。
だからぼくはぼくで新たに世界を創ることにした。
これ以上この世界にいても退屈だから。

あっちでは、綺麗な奥さんを見つけて、
境界が曖昧になるまでその世界を愛したい。
いろいろな生物の世話をして、
進化の様子とその栄枯盛衰を楽しみたい。

願わくば、愛と密と時の主の父となり、
その子が成長したら、その鼻に
それまでにあったのウソみたいな話を吹き込みたい。

自由になるとは、従うべき法を自ら選びとり、
それを全うすることだ。
夢も希望もなくてもいい。ただ、
本当であってほしいことを本当にする力を持て。


愛するわが兄弟へ
               愛田密雄


出典:父さんが手初めにやったこと「概念の創造」(失敗談)


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