でも、あなたを救えるのは、あなただよ、と伝えたい
昨年(2023年)の12月の末。
私は、九州のとあるホテルの前で泣いていました。
真っ暗な空は広く、私はどうしようもない心を抱えていました。もうここに来ることはないだろうという予感に怯えたり、でも、もし、もうここにいなくていいなら楽だな、と思ったりしていたのです。
そんな私の隣には、同期の女の子がいました。
彼女もまた、泣いていました。
理由は、私。
私が苦しんでいるから、彼女は泣いていました。
この一か月ほど前から、私は仕事で悩んでいました。詳しく書くと悪口のようになるので、あえて詳細は書きません。けれど、会社にいる時に泣いて、帰りの電車で泣いて、出社する時も泣いて、金曜日の夜にはすでに気分が落ち込み始めるくらい、仕事に悩んでいました。
そのことを、私は同期に打ち明けていました。彼女は別のオフィスに勤務しているので、普段会うことはありません。けれど、出張で、彼女の勤務地に行くことがありました。やっと直接会えたその日の夜、彼女は言いました。
「私、本当に何かしてあげたいんだけど、何もできない。部署も違うし、何か権限があるわけでもないし……。何もしてあげられなくてごめんね」
泣きながら彼女がそう言うのを聞いて、はっとしました。
ここに来るまで、自分は一人で苦しんでいるのだと思っていました。ひとりぼっちで苦しんでいるのだと。でも、私が行動を起こさなければ、私だけでなく彼女も涙を流すんだ、と思いました。
泣いているのは自分だけのように思っていたけれど、そうではなかったのです。私が苦しむことで涙を流す人がいる。そして、私の状況を変えられるのは、彼女でも誰かでもなく、私だけでした。
その翌月、私は会社を辞めることを決めました。
これは、私に限った話ではありません。そう思うから、私はこの夜のことを書いています。会社を辞めた後、同じように苦しむ人を私は沢山見てきました。それは、リアルでも、オンライン上でも。
もう、あなたは誰かに救いを求めた方がいいよ、と言いたくなる人もいます。でも、ほとんどは違います。自分の世界を変える鍵が自分の手の中にあることを忘れている人が、ほとんどなのです。
誰かにアドバイスを求めたくなる気持ちは分かります。「誰かが助けてくれないかな」と楽観的に考えたくなる気持ちも分かります。「だって、どうにもならないの」と諦めたくなる気持ちも、何らかの癒しを求めて、自分の状況をごまかしたくなる気持ちも分かります。
でも、あなたを救えるのは、あなたなのです。
今、これを読んでくれているあなたも、何かに苦しんでいるかもしれません。何かに深く悩み、明日が来なければいいのにと祈っているかもしれません。あるいは、これからそんな日が来るかもしれません。そんな時には、もちろん、私もあなたのために何かをしてあげたい。でも、何もできないのが現実です。
そもそも、今これを読んでくれているあなたと私は、ほとんどの場合、会ったこともないでしょう。
だから、せめてできることとして、私はこの話を書きました。私にとっては痛くて仕方がなかったこの夜のことを、未来のあなたに伝えたくて、書きました。そうしたら、あなたが、あなた自身を救うために一歩踏み出せると思ったから。
言葉は、無力に思えるかもしれません。本当に苦しいのに、誰も助けてくれないって思うかもしれません。
でも、私は、同期の言葉で分かったのです。
一緒に泣いてくれる人がいること、そんな人でもできないことが、自分にはできるということ……。結局、自分を救えるのは自分だということに。
きっと、あなたが苦しむことで、涙を流す人がいるでしょう。でも、あなたを救えるのは、あなただよ、と私は伝えたい。私にできることは、ここまでです。文章にできることも、ここまでです。でも、「自分を救えるのは自分だ」と知ったあなたには、それ以上のことができるのです。
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