信頼されると仕事は楽しい
何のために働いてるんだろう。何でこの仕事についたんだっけ。大人になってからこんなに怒鳴られるなんて思ってもいなかった。"働く"ってことも"生きる"ってことも謝ることなのかもしれないと思ったほどに。
僕は世間一般で言えば、接客・販売の仕事をしている。この仕事をして2年目だ。正直職業や仕事をこのように肩書きのようなもので片付けるのが好きじゃない。だって具体的に何をしているかは人それぞれだし、色々な業務をやっているからだ。
具体的に言うと、僕は店舗でモノを売っている。仕事内容は接客、発注、売り場作り、扱うものは多種多様なあらゆる商品だ。そして、配達、取り寄せ、修理、お問い合わせ、その他にもあらゆるサービスを行っている。クレーム対応でお客さんの家に行くこともある。
僕の仕事は怒られることが多い。怒るのはお客さんがほとんどだ。商品の不良。サービスの不備。対応の誤り。理不尽に怒鳴られることも多い。自分のミスではないことでも会社のお店の責任として謝らなければならない。これが社会人なのかとそう思った。初めの頃は落ち込むことも多かった。でも落ち込む暇がないくらい、次の問題が発生するのだ。そして上書きされていく。そうそれは嫌なことの上書きだ。いちいちひとつのことでくよくよできないくらい仕事は忙しいし、問題は次から次へとやってくる。仕事やめようかな。転職しようかな。そんなことが頭によぎったことは何度もある。でも僕にはなんとなく分かる。他の仕事だって大変だということを。
やりたいことを仕事にする。 これができてる人はこの社会に何%いるだろう。 そしてその中で自分の仕事を楽しんでいる人は何%いるだろうか。
僕は残念ながらやりたかった仕事をしていない。
それでもそんな僕も目の前の仕事に真面目に取り組んできた。どんな仕事でも真面目に取り組むと得られるものがそこにはあることをある日初めて知った。
それは信頼だった。
季節の変わり目は、売り場の立ち上げが盛んだ。店長が代わったばかりのうちの店もその時期だった。
自グループのパートさんはその日新しく来た店長に
「この時期は売り場の立ち上げが大変でしょう」
と言われたらしく、
「うちのグループは火花さんが手伝ってくれるので感謝しています」
と言ったらしい。
この言葉はさらっと聞こえるかもしれないが僕への信頼が詰まった言葉だった。
これを聞いた僕は初めて働いたことに対する対価を得たと感じた。それは初任給を貰ったときよりも、ボーナスを貰ったときよりも嬉しかった。
どんな仕事もつらいことが多いし、つらいという負の感情はとても強い。働くということはつらいことのように感じがちだ。でもどんな仕事でも目の前の仕事を真面目に取り組めば、周りからの信頼を得ることができる。
"信頼されると仕事は楽しい"
そのことをその日初めて知った。
「本当よくやってるよ。尊敬する」
去年の春から中途で入社してきた方から言われた一言は今も胸に大切にしまっている。
なんだかすごく今までの自分の仕事が、人生が報われた気がして、すごく救われた一言だった。
自分の仕事に誇りが持てなかったり、謝っていくうちに自己否定が強まっていくことが多いけれど、近くで理解してくれてる人が評価してくれる。これがすごく嬉しいことで仕事で得られる一番大きなものなのかもしれない。
仕事というのは心をすり減らしたり、
満たしたりする。
きっと仕事以外のことも全部そうで、
物事には全部両面がある。
僕らはその両面とともに生きていくしかない。
悪い面が強いときは、休んだり、逃げたりしたっていい。体や心、命よりも大切なことはないから。
そして、いい方の面をエネルギーにできれば、仕事も生きることも楽しくなるということを僕は信じて、これからも人生と向き合っていきたい。
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