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小説

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2021年2月の記事一覧

デカルトの方法序説

デカルトの方法序説

こんにちは。記念すべき初めてのnote初投稿となります。

堅苦しいタイトルになっておりますが、僕はデカルトについて話したいわけではありません。この話は僕がこの24年の人生の中で1番記憶に残っている授業の話です。

ある授業でM先生は先生が小学生の時に受けた授業の話をしてくれました。M先生はその授業を大人になって「あのとき先生は、僕らにデカルトを教えてくれたんだ。あれはデカルトだったんだ。」

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半年ぶりに元カノに会った話

半年ぶりに元カノに会った話

 ゴミ捨てに行くのが厳しい寒さになった。陽の光が入り出して、ようやく布団から出る。いつもなら布団の中で小一時間過ごすのだが、今日は違った。

 今日は半年ぶりに元カノの日向(仮)と再会する。半年ぶりということもあり緊張とワクワクが入り混じった複雑な心境だった。僕は半年間も日向を思っていた。ずっと好きだった。

日向が大好きなお笑いコンビわさびの漫才を見に行こうという文言なら来てくれると信じて誘った

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【冒頭だけ小説】イスタンブールの空

【冒頭だけ小説】イスタンブールの空

「あの飛行機雲はあなたと私みたいね」

 二つの飛行機雲が交差し、互いに引き離れていくのを僕らは見てた。

 愛している人に愛されている状況というのは奇跡だ。愛の難しさを知ったとき、自分がこの世界に生きていることが少し奇跡に感じた。

彼女の空を仰いだ横顔が夕日に染められて輝いている。

僕は奇跡のような時間をあとどれくらい過ごせるのだろう。

24歳の男が初めてヨガを体験した話

24歳の男が初めてヨガを体験した話

「おしりでこの大地を、地球を感じ、手や頭で空気の重さを感じてください」

「まぶたを閉じた暗闇からうっすら光る照明の灯りを感じてください」

「吸った空気には涼しさを、吐いた空気には温かみを感じ、手と手を合わせ、自分の体が今ここにあることを強く感じてください」

ヨガインストラクターのミチコ先生は優しい声でそう言った。

僕は瞼を閉じて、目で見るこの外の世界ではなく自分の体全身でこの世界を感じとろ

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ジュールヴェルヌ

ジュールヴェルヌ

梅雨が明け夏本番を迎えた空が淡い紫に染まりかけている。信号が赤に変わりかけた横断歩道を僕らは駆け足で渡る。

「いいから黙って付いてきて」 

楓は嬉しそうにそう言った。

「どこに行くの?」

「恥ずかしいからまだ言わない」

「ねえどこに行くの?」

僕は楓にべったりくっついて、しつこく聞いた。彼女の首元からは檸檬の香りがする。

「調べたいものがあって、図書館に行くの。いいから黙って付いて

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