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第20話 危険な潜入取材 潜入取材とは――取材対象の内部に忍び込んで証拠などの収集を伴う取材方法のこと。マスコミによる(不正や違法行為などの)実態を暴くために使われる手法。テレビ番組や週刊誌などでこの語をタイトルに使用すると、若干視聴率や売り上げがあがる効果が見込める。その成果によっては、警察などの国家機関が動き出すきっかけを作る場合がある。 彼らを乗せたクルーザーは東京湾に再び出て、海ほたるを横目に眺めながら東京湾を抜けていく。 さらに二時間ほどかけて、房総
第19話 美少女効果 カン太が指し示す方を見ると―― 小柄な制服姿の女子高生が金髪のツインテールを元気よく、ぴょこぴょこ跳ね上げながら歩いていた。その後ろには、長身の男子高生を従えている。 ――よく見るとスナック菓子(おそらくポップコーン)を抱えているではないか! 「あれは新聞部の部長じゃないですか?」 「うむ。そうだな。ちょっと声をかけてみるか」 源二はそう言うと、大声で呼んだ。 「おーい! あいざわー!! あ・い・ざ・わ・あ・い・り!!」 その大音
第18話 募金活動はお手のもの?! 「ヤッハロー! 動物愛護部の諸君!」 (作者注※この挨拶はあの有名なあれですが、何か?) そこに現れたのは、小柄な新聞部の部長、相沢アイリだった。 金髪ツインテールを可愛く揺らしながらポップコーンの袋を二つも抱えている。 そのうちの一つを背後に控えている長身の美少年である副部長の藤原大福丸に渡すと、手にしている方の袋を開けて、中身を口に放り込んだ。 「君たちと組んで正解だったな。そんなすごい情報を手に入れるなんてな。どうやった
第17話 奴隷の使命 アイリはニヤリと笑うと、中身が空になったポップコーンの袋をグシャリと丸めた。 それを無言でカン太に渡す。 すると、彼女はパンパンと手をはたきながら、ニッコリと微笑んだ。 「それでは、動物愛護部の諸君、よろしく。私たちは準備に入らせて貰います。サポート期待してますよ」 アイリがそう言うと、副部長の藤原が部室の扉を開ける。彼女が部室から出ると、彼は一礼してから退室した。 そこに残されたのは―― グシャグシャのポップコーンの空袋を握り
第四章 インスタントパイロット 第16話 ポップコーンを食す脅迫者 その美少女は、監視されていた。 上品な整った顔立ちに亜麻色のセミロングの髪がお嬢様っぽい。 その髪に手が触れると、雪のような白い耳が透けて見え、銀色のピアスがキラリと輝いた。 時々振り返りながら、彼女は自宅を目指す。 白いブラウスに黒いリボン、タータンチェックのミニのフレアスカート、黒のオーバーニーソックス。そして、編み上げのショートブーツ。 決してブランド品ではないが、上手に着こなし
≪ パリ滞在記・その13 ≫ 〜Musée Louvre ルーヴル美術館・④ 〜 今回のパリ滞在中、2日間ルーヴル美術館にいました。 2回目の訪問時には、おにぎりと飲み物を忍ばせて「絵画部門だけでも全て回り切ろう!」と本気でした。少し離れた場所にあるアフリカ美術コーナーの入り口前のソファ、誰もいなかったのでこっそりおにぎりを食べました💦 しかし時間・体力・気力の限界により、結局思うように回れなかったことはすでに書いたとおりです。 ダ・ヴィンチ、ラファエロ、ティ
≪ パリ滞在記・その11 ≫ 〜Musée Louvre ルーヴル美術館・② 〜 前回、『モナ・リザ』が「ルーベンスの間」にあって衝撃を受けたと書きましたが、「ルーベンスの間」に『モナ・リザ』があってショックだったというのが正解かも知れません。 ルーヴル美術館で「必ず見たい絵」はたくさんあるのですが、その一つがルーベンス作『マリー・ド・メディシスの生涯』だったからです。 ここで、ルーベンスが描いた『マリー・ド・メディシスの生涯』について。 マリー・ド・メディシ
≪ パリ滞在記・その9 ≫ 〜Musée de l’Orangerie オランジュリー美術館 〜 オランジュリー美術館に行ってきました! 改装のため、多くの作品が横浜美術館に行っていることを知っていたので、休館覚悟で向かうと、モネ「睡蓮」の2部屋は公開していました。ラッキー🤞 200点以上の「睡蓮」を描いたモネ。日本の美術館にも多くの「睡蓮」があります。また、大型企画展の作品として「睡蓮」が来日していることもあります。私もこれまで何点かの「睡蓮」を 時を異にして
≪ パリ滞在記・その8 ≫ 〜Sainte-Chapelle サント・シャペル教会 〜 今回の旅行中、思わず大声をあげそうになったり、訳もわからず涙が出そうになったことが何度もありました。実際に涙を流したことはないのですが、今回は…。 パリのシテ島にあるステンドグラスが美しい教会、サント・シャペルです。 “建築技術の発展によって、開口部を広く設けることが可能となり、大きな窓を色ガラスで装飾するステンドグラスが発展した” というまさに説明通りのゴシック建築
オーストリアのウィーン。 ほんとうに素晴らしい街でした! 少しずつですが、 訪れた素敵なスポットを紹介していきますね。 まず、初日に足を運んだのは 『Cafe Central(カフェ・ツェントラル)』。 https://www.cafecentral.wien 素敵な店内!!! 朝8時にお店に着いたときには すでに常連らしき紳士の方々がぽつぽつといらしていて 新聞を読んだり、朝食を召し上がったりしていました。 (↑私は真剣にメニュー選びを。笑) 選んだのはこちら。
≪ パリ滞在記・その7 ≫ 〜Musée du Luxembourg リュクサンブール美術館〜 1️⃣リュクサンブール公園(Jardin du Luxembourg) 少し早起きして、アパルトマン近くの公園を散歩してきました。 ここは、ルイ13世の母であり、かのルーベンスに連作を描くよう命じたその人、マリー・ド・メディシスが1612年に宮殿の庭園として造らせたリュクサンブール公園。 25haもある広大な庭は手入れが行き届いており、緑地帯あり、噴水あり、子供の
≪ パリ滞在記・その6 ≫ 〜Église St-Germain des Prés サン・ジェルマン・デ・プレ教会 〜 パリ到着の翌日、有名なカフェ・ドゥ・マゴのテラス席に座って文豪になったつもりでご満悦のお上りさん(←私です)。ふと、すぐ横に建っている教会が、駅名や地名になっているサン・ジェルマン・デ・プレ教会であると知りました。 「いつか行こうね」と、その5日後、やっと行くことができました。 パリで現存する最古の教会。建立は6世紀と聞いてもピンときません
北向き、予見 自分が、香の甘い匂いを嗅いでいることに気が付くと、わたしは目を覚ました。ぼんやり左側の壁にくり抜かれた窓を見ると、まだ光が差している。東側の壁――うとうととしていたのは、それほど長い時間ではなかったらしい。 わたしはもたれかかっている脇息から肘を離し、座り直した。ショウジンたちが外の木を切り、わたしのために新しく作ってくれたこの脇息は、頬杖をつくのにも、体を寄り掛からせるのにも良かった。おそらく、最高級の、芸術の域になるデザインの家具は、このような物な
「うれしい」 しゅうちゃんの助手席に乗ったせつなすぐに口にした。 「うれしい?」 語尾を上げ、どうして? そんな顔をしながら同じ言葉をくりかえす。うん、だって、だってね、そこで言葉を切る。夕暮れ時。5時45分。おもてはまだ少しだけ橙色を残しつつ夜を迎え入れる準備をしている。橙色はまるで干し柿のようだ。 「だって? なに?」 ハッとした顔をしゅうちゃんに向け、ううん、なんでもないわ、と首をよこにふる。なんだそれ。しゅうちゃんはとても優しい声をだし目を細める。車の運転の時に