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『おひとりさま出産』1巻を読む:結婚という制度に依存するのはだれか?

七尾ゆずさんの『おひとりさま出産』の1巻を読みました。

友人がこの漫画を読んで「一人でも出産出来るかも」と思ったそうで、私も読んでみようと思ったのです。

いろいろと批判があるようですが、私は面白い!と思いました。

エッセイと思うから、いろいろ言いたくなるような気もしますが、これがフィクションなら、もっとみんな楽に受け入れられそうな気がします。

まず、ナナオさんは絵が上手い(漫画の中ではカタカナ表記なのです)。

40歳まで漫画はあまり鳴かず飛ばずのナナオさんだったようですが、やはり長く描いている人らしく、絵がしっかりしてるし、構成もしっかりしていて、漫画としてまずちゃんと面白い。

絵が上手いって大事ですよね。

この絵の上手さ、構成の上手さがあるから「おひとりさま出産」というヘビーな題材も軽く読めるのだと思います。

途中で出てくる池上彰の番組や、ボディコン、武士のくだりなど私はすごい大好きです(笑)。

しかし、面白おかしく書いてますが、ナナオさん自身は「本当に男に苦労なされたんですね…」ということがヒシヒシ伝わってきます。

ナナオさんは、ミウラさんという借金持ちのヒモ味のあるダメ彼氏を説得して妊活し、見事妊娠するのですが、そのミウラさんのダメさもリアルですが、ミウラさんのことを諦められないナナオさんの気持ちは本当にリアルだなと思いました。

みんな簡単に他人の宣言について、ブレると文句を言ったりします。

他人の理想を自分のその他人の理想に置き換えて、ちょっとブレたら他人を責めてみたりします。

そんな人に限ってブレブレなくせにねぇ。

私なんかは最近ブレる自分を許すことにしました。

そうすればブレる他人も許せるからです。

ナナオさんも、何度もミウラさんをアテにしたくなる瞬間が訪れて、でも、それがリアルで面白いと思うのです。

あとは母親とのやりとりも非常にリアルだなと思いました(エッセイだから当たり前ですけど)。

ナナオさんのお母さんも、ちょっと“毒親”なんですよね。

うちも似たところがあるので非常にわかる。

ナナオさんがおひとりさま出産をするのは、遠巻きにはお母さんの影響があるんだけど、お母さんはそれに気付かずに自分の理想を押し付ける。

ナナオさんは男にも、結婚という制度にもどこか絶望しきっていて、たった一つの希望が子どもなんですよね。

子どもに介護してもらうからいいや、というくだりもよくわかります。

子どもをそういうものに使うな、と言われたら、確かに理想論はそうなのかもしれませんけど、そんな人間綺麗に生きられないですよ。

一番この漫画でグッと来たのは、ミウラさんが「子どものために世界一周して東日本大震災のことを伝えたい」とか言う、ダメな男のインチキ自己肯定煮詰めたような目標を掲げるのですが、
それに対してナナオさんが、「面白そうじゃん」と言い、「だって(私とミウラさんは)結婚しないんだし、好きなだけ自分こじらせて生きれば?」という台詞です。

私は今のナナオさんとミウラさんのお付き合いは、先を読んでないからわからないけど、結婚しないで後悔するのはミウラさんだなと思いました。

ナナオさんは現在は漫画一本で食べられているらしく、多分そこそこ収入はあるのではないかと思うのです。

もちろん、子どもにどんどんお金がかかるので大変だろうと思いますが、この画力と構成力があれば、ナナオさんは他の漫画も描けるだろうし、どんどん成功すると私は思いました。

そうなったときに、ナナオさんとミウラさんの間には大きな格差が出来ると思うのです。

まず、ナナオさんとミウラさんはまず結婚もしてないので、ミウラさんはお子さんの権利を何一つ所有してないのです(離婚ならまた別ですが)。

そして、ナナオさんは子どもが大きくなったら、多分ミウラさんと離れるんじゃないかと思います。なぜなら子どもでそれどころじゃないから。

私は今まで「出産」というものに脅され、期限を迫られ、無理矢理大人にならないとと思っていました。

かくいう私も、もしかしたら「おひとりさま出産」するかもしれません。

でも、この歳になると納期を迫られるようで辛かったけど、自立しなきゃと思えて良かったし、自分の立ち位置をしっかり理解出来て良かったなと思います。

いつまでも子どもの心の男性は、いつまでも子どもの心でいられる恐怖を知らないのではないか、と思います。

結婚や子育てから逃げたとしても、最後追い詰められるのは、逃げた自分なんじゃないかって。

男の人って、本当に何もない人は何もないまま、老後を迎える可能性があります。

私はたまに、そっちの方が恐ろしいなぁって。

思考停止したまま育っても、いつかは考えなきゃいけないんですよね。

最近、まわりの友人で離婚する人がいますが、離れないのは男性だなぁとよく思います。

女の人はさっさと別れたいのに、という人が大半なんだなと。

そういう場面に来ると、男性という生物の「何も産み出していないこと」にはたと気付くのではないかと思います。

でも、女性はだんだんと、強くなってきているし、何よりもううんざりもしています。

いつまでも子どもでいようとする男性に。

子どものようなおじさんと本物の子どもを抱えるなら、本物の子どもだけがいい、と思う人はナナオさんな私に限らず増えるでしょう。

私は「結婚という制度を必要とし、依存しているのは、実のところ男性である」と最近は思うのです。

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