見出し画像

【第18回】びょうきだってことを…

執筆:副島 賢和(昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当)

――――――――――――――――――――――――

 「障害をもつ子どもたちは、友人や周りに自分の障害を理解してほしいと思うのでしょうか。あまり知られたくなのでしょうか?」
 ある医療系大学の講義での、学生さんからの質問です。
 病気や障害の受容について考える機会をいただき、「障害の受容」に関する講義を行いました。
 そこで、私は次の詩を紹介しました。

退院

九十九パーセントは
学校に行きたい
友達と遊んだり話をしたり
勉強をしたりしたい
一パーセントは
ちょっと心配
飲んでいる薬の量がまだ多いから
かぜをひくかもしれない
みんなは自分の病気のことを
よく知らないから
やっぱり説明はしない
なんとなく いやだ
病気だってことをわかって
くれればそれでいい

家に帰れることは
百二十パーセント嬉しい
犬と遊べる
友達と一緒にいられる
やっとできる
退院

(小学六年生・女児)

 退院が近くなり、学校に対しての説明をどうするか、本人と話し合ったときの思いを詩に書いてくれたものです。

  • 保健の先生には、必ず伝えておきたい

  • こういう気持ちでいることは、担任の先生にも知っておいてほしい

  • クラスの友達には詳しくは話さない

ということになりました。そして、そのことは、お母さんから学校に伝えてもらうことになりました。
 子どもたちが退院後、学校に通うことができるようになったときに、何を、どこまで、誰に、誰から説明してもらうかを考えることはとても大切だと考えています。
 その子やクラスの状態によっては、伝えておいたほうがよいことや理解しておいてほしいことなどがあるでしょう。
 その話し合いは、多くの場合大人だけで行われることが多いように思います。大人たちは、その子のことを一生懸命考えて、決めてくれます。でもそこに、その子の考えや気持ちを組み込むことを考えていただきたいと思うのです。
 子どもは、「周りの人が私のために一生懸命に考えてくれた」と感じると、ほとんどの場合、
「はい。大丈夫です」
と受け入れるでしょう。「なんとなく違うんだけど…」と思っていても…。
 もちろん全員が詩を書いてくれた彼女のように考えているわけではありませんので、はじめの大学生からの質問に対する正解があるわけではないでしょう。
 ただ、あとから大人の対応に傷ついたことを話してくれる子どもたちは少なくありません。
 学校での対応は、教師がしっかりと務めなければならないことです。だからこそ、医療者の方にも少し手伝っていただきたいのです。退院に向けて準備が整っていくその時期に、教師や親に言えない子どもたちの、ちょっとした引っかかりや不安を受け取っていただけたらありがたいなと思うのです。

――――――――――――――――――――――――――――――

※本記事は、へるす出版・月刊誌『小児看護』の連載記事を一部加筆・修正し、再掲したものです

著者プロフィール
昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当
1966年、福岡県生まれ。 89年、都留文科大学卒業。 同年、東京都公立小学校教員として採用され、 以後25年間、都内公立小学校学級担任として勤務。99年、東京都の派遣研修で、在職のまま東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。2006〜13年、 品川区立清水台小学校さいかち学級(昭和大学病院内)担任。 14年4月より現職。 学校心理士スーパーバイザー。 ホスピタル・クラウン。北海道・横浜こどもホスピスプロジェクト応援アンバサダー。TSURUMIこどもホスピスアドバイザー。 東京こどもホスピスプロジェクトアドバイザー。日本育療学会理事。 NPO法人Your School理事。 NPO法人元気プログラム作成委員会理事。 09年、ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。 11年、『プロフェッショナル仕事の流儀』(NHK総合)に出演。 20年、NPO法人Your School によるYouTubeチャンネル「あかはなそえじ・風のたより」に出演。https://www.youtube.com/watch?v=ndP0lIrhg8k

2024年5月号 総特集:発達が気になる子どもとリハビリテーション
2024年4月号 特集:特集:小児看護技術の学び 後編;多様な実践の場における修得と教育の再考
2024年3月号 特集:小児看護技術の学び 前編;子どもの権利擁護の実践に向けて

#院内学級 #心理士 #こどもホスピス #小児看護 #育療 #病弱教育 #ことば #小児 #連載 #出版社 #入院 #退院 #病院 #教師 #教員

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?