ボーダーライン ソルジャーズデイ
戦争は終わらない。人間である限り。
あらすじ
あるスーパーで自爆テロが発生した。アメリカへのメキシコからの密入国者によるものと推定された。密入国は麻薬カルテルにより運営され、資金源とされている。テロと資金源を断つため、アメリカ政府はこのカルテルのボスを殺すことを計画する。作戦は彼の娘を誘拐し彼の居場所をあぶり出すことから始まった。娘をさらいメキシコに戻ったアレハンドロ。しかし、自爆テロは米国人によるものだと判明し作戦は中止にされる。国境に残されたアレハンドロと娘はアメリカへ国境を自力で渡ることを余儀なくされる。彼らの運命はどうなるのか。
運命の交錯
2017年に公開された本作では、社会問題であるISを否定的に描き、またトランプにより規制が厳しい密入国について取り上げられている。ストーリーは二つの視点で描かれている。一つ目は、あるアメリカに住む中学生の少年の視点だ。彼はいとこに連れられカルテルの一員として密入国を助ける役割を金のために行っていく。もう一つの視点は、メインであるアレハンドロの視点だ。彼は工作員として誘拐の実行を担う。彼らは別々に描かれているのだが4回交錯する。その交錯が物語を語るんである。
1回目の交錯は、アレハンドロとマットがメキシコ警察と話すシーンだ。彼らはあるフードコートの中で話をする。その後、少年のシークエンスとなり彼はカルテルの仕事の前金を受け取りに行く。そこはフードコートの中にあるのだ。しかしここではまだ直接的な接触はない。
2回目の交錯は、テキサスでアレハンドロ、マットらが駐車場内を走っていると突然少年が飛び出し衝突しそうになる。その少年が彼なのだ。ここで彼はアレハンドロの顔を見る。その後マットが一言「すべての人がテロリストに見えるな」と。ここで伏線が張られているのである。
3回目はクライマックスのシーン。アレハンドロが越境用のバスに乗る直前、少年は彼が2日前にテキサスで会ったことを思い出す。そのせいでアレハンドロは失敗し捉えられて処刑されそうにになる。そこで処刑役に選ばれるのがなんとあの少年なのだ。少年は迷うことなくアレハンドロの顔面を撃ち抜くのだ。純粋な少年が立派なカルテルの一員に成り下がってしまうのだ。
4度目はラストシーン。不死身のアレハンドロは弾が口を貫通したため奇跡的に一命を取り留める。一年後にシーンが移り変わり、全身タトゥーのあの少年がかのフードコートに向かい歩いていくシーンが映される。中に入るとなんとアレハンドロが立っているのだ。「暗殺者になりたいのか」「お前の将来の話をしよう」アレハンドロのセリフで幕を閉じる。
4度の交錯がストーリーの軸を担っているのである。作戦が失敗し、通常の流れで見ると話が進まず心にくすぶりを覚えるが、2人の運命の物語だと解釈すれば実に首尾一貫としたシナリオなのである。
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