82.社会の課題 part.2~福祉編
現在の日本は少子高齢化が進んでいて、今後はますます勢いを増して突き進みます。
2025年問題も既に始まっています。
若い世代の人口や出生率が減少しているのに対して、75歳以上の後期高齢者が国民の4人に1人という超高齢社会を迎えています。
今までのまま今後も同じ対応をしていくとなると、社会保障の担い手となる労働人口が減っていくことによって、社会保障費のバランスが崩壊し、労働人口への負荷が増加します。
医療や介護業界の需要と供給のバランスも崩壊します。
高齢者数の急増に伴って要介護(要支援)認定者数が増加します。
介護保険制度が始まった2000年は218万人だった要介護(要支援)認定者数は年々増加しており、2021年7月末にはその3倍以上の687万人にまで増えました。
今後も更に増えていくことは確実です。
急増する要介護認定者数に介護施設数が追いついていないという現状があります。
施設というよりは人が足りないと言いましょうか…。
介護施設数が追いついていないだけではなく、介護事業の倒産も増加しています。
介護業界の人材不足はずっと言われてきたことですが、いよいよ本番と言うか前哨戦の2025年に突入してしまいます。
人材不足とは言いますが、実は介護職員数自体は介護保険制度の施行後増加し続けています。
2000年に54.9万人だった職員数は2012年の時点でおよそ3倍の163万人にまで増加しました。
それ以降も増えています。
しかし、急増する要介護者数に追いつかない状況で、慢性的な人材不足が起こっています。
2025年には32万人、2040年にはその倍以上の69万人もの人材が不足すると言われています。
このように、年々増える高齢者に充分な介護サービスを提供する為の設備や事業、人材も足りていないという現状があります。
その結果、介護難民(介護が必要なのに適切な介護サービスが受けられない高齢者のこと)や老老介護(介護を行う側、受ける側双方の年齢が65歳以上であること)、認認介護(老老介護の中でも双方が認知症であるという危険な介護状況)などの問題が発生しています。
介護が必要になっても、自己決定ができて、残存能力を最大限に活用して、これまで慣れ親しんだ環境で生活を継続できる支援が求められています。
これには自助努力が必要になってきます。
このように福祉とは言っても、日本では高齢者福祉に重点を置いてきた過去があります。
福祉=介護みたいな見方をしている人も大勢います。
昨年になって急に“異次元の少子化対策”なんていうスローガンが掲げられた時には驚いたと言うか吹き出しました。
高齢者福祉の話に戻りますが、今は来年度の介護報酬改定の話題で盛り上がっています。
介護職の在り方や人手不足、待遇改善などが議論される中で驚かされる内容ですが、まぁ、やはり有識者と言われる方たちと学生時代にあまり勉強してこなかったと思われている私のような介護現場の人たちとの間での感覚の差が強く出ているのでしょうか…。
訪問介護の基本報酬を引き下げるという大胆な策を取ってきました。
何か訪問介護に替わる何かがあってのことなら良いのですが…。
政府は待遇改善の加算措置で、トータルで見ると報酬の減額には繋がらないと言っています。
厚生労働省も、訪問介護については他のサービスよりも利益率が高いと指摘しています。
でも、毎年の年度末に聞くニュースでは、いつも訪問介護業界は厳しい状況にあるという話ばかりです。
2023年の訪問介護事業者の倒産件数が過去最多になっています。
他業界では賃上げなどの処遇改善が一部で期待されているので、飲食業など他業界との人材獲得競争もあります。
介護業会の人手不足解消は難しいと考えられます。
それに、どれだけ増やせても利用する人はもっともっと増えます。
訪問介護の利益率が高いのに、どうして倒産件数が過去最多になっているのでしょうか…。
求人倍率が15倍以上になっている原因は何でしょうか…。
物価高騰でどの業種にも賃上げの動きがある中で、訪問介護は賃上げが必要ないと判断されたのかもしれません。
残念な話です。
それで人が足りないと大騒ぎされてもねぇ…。
地域共生社会の実現に向けた取り組みもここまでのようですね。
ここで社会保障費について、話を戻します。
社会保障費は国民から集めた保険料で賄われています。
しかし、高齢化が進んだことによる社会保障給付費の増加、少子化が進んだことによる保険料の減少などが重なって、税金や借金で賄う額が増えています。
財務省は、1990年度には約16兆円だった社会保障費を賄う税金・借金の額が、2019年度には約52兆円まで増えたと公表しています。
借金で社会保障費を賄っている現状は、子どもや孫の世代に負担を先送りしていることを意味します。
このまま借金で賄う額が増え続ければ、未来の世代の暮らしを支えることが難しくなります。
日本の経済を支えているのは一人ひとりの労働者ですが、すべての労働者が生き生きと働けているとは言えない現状があります。
日本は世界4位のGDPを誇る先進国とされていますが、国内には貧困で苦しむ人がたくさんいます。
日本で主に問題となるのは、その国の水準と比較して経済的に貧しい状態を表す“相対的貧困”です。
厚生労働省の調査によると、2018年時点での日本の相対的貧困の割合は15.4%です。
同じ調査で、子どもがいるひとり親世帯の貧困率は48.1%という結果が出ていて、特にシングルマザーやシングルファーザーのひとり親世帯が貧困に陥りやすい状況がわかります。
ひとり親世帯の場合、仕事だけでなく家事や育児も1人で行うことがほとんどなので、親にかかる負担が重くなります。
貧困が原因で子どもと暮らせなくなったり、子どもに貧困が連鎖してしまったりと、貧困がもたらす影響は長く引き摺る形になってしまいます。
そしてジェンダーの不平等が目立つ国でもあります。
ジェンダーは、生物学的ではない社会的、文化的な“男らしさ”や“女らしさ”といった分け方のことです。
世界でもジェンダー平等が求められるようになっていますが、日本はかなりの後進国です。
世界経済フォーラムが公表したジェンダー・ギャップ指数2021では、日本は120位という結果でした。
日本では、“男は仕事、女は家庭”という考え方が根強く残っていて、賃金の面でも男女間で大きな格差があります。
ジェンダーによって生き方や働き方が制限されていては、生産性や国民の幸福度を高めることはできないと考えられます。
今後の日本の未来を担う子どもたちも、様々な社会課題に晒されています。
まず待機児童の問題があります。
保育所に入る条件を満たしていても、入所できないでいる児童のことを待機児童と言います。
待機児童が出る原因としては、保育施設が不足していたり、保育時間が折り合わなかったりすることが挙げられます。
保育施設が求められる背景には、ライフスタイルの変化や非正規雇用の増加などによって、出産後も働く女性が増えていることがあります。
こうした事態に対応する為、厚生労働省では保育施設の整備を各都道府県で進めています。
子どもの社会問題と言えば、いじめです。
今でも各地で起こっています。
それも最近は大人が助けてくれないことが増えてきました。
いじめられると心身に大きなダメージを受けたり、学校を欠席することで教育機会を逃すことにも繋がります。
ヤングケアラーの問題も最近はよく取り上げられるようになりました。
ここまで、これまでの80項目のお勉強を簡単にふりかえってきていますが、これらのことは日本の社会が抱える課題のほんの1部です。
様々な課題があり、それらが絡み合って複合化することで、もっと巨大な問題になることもあります。
地球にはヒトだけが生きているわけではありませんが、ヒトの都合で随分と地球は壊れ始めています。
続きは『社会の課題 ~環境編』で振り返ります。
写真はいつの日か…、美瑛町の拓真館で撮影したものです。
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