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69.社会と育児 ~ 完全版

少子高齢化と言われますが、日本の高齢化率が高くなり続けている大きな要因は、どちらかと言うと長寿化より少子化にあります。
 
日本の高齢化率は世界2位に君臨していて、29.1%になっています。

通常は21%を超えると超高齢社会と呼ばれるのでとてつもない数字です。
 
これはまだまだ途中段階で、2065年には40%近くまで上昇すると予測されています。
 
総人口に占める子どもの割合は1950年に3人に1人だったのが、現在は8人に1人と低下し続けています。
 
平均寿命の延びも高齢化率を高める方向に働きますが、今の日本だと実際のところは出生率の状況によって高齢化率が左右されます。
 
ただし、ここで問題なのが、未来の希望……今始まったわけではなく、これまでもずっとそうだったと思いますが……“子ども”は数揃えば良いという訳ではなく、やはり、生まれてきて、いつか、独り立ちして親元を離れた時に、社会をしっかりと支え合えるように育っている必要があります。
 
その為には、親やその他の指導する大人もしっかりする必要があります。
 
子どもの育ちと現状はどうなっているでしょうか…。
 
近年の幼児の育ちについては、基本的な生活習慣や態度が身についていない、他者との関わりが苦手、自制心や耐性がない、規範意識が充分に育っていない、運動能力が低下している…などの課題が指摘されています。
 
小学校などのクラスにおいて学習に集中できない、教員の話が聞けずに授業が成立しないなど……学級がうまく機能しない状況が多々あるようです。
 
そして、近年の子ども達は多くの情報に囲まれた環境にいるので、世の中についての知識は以前に比べると増えてはいるものの、その知識は断片的で受け身的なものが多く、学びに対する意欲や関心が低いとも指摘されています。
 
子どもの育ちの変化の背景としては、少子化、核家族化、都市化、情報化、国際化など…日本の経済社会の急激な変化により、人々の価値観や生活様式が多様化している良い面もあれば、社会の傾向として、人間関係の希薄化、地域社会のコミュニティ意識の衰退、過度に経済性や効率性を重視する傾向、大人優先の社会風潮などの悪い面もあります。
 
このような社会状況が、地域社会などにおける子どもの育ちの環境や、家庭における親の子育て環境を変化させ、更に、このような変化に伴って幼稚園や学校などの施設の教員などにも新たな課題が出てきています。
 
これらのことが複合的に絡み合って、子どもの育ちに影響を及ぼしていると考えられています。

社会の変化が、子どもの成長に大きな影響を与えています。

子どもが成長して自立する上で、多様な経験をすることが不可欠です。

実現や成功などのプラス体験だけではなく、葛藤や挫折などのマイナス体験もとても重要な経験です。

しかし、少子化や核家族化が進行して、ここ数年は新型コロナウイルス感染症などの影響もあり、子ども同士が集団で遊びに熱中したり、時には葛藤しながらお互いに影響し合って活動する機会が減少するなど…の様々な体験の機会が失われてしまいました。

そして、都市化や情報化の進展によって、子どもの生活空間が自然や広場ではなく、家の中でのテレビゲームやインターネット…特にYouTubeなどの室内の遊びに移行しています。

スマホとにらめっこ…みたいな子ども多くなっています。

偏った体験ばかりで、現実と空想の境界がなくなっている子どもも少なくありません。

更に、人間関係の希薄化によって地域社会の大人が地域の子どもの育ちに無関心になって関わろうとしないことや、関わりたくても関わり方がわからない…などの現代ならではの問題があります。

子育ては本来、子どもに愛情を注いでその存在に感謝しながら、子どもの日々の成長に感動しつつ、親も親として成長していく……大きな生きがいをもたらしてくれるものです。

子どもの成長を感じた時や笑顔を見た時などに喜びを感じるものです。

このような喜びや生きがいは、家庭や地域社会の人々との交流や支え合いがあってこそ実感できるものです。

しかし、現代は、核家族化の進行や地域における人間関係の希薄化などにより、本来は我が子を自分で育てたいと思っていても、どのように関わって良いかわからないで悩み、孤立感を募らせて情緒不安定になっている親が増えているようです。

このような状況で、児童相談所での虐待に関する相談処理件数が増加しています。

また、女性の社会進出が一般的になり、仕事と子育ての両立の為の支援が進んでいます。

子育ての他にも、仕事やその他の活動を通じた自己実現の道が選択できる社会になり、一度は子育てに専念することを選択したものの、その生活に不安や不満を感じて、子育てが自分の人生にとってのハンディキャップになっているのではないか…と考える親も増加しているようです。

物質的に豊かで快適な社会環境の中で育ち、合理主義や競争主義などの価値観の中で育った人が多い現代の親世代です。

効率的でなく、楽でもなく、自分がどんなに努力しても自分の思い通りにならないことが多い子育ては、そんな親にとっては、困難な体験であり、その喜びや生きがいを感じる前にストレスばかりが溜まってしまい、耐え切れなくなる場合も多いようです。

そして、経済状況や企業経営を取り巻く環境が厳しい現代に、労働時間の増加や過重な労働などの問題があり、親が子どもと一緒に食事を取るなどの…子どもと一緒に過ごす時間が少なくなり、このことも親の子育て環境に影響を与えていると考えられています。

現代は以前よりも様々な問題で、親の子育てが困難な状況になっています。

その子育て環境を改善し、家庭や子育てに夢を持てる社会の実現に向けて、国や地方自治体が主体になって様々な子育て支援の取組が行われています。

2023年4月には、こども家庭庁も発足しました。

しかし、その取組の結果として、親の際限のない保育ニーズを受け入れて、単なる育児の肩代わりになってしまっている場合が多いのが現状です。

その結果、子ども達は、人を愛することや信じる心などの人との関係性の根幹を形成する上で必要な信頼できる大人との1対1による絶対的な依存関係を確保することができなくなり、子どもの健やかな成長に大きな影響を与えていると考えられています。

“父母その他の保護者が子育てについて第一義的責任を有する”

…という基本を忘れてはいけなく、親の育児を単に肩代わりするのではなく、親の子育てに対する不安やストレスを解消して、その喜びや生きがいを取り戻して、子どものより良い育ちを実現できるような支援が必要になってきます。

それと同時に、親が子どもを育て、その喜びや生きがいを感じつつ、仕事やボランティア活動などの様々な形で社会と関わりを持てる……子育ての他にも様々な活動を通じて自己実現を果たせるような環境整備が求められます。

社会環境や家庭環境の変化により、学校や幼稚園など…その他の児童関連施設に勤務する職員には、その変化に伴う課題に対応する為の能力が必要とされています。

子どもの家庭や地域社会における生活との間で、発達や学びの連続性を保ちつつ教育を展開する力、特別な教育的配慮を要する子どもに対応する力、他児童施設などとの連携を推進する力などの総合的な力量が必要とされています。

更には、子育てに関する保護者の多様で複雑な悩みを受け止めて、適切なアドバイスができる必要もあります。

以前だと、家庭で親が中心になって祖父母などの親族やご近所さんなどの地域、学校などとの連携でクリアできていたことを、今の時代はいろいろな児童関連施設の職員が請け負う場合も多く、総合的かつ専門的な知識が必要とされています。

どのような状況であっても社会の変化に順応して、今の大人が乗り越えていかなければいけない問題です。

これから僅か20~30年以内に、環境問題や少子高齢化による人口減少などの様々な問題で、どんどん日本の社会が追い詰められていくと思われます。

その時の日本の社会、経済を中心になって動かしているのが今の子ども達です。

写真はいつの日か…豊平公園で撮影したものです。

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