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58.学歴社会の“学歴”とは何?

日本の社会は、未だに“学歴社会”と言われています。

幼少期から“お受験”を経験する子どもたちがいたり、大手企業に就職する為に超有名大学に入ったり、人生の“勝ち組”になる為に頑張ります。
 
人生の選択肢として高学歴卒になる大学へ進むことを目標にしている人は、まだまだ多い傾向にあるということです。

小学校や中学校、高校で学校教育の勉強を頑張っている人の多くが“なぜ、勉強をしなければいけないのか”と考えた時に、“親に怒られるから”という話もありますが、親が“勉強しなさい”と言う理由としては、この学歴社会で勝ち抜いていけるようにその子を思ってのことが1番強いのではないでしょうか…。
 
しかし一方では、学生で起業する若者やベンチャー企業への就職を望んでいる学生も多くなってきているようです。

ベンチャー企業とは…、英語ではベンチャー(Venture)が“冒険・投機”という意味ですが、日本で使われているベンチャー企業は“新しいビジネスに挑戦する会社”、“クリエイティブな印象の強い新興企業”を指します。

多くのベンチャー企業に見られる特徴は、最先端の技術やビジネスモデルを武器にした会社経営を目指していることです。

また、大企業と比べて会社の規模が小さく、多くのベンチャー企業は小規模から中規模になります。

ベンチャー企業では、学歴ではなく経験や実績、個性などを重視した採用が目立ちます。
 
また、求められる能力として、行動力、発想力、好奇心、チームワーク力、コミュニケーション力、ポジティブ思考などが挙げられます。
 
今回は、ベンチャー企業が増えつつある日本で学歴社会が根付いている理由をお勉強してみます。
 
就職活動時に学歴社会を感じるのは…、
 
・企業説明会での学歴フィルター

・募集要項に“短大、大卒以上”といった制限がある

・学閥がある企業が存在する

・学校名を名乗る場面が多々ある

・初任給に差が出る

…等です。
 
実際には、履歴書に“最終学歴”を記載しないといけない時点で、現在も学歴社会であるということです。
 
また、企業説明会の時にも採用する企業側が学歴フィルターをかけて応募者を選別している場合もあります。

学歴フィルターとは、就職活動において企業が採用する学生を学歴によって選別することです。

特定大学以外の学生を採用選考から外す…大学名だけで選考に落ちるといった状況を指します。
 
更に、最終学歴が大学院卒、大卒、短大、専門学校卒、高卒などの差で支払われる初任給に違いが生じます。

学生時代も社会人になってからも、学歴社会であることを感じる人は多いと言えます。
 
学歴が高いことによって自分にプラスになるメリットは…、
 
・生涯年収が高い傾向がある

・就活に有利

・アピール材料が多い

・優秀な人材とのネットワークを築きやすい

・社会的信用が得やすい

…等です。
 
“高学歴=高収入”という印象が、一番大きく感じられるメリットかもしれません。
 
しかし、大手企業へ就職できたとしても、決して一生安泰という保証がついてくるわけではありません。
 
今の世の中、どんなことが起きるのかは誰にもわからないです。

ある日突然、“業界最大手の○○会社が倒産!”という事態にもなりかねません。
 
そうならないように各企業は内部留保を溜め込んでいて、労働者の賃金がなかなか上がらないという悪循環が生じているのが今の社会です。

そんな中でもなぜ学歴社会はなくならないのか…。

学歴社会がなくならない理由の1つは、“信用度”です。

青春真っ只中の学生時代に楽して入れる大学を志望するのではなく、合格の確証もない有名大学への受験を志して勉学に励んできた月日は“実績”に等しいものがあります。
 
また、上を目指す姿勢や努力した経験は何にも代え難いものです。

学生時代の経験は、社会人になって発揮される能力でもあります。

達成する力や努力する姿勢、簡単には辞めない忍耐力など…社会生活において必要なスキルばかりです。

そんな背景により、学歴を見て採用を決めてしまう企業も多いのかもしれません。
 
逆に、大学受験に合格したことが“人生のゴール”と勘違いしてしまい、その後、その勘違いをしたまま社会で名門の“学校名”だけで生き抜いていく人も大勢います。

そこがネックなところです。
 
履歴書には、最終学歴を記載する必要があります。

新卒や第二新卒での就活は学歴の影響が大きいと感じることも多いと思います。
 
しかし、既卒や転職者にとっては、さほど大きな影響を及ぼさない場合もあります。

超有名大学卒の場合は何歳になっても高学歴のレッテルが貼られる場面をよく目にしますが、卒業後に就職をしないでフリーターやニートの生活を送っていた人が、“高学歴だから採用”と面接で即決されるわけではありません。

高学歴はあくまでも20代の時期にだけ特別扱いされるものだと言えます。
 
30代にもなれば、社会人としての経験や能力、これまでの実績、資格の有無などを重視する企業が多くなってきます。
 
大企業の中には、学校別に分けてチームを組む学閥を実践している会社もあり、学歴社会に焦点を当てていない企業への就職を望んでいる若者もたくさんいます。

そのような人には、学歴とは一切関係なく人材を見る“ポテンシャル採用”という採用方法があります。

その逆として、経験者を募集する“即戦力キャリア採用”という枠もあります。
 
ポテンシャル採用枠の募集では経験が問われないことが多いです。
 
未経験者からの応募や経験が少ない人でも採用されやすい傾向にあり、今後のポテンシャルに期待されていると言えます。

その為、1から未経験の人材を育て上げたいと熱心に教育や研修を実施する企業もあります。

ポテンシャル採用の対象とされるのは、20代の第二新卒者がメインになります。

“違う業界で心機一転がんばりたい”という未経験者からの応募が多く見られるのが特徴です。
 
その一方で、即戦力を重視したキャリア採用枠の募集では、これまでの経験を活かして活躍できる人物が求められる場合もあります。

即戦力キャリア採用の対象とされるのは、主に中途採用者がメインです。

“経験や能力、資格を活かしたい”という経験者からの募集が多いのが特徴です。

学歴に関係なく能力を最大限に引き出せる企業と出会い、ちゃんと収入を得られることが就職活動の成功と言えるのかもしれません。

学歴社会に乗った日本人の多くは大学入試までは必死に勉強しますが、それ以降はほとんど勉強しないという特徴があります。
 
なぜそうなるかと言うと、日本企業の多くが専門能力を評価しないからです。

アメリカでは大学や大学院での成績で所得が決まるので、学生は必死で勉強します。
 
“IMD世界タレント(高度人材)ランキングWorld Talent Ranking 2021”では、日本が世界最低になる項目があります。

全体では、64カ国/地域の中で第39位(どんどん下降中)ですが、“経営層の国際経験”は64位で堂々の世界最低です。
 
これ以外にも“言語力”の62位は最低に近いですし、“管理職の能力”の58位もかなり低いです。
 
このランキングで注目したいのは、日本の評点は高校までの教育成果を表す“PISA評点”では世界第5位と非常に高い評価ですが、“大学教育”では54位と低い評価になってしまっています。

PISA調査は、OECD(経済協力開発機構)が義務教育修了段階の15歳児を対象として行なっている学習到達度調査です。

読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野で実施しています。
 
つまり、日本人は高校までは真面目に勉強するので世界トップクラスの評価になりますが、大学に入学してからは勉強しないので世界最低に近い評価になってしまうということです。

“ガリ勉”といったあまり褒められた気がしない呼ばれ方は、小中高校生までに使われる言葉です。
 
このように大学に入ってしまえば、勉強しない人が多いのが日本の特徴です。

しかし、専門職としての教育は大学や大学院…又は専門学校で行われます。

日本の大学は、入学した学生をよほどのことがない限り卒業させます。
 
だから、学生は勉強しません。

そして、アルバイトとサークル活動に精を出します。

この学歴社会では弱い立場になってしまうかもしれませんが、半端な気持ちで大学に通うよりは、専門学校で自分のやりたいことを勉強した方がよっぽど自分の為になるし、実質的には社会の役に立つのではないかと思います。
 
なぜ日本人は、大学で勉強しないのか……その理由は、日本の企業が、大学や大学院での教育成果を賃金面で正当に評価しないからです。
 
日本の企業は前述したとおり、採用にあたっては大学卒という枠を設けています。

それは“大学卒の枠で採用した人員は将来、幹部に昇進し得る”という意味であって、大学で学んだ専門知識を評価しているのではありません。
 
ほとんどの企業で、大学卒新入社員の初任給は一律同額であるのが普通です。

金融機関では、企業間でも1円の違いもないほど一律です。

大学卒といっても、能力は個人によって大きな違いがあるはずですが、そうしたことはほとんど評価されません。
 
日本人が勉強するのは大学受験までの期間だということは、日本の賃金制度の下では、合理的な考え方であり行動と言えます。
 
アメリカの場合は大きく違います。

アメリカの学生は、大学に入学してから、あるいは大学院に入学してから死に物狂いで勉強します。

なぜなら、そこでの成績で初任給が大きく違うからです。
 
特に、ロースクールやビジネススクールなど“プロフェッショナルスクール”と呼ばれる修士課程相当の大学院で顕著にそうです(それ以外の専門分野でも、大学生や大学院生は、非常によく勉強しています)。
 
MBA(Master of Business Administrationの略……日本では経営学修士と呼ばれ、経営学の大学院修士課程を修了すると授与される学位のことであり、資格ではありません)などの学位をとれば、著しく高額の初任給を期待できます。
 
しかも“どのビジネススクールのどの専門で、どれだけの成績だったか”によって、初任給が大きく違います。

スタンフォード大学のビジネススクールの場合、基本給(年収)が全体の平均では16.2万ドル(1ドル=144円で2333万円)ですが、金融業では18.1万ドル(同2606万円)です。

その中の“ベンチャーキャピタル”では、19.1万ドル(同2750万円)です(これは、2021年卒の場合です)。

このように高給なのは、スタンフォードのMBAだからです。
 
そして、スタンフォードのビジネススクールに入るには大学の成績が良くないといけません。

だから、大学生は死に物狂いで勉強します。

入学できても、自動的に学位が取れるわけではありません。

成績が悪ければ、途中で容赦なく落とされます。

そして、就職先の分野によって年収がかなり違います。
 
どの分野の企業に入れるかは、成績によって大きく影響されます。

だから、大学院生も死に物狂いで勉強します。

すべてがうまくいけば2000万円を超える年収だから、高額の授業料を払っても、ごく短期間のうちにそれを取り返せます。

つまり、一流大学院で猛勉強することは、もっとも収益率が高い投資になります。

アメリカは、この意味において真の学歴社会です。
 
それに対して日本の状況は、賃金構造基本調査(厚生労働省)によると、2021年度の25~29歳の平均月収は大学卒266.2万円に対して、大学院卒 278.8万円です(男女計)。
 
大学院卒をスタンフォードのMBAと比べると10倍近い開きがあります。

OECDの統計で平均賃金を見ると、アメリカは日本の1.9倍です。

専門職における日米賃金格差は、これより遙かに大きいです。

ここまで書いてきたのが日本の学歴社会の現状です。
 
“大学に行って人生の勝ち組になってやる”と決心した人たちの多くが、大学受験の勉強で学問を終えるということで、ここからは大学に入るまでの学校教育について少し見てみます。
 
義務教育は今と昔では少しだけ変わっています。

今の小学生はタブレットやパソコンを使って授業や宿題を行ったり、英語教育が必修になったり、高校では投資信託についての授業があったり… 今の教育は、実用的なものにだんだんと変わり始めています。
 
ただ、変わり始めた日本の教育にもまだまだ課題点があります。

日本の教育は約150年もの間、教育システムが変化していません。
 
IT化が進み世界中でグローバル化が広がっているのにも関わらず、日本は大きな遅れを取っていて問題点が山積みであると言われています。
 
1クラスに約30人の生徒が集まって、ひたすら先生の話を聞く…日本ではこういった講義スタイルが授業の主な特徴です。
 
もちろん、先生から学んだ事をテストで確認するということはありますが、基本的にアウトプットが無く受け身な授業がまだまだ多いというのが現状です。
 
また、教科書通りに進んでいくので、クラスのひとりひとりのレベルに沿って教えることができず、結果的に個々の能力を伸ばすことなく全員で足並みを揃えてしまうことになります。
 
その為、子どもひとりひとりの才能や個性を伸ばすことが非常に難しい授業スタイルで、この点がかなり海外と異なっていると言えます。
 
日本の教育スタイルは、“偏差値の高い高校や大学に入る為”や“入試で合格する為”など、自分が学びたいからではなく、大学の名前やブランド力を気にして、そこに合格する為に勉強していることが多いです。
 
確かに専門的な事を学びたくて頑張っている人がいることも事実ですが、ほとんどの人が良い高校に入ること、良い大学に入ることを目標にして勉強をしています。

日本はその目標を達成する為に勉強する…というスタイルが強く感じられます。

親も社会も、まだまだ偏差値でその学校の良し悪しを決める傾向が非常に高いということです。
 
基準が“子どもの個性”ではなく、“学校での数字”になっています。
 
また、試験で良い成績を取った学生が“優秀”とされるので、学校側にも良い点数を取る為の教育が求められている傾向があります。
 
これではいつまで経っても子どもの才能を引き出して素晴らしい才能を開花させることはできないと考えられます。
 
こういった授業スタイルは自発的な学びに繋がりにくいので、問題視され始めています。
 
学校で勉強していても、“ここの範囲を来週までに覚えてくること”、“ここは明後日テストに出すから文章を覚えてくること”などと言われるような授業です。
 
日本の教育スタイルは基本的に“暗記学習”が多く、社会や理科、英語においても勉強は暗記をする場合がほとんどであり、自分で考えたことや疑問に思ったことを話し合うような授業ではないことがほとんどです。
 
こういった学習方法は問題提示能力が欠けてしまうという点で、現在は問題視されています。
 
ただ暗記するだけで、その“なぜ?”の部分を求めることが少なく、結果的に内容が浅くなってしまって、記憶に残りにくい…丸暗記でテストの為の学習をするといったようなスタイルになってしまいます。

小中高で習った内容なんて、社会人になる頃には、ほとんど忘れているのではないかと思います。

欧米では日本のようにただ教えるのではなく、“ひとりひとりの才能を伸ばす”、“可能性を導き出す”ことに重点を置いています。
 
また、日本のように成績が良くても悪くても“義務教育だから1年ずつ進級できる”…といったような仕組ではありません。
 
成績が良ければ飛び級をしたり、特別な支援教育を受けることが可能です。

もちろん小学生が大学まで飛び級するということも可能です。

また、早生まれの子は1年後の学年で入学することもでき、子どもひとりひとりに合った教育環境を与えています。

欧米などの海外では、日本のように暗記をしてテストで問題を解くといったような詰め込み型の学習方法ではなく、自分で調べたり、解決法などを考えたりする問題が一般的です。
 
その為、日本のように決まった問題から決まった答えを解くような宿題やテストはほとんどありません。
 
親が宿題やテスト勉強を教えるなどの干渉はあまりないと言われています。
 
日本では小学校と中学校の計9年間が義務教育になっていて、日本中の全ての子どもたちが教育を受ける権利があります。
 
今の日本の教育は課題点が多く、もっと個人の才能や能力を伸ばす学習方法が必要だと言われています。

学歴社会…。
 
どこどこの名門大学の卒業者です…。

はい、ご立派です。
 
“アメリカは実力社会であり、大学卒であることは求められない”といいます。
 
その証拠として引き合いに出されるのが、テスラCEOのイーロン・マスクさんの言葉です。
 
“テスラの採用応募に大学の学位は必要ない。そして願わくば中退して何かを成し遂げていてほしい”と言っています。
 
イーロン・マスクさん自身はペンシルベニア大学で学士号を取得していますが、スタンフォード大学の博士課程を中退して最初の会社を立ち上げました。
 
アメリカには、大学を中退した成功者がたくさんいます。
 
・ビル・ゲイツさん(マイクロソフトの創業者:ハーバード大学中退)

・マーク・ザッカーバーグさん(フェイスブックの創業者:ハーバード大学中退)

・スティーブ・ジョブズさん(アップルの創業者:リード大学中退)

・スティーブ・ウォズニアックさん(アップルの創業者:カリフォルニア大学中退)

このように、世界をリードするIT企業の創業者の多くが、大学を中退しています。

つまり、大学を卒業していなくても大成功した人はたくさんいるということです。
 
“大学を中退すれば成功する”などということはないと思いますが、これだけの錚々たる人たちが中退者であることを知ると、中退してみたくもなります。

しかし、だからといって“大学での勉強には意味がない”、“大学を卒業しなくても良い”と考えるとしたら間違っています。
 
大学に行く気があって行ける状況なら、行ってそこでしっかり専門的な勉強をするべきなのだと思います。

そして、その専門分野の知識や実践力で社会の役に立てば良いと思います。
 
上記の成功者に共通しているのは、IT関係の企業の創業者であることと、中退する時には既に成功のきっかけを掴んでいました。

何も当てがない状態で中退したわけではありません。
 
むしろ“成功がほぼ確実な事業を見つけたから大学で勉強している暇がない”ということです

ビル・ゲイツさんは実際にそうしたことを述べています。

彼はその後、ハーバード大学から名誉学位を授与されているので大学卒業者ということになります。

もし、この偉人たちが大学で勉強するのが嫌になったという理由で中退したのであれば、その後の成功はなかったのかもしれません。
 
話は変わりますが、現首相は、昨年に“構造的な賃上げ”の為にリスキリングが必要だと言い出しました。

個人のリスキリング(成長分野に移動する為の学び直し)に対する公的支援に、5年間で1兆円を投じるとのことです。

ドイツなどヨーロッパの国々ではかなり前から取り入れられている政策です。

正しくやって、それを正しく国民が理解して正しく実践すれば効果的と考えられます。
 
しかし、日本企業の賃金構造と今回お勉強した大学以降の教育体制を根本から変えない限りは、何も期待できないのかな…と思いました。


写真はいつの日か…恵庭市で撮影したものです。

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