文化財の活用現場webメディア『ヘリテージデザイン』

京都発。文化財を活用する側の視点から「文化財の魅力」を発信します。これから文化財を活用…

文化財の活用現場webメディア『ヘリテージデザイン』

京都発。文化財を活用する側の視点から「文化財の魅力」を発信します。これから文化財を活用したい方、歴史的な建築・庭園・古民家カフェ・街並みを訪れることが好きな方へ、活用現場目線の情報をお伝えします。 Presented by 植彌加藤造園 https://ueyakato.jp/

マガジン

  • ■京都・無鄰菴■ 文化財施設運営スタッフのリレーコラム

    京都市左京区にある国指定名勝無鄰菴(むりんあん)の運営スタッフがつなぐ、コラムです。日々の出来事、実はこんなことしてるんです、など、書きます。文化財施設の運営にご興味を持っていただけたら嬉しいです。

最近の記事

「文化財運営者の一日 朝の鍵開けから、夜の鍵閉めまで。見えないところでこんなことしてます。」

書いてる人 平野友昭(ひらの ともあき) 植彌加藤造園株式会社 指定管理部 無鄰菴管理事務所スタッフ。  私の所属する指定管理部は、京都市所有の国指定名勝・無鄰菴および国指定史跡・岩倉具視幽棲旧宅の二施設を指定管理者として管理運営する部署に当たります。私自身は、無鄰菴の仕事に携わり、日本庭園に囲まれた環境で日々業務遂行できる事は、嬉しい限りです。生き物好きの私にとって、緑の歩みを感じ、四季折々の景色を観察できる事は、目線に変化を持たせてくれる場所でもあります。 無鄰菴 岩倉

    • みんなが出来る「10分ガイド」-スタッフ、ボランティアのガイド育成はこうやってしています―

       弊社が指定管理者として管理運営を行っている無鄰菴、および岩倉具視幽棲旧宅では、入場していただいたお客様への無料のサービスとして「10分ガイド」という、直接お客様と相対してスタッフ、ボランティアがガイドを行うサービスを提供しています。今回は「10分ガイド」についてご紹介したいと思います。  この10分ガイドですが、両施設で仕事をする社員はもちろん、アルバイトスタッフやフェローと呼ばれるボランティアの皆さんも一定の訓練を受けて、ガイドを行えるようにしています。このような文化財施

      • 明治のままの無鄰菴では、酷暑と極寒は、実は「価値」。

        書いてる人 平野友昭(ひらの ともあき) 植彌加藤造園株式会社 指定管理部 無鄰菴スタッフ   私の所属する指定管理部は、京都市所有の国指定名勝・無鄰菴を指定管理者として管理運営する部署に当たります。私自身は、一スタッフとして、イベント運営、ガイド解説などの仕事やボランティアスタッフの育成などを主な仕事として担当しております。 無鄰菴公式サイトはコチラ  今でこそエアコンが世に普及していますが、初めて無鄰菴で仕事に携わったとき、ご見学いただける各部屋にはありませんでした。

        • こどもにどうやって来て、見てもらうか-文化財施設で学芸員として仕事をするということ

           今回は地域の学校との連携ついてのお話をご紹介したいと思います。  筆者は、無鄰菴、岩倉具視幽棲旧宅の二か所の施設で学芸員としての仕事をしていますが、それぞれの施設の特徴として、無鄰菴は名勝庭園を見学する施設、岩倉具視幽棲旧宅は明治維新に関わった人物の史跡として当時の建物などを楽しむ施設といった点が挙げられます。  特に岩倉具視幽棲旧宅は、近隣にも他の観光施設がないことやまた交通手段が不便であることもあり、なかなか足を運んでもらえないというのが実情です。前回の「来て、観ていた

        「文化財運営者の一日 朝の鍵開けから、夜の鍵閉めまで。見えないところでこんなことしてます。」

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        • ■京都・無鄰菴■ 文化財施設運営スタッフのリレーコラム
          9本

        記事

          文化財運営の裏側、ほんの少しお見せします。指定管理者になった私たちが、6年間で経験し、学んだコト その③

          マルチタスクチームのマネジメントって? 前回の記事では無鄰菴・岩倉具視幽棲旧宅はチームメンバーのマルチタスクで運営されていることを紹介しました。 マルチタスクはチーム全体で業務をシームレスに進めることができるメリットがありますが、一方で人によっては不慣れなことも実施しなくてはならない、という(特に不得意な)業務に対するプレッシャーが生じることがあります。 このプレッシャーが高まると仕事へのやる気が削がれ、楽しくない場になってしまいますよね。両施設の運営でも、上記のようなマ

          文化財運営の裏側、ほんの少しお見せします。指定管理者になった私たちが、6年間で経験し、学んだコト その③

          「無鄰菴の自然の魅力をどのようにして伝えているか?」

          書いてる人 平野友昭(ひらの ともあき) 植彌加藤造園株式会社 指定管理部 無鄰菴管理事務所スタッフ。  無鄰菴の仕事に携わり、日本庭園に囲まれた環境で日々業務遂行できる事は、嬉しい限りです。生き物好きの私にとって、緑の歩みを感じ、四季折々の景色を観察できる事は、目線に変化を持たせてくれる場所でもあります。  感じ取ったもの、確認できた気づきを来園者にお伝えする際には、時間を忘れて歓談をしてしまう事もしばしば…。それだけ魅力ある空間で業務ができるのは特別な事と感じておりま

          「無鄰菴の自然の魅力をどのようにして伝えているか?」

          来て、観ていただいてナンボ-文化財施設で学芸員として仕事をするということ

           今回は企画の立案やお客様の反応を含めた具体的なお話をご紹介したいと思います。  筆者の所属する植彌加藤造園株式会社は、無鄰菴、岩倉具視幽棲旧宅を指定管理者として運営しています。この二施設は、それぞれの特徴として、無鄰菴は名勝庭園を見学する施設、岩倉具視幽棲旧宅は明治維新に関わった人物の史跡として当時の建物などを楽しむ施設といった特徴があります。これらを活かしつつ各施設のイベント企画を考える訳ですが、無鄰菴は日本庭園として知る人ぞ知るといった施設で、インターネットで検索しても

          来て、観ていただいてナンボ-文化財施設で学芸員として仕事をするということ

          文化財運営の裏側、ほんの少しお見せします。指定管理者になった私たちが、6年間で経験し、学んだコト その②

          マルチタスク=苦行? 前回の私のコラムでは、無鄰菴・岩倉具視幽棲旧宅の指定管理運営では、お客様と文化財を繋ぐ「場」づくりを大切にしており、それはスタッフのマルチタスクの賜物である、というお話をさせていただきました。 もちろん、個々人のスキルや強みは活かし、適材適所で業務を進めてはいるのですが、基本的には施設の清掃から巡回、HPの更新などのシステム業務から経理まで、ほぼ全ての業務をマルチタスクで担っています。 とはいえ、マルチタスク、結構大変です。 当然私たちには得意、不

          文化財運営の裏側、ほんの少しお見せします。指定管理者になった私たちが、6年間で経験し、学んだコト その②

          無鄰菴をサポートされているボランティアさんとは?

          私は、お客様の接客、イベント・展示の対応、ガイド解説、フォスタリング・フェローズの育成などを担当しております。今回のコラムはフォスタリング・フェローズの活動についてお伝えします。 「フォスタリング・フェローズ」とは?  聞き慣れない言葉がタイトルに出てきましたが、フォスタリングとは「はぐくむ」、フェローとは「仲間たち」という意味で、提案型のボランティアです。スタッフとともに無鄰菴を深く理解し、「運営者(無鄰菴管理事務所)」と「お客さま」との中間に位置するスタッフです。お客

          無鄰菴をサポートされているボランティアさんとは?

          「日々、新ナリ」-文化財施設で学芸員として仕事をするということ

           今回冒頭に「日々、新ナリ」と何だか判らない言葉を掲げましたが、こちらは古代中国の王朝、殷の湯王(とうおう)の用いた青銅製の洗面器に刻まれてある言葉です。湯王は毎朝洗顔する時に、さあ今日も新たな一日の始まりだ、昨日とは違う、明日もさらに新たな日になるぞ、といつも洗顔時にこの洗面器を使うことで気持ちを新たにしていたと考えられています。  学芸員が日常取り扱う文化財は、何となく永遠不変、過去から現在、未来に向けてずっと引き継がれていくもの、というイメージをお持ちの方が多いのでは

          「日々、新ナリ」-文化財施設で学芸員として仕事をするということ

          文化財運営の裏側、ほんの少しお見せします。 指定管理者になった私たちが、6年間で経験し、学んだコト その①

          「場を造り、育む」という発想 無鄰菴・岩倉具視幽棲旧宅での指定管理運営のミッションは「庭に集い、庭を育む」、つまり、指定管理運営を通じて、様々なお客様の集う「場」を造り、その価値に共感いいただき、ともに育んでいくことです。 これは、私たちの本業、造園業の本質である「庭を造り、育む」ことに根差し、また同時に公共財かつ文化財としての無鄰菴・岩倉具視幽棲旧宅指定管理運営の基本理念でもあります。「場」を造る、というと工事のような、ハード面での作業をイメージされるかもしれませんが、

          文化財運営の裏側、ほんの少しお見せします。 指定管理者になった私たちが、6年間で経験し、学んだコト その①

          【インタビュー】所有者の視点から見た文化財 vol.4 -国重要文化財 浄土宗大本山・くろ谷 金戒光明寺(京都市)

          京都市左京区にある浄土宗の寺院、金戒光明寺(こんかいこうみょうじ)。京都では、「くろ谷さん」の呼び名で親しまれているお寺です。1175年、法然上人が43歳のときに比叡山を下り、お念仏の教えを広めるために、この場所に初めて草庵を結ばれました。幕末には京都守護職本陣が置かれ、会津藩主松平容保(まつだいらかたもり)が入り、治安の維持に当たりました。高台にあるこのお寺は城郭としても役目を果たす造りとなっており、かつては淀川や大阪城まで見渡せたということです。 広大な境内には、山門、阿

          【インタビュー】所有者の視点から見た文化財 vol.4 -国重要文化財 浄土宗大本山・くろ谷 金戒光明寺(京都市)

          【インタビュー】所有者の視点から見た文化財 vol.3 -国重要文化財および名勝 杉本家住宅(京都市) -後編-

          京都、四条烏丸にたたずむ大規模京町家を守る公益財団法人 奈良屋記念杉本家保存会の杉本千代子さんと、杉本歌子さんへのインタビュー後編です! 前編はコチラ 一般公開されている施設として、今後、どのような価値をアピールしていきたいですか? 千代子さんー 杉本の血筋の者が守っている間は、今のような感じで進めるのだと思いますが、考えるべきはその後ですよね。 
法人になっていますから、その時々の理事や評議員さんのお考えもあるでしょうけども、私個人としては、そのあり方に固執していません

          【インタビュー】所有者の視点から見た文化財 vol.3 -国重要文化財および名勝 杉本家住宅(京都市) -後編-

          【インタビュー】所有者の視点から見た文化財 vol.3 -国重要文化財および名勝 杉本家住宅(京都市)-前編-

          京都の街のもっともにぎやかな界隈、四条烏丸の交差点から徒歩2分の場所に、今も往時のままの構えを残す大規模京町家の杉本家住宅と、その庭園があります。 杉本家は奈良屋の屋号で江戸期1743年に呉服商として創業し、主屋は1864年の元治の大火で消失後、1870年に江戸時代の職人技の粋を尽くした再建をされ、約150年を数えます。現在は、公益財団法人 奈良屋記念杉本家保存会が所有し、管理運営をしています。 家業を営む場、そして近年までは生活の場の「家」として受け継がれてきた杉本家を守

          【インタビュー】所有者の視点から見た文化財 vol.3 -国重要文化財および名勝 杉本家住宅(京都市)-前編-

          【レポート】写真展 「所有者の視点から見た文化財 〜滋賀県湖南市 国宝 長壽寺〜」

          ヘリテージデザイン×無鄰菴 vol.1 写真展 「所有者の視点から見た文化財 〜滋賀県湖南市 国宝 長壽寺〜」 開催概要 開 催 日 2020年10月24日(土)~11月30日(月) 開催時間 9:00~18:00 ※最終日11月30日(月)は12:00まで 会 場  無鄰菴 洋館1階 写真・空間デザイン 相模友士郎 京都・岡崎の南禅寺ほど近くにある、無鄰菴の洋館1階で行われているヘリテージデザイン2回目の展示イベントをレポートします! 前回に引き続き、文化財を所有者する

          【レポート】写真展 「所有者の視点から見た文化財 〜滋賀県湖南市 国宝 長壽寺〜」

          【インタビュー】所有者の視点から見た文化財 vol.2 -滋賀県湖南市 国宝 長壽寺-

          琵琶湖の南、滋賀県湖南市にある阿星山 長壽寺(あしょうざん ちょうじゅじ) 。 奈良時代創建の長壽寺は、いまでも地域にある50軒ほどの信徒さんとともに、世代を超えて年中行事を継承したり、日々境内地の管理を行ったりと、生活の中で文化財を伝え続けているモデルケースのようなお寺。 外から見ると桃源郷的な印象をもちますが、その中身はどうなっているのでしょうか。 今回は、代々お寺を受け継がれているご住職の藤支良道さんに、お話をうかがいました。 長壽寺は長きにわたって、檀家さま方をはじ

          【インタビュー】所有者の視点から見た文化財 vol.2 -滋賀県湖南市 国宝 長壽寺-