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【小説】『エニシと友達』7/12

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(12回中7回目:約800文字)


 ここで人によっては残酷にも感じられるかもしれない、ある事実について述べたい。
 読者諸賢には、どうか冷静に、なるべく淡々と字面を追いながら、読み取ってもらいたい。

 強姦を受けた身体が反応を示す事は起こり得る。

 しかしながらそれは、過酷極まりないストレスから、まず脳機能を、そして折悪しく孕むかもしれない胎児を保護するためのものであり、能動的に受け入れての場合とは、雲泥の差だ。
 たとえ快楽を得たとしても、見える景色に感じ取る全ては、地獄でしかない。明記しておきたいのだが被害を受ける側は、何も女体に限らない。
 それを、子が出来たのだから良い思いをしたのだろうと嘲られ、快楽を得た自分は異常だ性的にだらしがないと、自らも思い込まされ黙らされる事例の、如何に多いことか。
 それならば、その差を如何に見極めれば良いのか、疑問を持った方あるいは不満に思った方に、なおも続けたい。

 その疑問は真っ当だと。

 世界中のどの国家も、医者も学者も研究者も、世間の人々も誰一人、そこに意識を向け思いを馳せては来なかったまでだ。憐れむべき事例を、不幸な例外か、あるいは自分達には理解し難い俗習によるものだと、冷酷にも突き放してきた。
 しかし非難はすまい。ただ疑念を抱き可能なら、考えを進めて行ってもらいたい。
 どうして人類はたかがこの程度の進歩に留まっているのか。
 それでいて、既に進化の頂点に在り、先鋭を極めたかのような涼しい顔を続けていられるのか。
 冷酷な態度を取りながらそれに気付かないばかりか、むしろ至当であるかのように、頭から思い込んでいられるのか。
 薄々理解してはいるはずだ。
 それぞれの胸の内に浮かんだ、美しく、あるいは正しく思える理由のうちに、答えが潜んでいる。
 しかし論説はここまでにして、エニシの話に戻ろう。

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