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現代リベラリズム① | 議論の全体像

1.個人の自律→価値の多元性

自由とは何か。ここでは「他律」と「自律」から議論を始める。

他律

自分ではない他者が定立した他律的なルールによって強制・制約されているとき、人間は自由ではない。

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自律
対して、他者の強制を排除し自分が定立したルールに自発的に従うとき、人間は自由であると言える。

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善き生の構想(conception of the good life)
自律的な個人は「どういう生き方が自分にとって善い人生か」「何が自分にとって価値があるのか」という「善」や「価値」の問題について各人それぞれの考え(構想)を持っている。

これを法哲学の議論においては「善き生の構想(conception of the good life)」と呼ぶ。


価値の多元性(複数性)
こうした「善」や「価値」は主観的で相対的なものである。そして、各価値の優劣や妥当性を判断する一元的・客観的な基準も存在しない(価値の比較不能性)。

ゆえに、自律的な個人が理性的に思考すれば、各人の構想は一つに収斂せず「価値の多元性(複数性)」という状況が生じうる。

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対して、政治的権力や宗教的権威が「一元的な価値」を他律的に強制するのであれば、価値の多元性という状況は生じえない。

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2.利益対立と価値対立

それでは、多様な価値や善の構想を持つ人々が「共生」することは可能か。

ここで法哲学者の井上達夫に従い、現代社会に存在する主要な問題を「利益対立」と「価値対立」に分けて考えてみる。

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利益対立

まず経済格差などの「利益対立」については、財の稀少性(この世界に存在する資源や財が無限ではなく「有限」であること)がその対立の原因となる。

この利益対立の解決策としては経済成長により「財自体」を増やすこと、また限られた財を効率的かつ公平に分配すること、などが考えられる。


価値対立
他方で、宗教間の争いや思想信条の対立など「価値対立」については、自律的な個人が理性的に思考することで生じる「価値の多元性」という状況、及びそれらを調停する「一元的な価値の不在」という事実がその主な原因となる。

そして、この価値対立の解決策としてリベラリズムが考えられる。

3.公と私の区別

容易な妥協を望めない価値対立について、現代リベラリズムはどのような解決を目指すのか。そのポイントは公と私を区別することにある。

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敷衍すれば、どのような社会制度が正義に適っているかという「公的な領域(正義)」の問題と、各人の主観的・相対的な価値間の優劣・妥当性という「私的な領域(善)」の問題をリベラリズムは明確に区別する。

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その上で、リベラリズムにおいては善の問題を一度棚上げし「価値の多元性」を前提とした上で、異なった価値を有する人々が共生するための「社会制度」について検討を行う。

それでは「正義に適った社会制度」とは、どのように考えられるのだろうか。

4.善に対する正義の優位

ここで現代リベラリズムの基本的原理は「善に対する正義の優位(the priority of justice over the good)」と表現される。

端的に言えば、ある「社会制度(正義)」はある「特定の善」から独立し価値中立的に創設されなければならない。つまり、ある社会制度は、権力者など特定個人の人生観に依拠して創設されてはならず、社会制度は特定の善に「優位」していなければならない。

仮に、ある特定の善の構想に基づいて社会制度が創設された場合(特定の善が優位していた場合)、その考えに同意できない個人にとってそれは「他律」となる。

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例えば特定の家族観・夫婦観に基づき「結婚した者同士の姓は同じにするべきだ」として、夫婦同姓という社会制度を採用することは「特定の善の構想」が社会制度に優位しているため、現代リベラリズムの考え方からは正当化されえない。

個人の自律を前提とするリベラリズムからは、特定個人の価値に依拠して創設された社会制度を受け入れることはできないのである。社会制度は特定の善の構想から独立し、価値中立的であることが要請される。

5.正義の原理

それでは、どのような考えに基づき社会制度は創設されるべきか。特定の善に依拠せず、価値中立的で、万人が同意できる社会制度など想定されうるのだろうか。


基本善
この問題に対して、J.ロールズは「原初状態」と「無知のヴェール」という概念を用いた、ある種の思考実験を行った上で2つの正義の原理を導き出す。詳細は次回以降へ譲るが、ここで登場するのが「基本善」という考え方である。

自律的な個人が有する「善き生の構想」は多様であるが「人がいかなる生き方を選択するとしても必要となるもの」、それが基本善である。例えば、権利、自由、機会、所得、健康などが想定される。こうした基本善は「特定の善」から独立しているため、社会制度の正当化の根拠となりうる。

議論の全体的な流れは以上。


本日の一曲
yogee new waves / hello ethiopia





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