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「へきち」は田渕正敏と松田洋和によるアート/デザイン/印刷/造本の活動です。 http…

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「へきち」は田渕正敏と松田洋和によるアート/デザイン/印刷/造本の活動です。 http://hekichi.info/

最近の記事

へきちの本棚6(写真の本)

へきちの二人、松田洋和と田渕正敏が、毎月テーマを決めてレコメンドをする企画、へきちの本棚。第6回目のテーマは「写真の本」です。 写真講義 ルイジ・ギッリ 発行日_2014年6月26日 発行元_みすず書房 カバー_《グリッツァーナ、モランディのアトリエ》1989年 イタリアのニューカラーのパイオニア、ルイジ・ギッリが行った大学の講義を記録した本。実際に講義で使用された写真を収録していることもあり、本当に講義を受けている気持ちで読める。写真・カメラの歴史や技術的なことなどの実

    • へきちの本棚⑤(2023年に読んだ本)

      へきちの二人、松田洋和と田渕正敏が、毎月テーマを決めてレコメンドをする企画、へきちの本棚。第5回目は「2023年に読んだ本」をテーマにそれぞれ6冊の書籍を選びました。 水車小屋のネネ 津村記久子 発行日_2023年3月2日 発行元_毎日新聞出版 装幀_中嶋香織 イラスト_北澤平祐 一羽の鳥と、その周りの人々の四十年の物語。 この物語に登場する人々の多くは、自分の意志で、自分の人生を見つめようとしている。その自分の人生に少しずつ他者の未来が含まれている。私たちはみな一人分の

      • へきちの本棚②(処方箋になる本)

        第2回のへきちの本棚では「処方箋になる本」をテーマに松田洋和と田渕正敏がそれぞれ6冊の書籍を選びレコメンド文を用意しました。会期中はそれをもとに参加者と対話しました。 下記にレコメンド文をアーカイブとして掲載します。 横道世之介 吉田修一 発行日_2009年9月20日 発行元_毎日新聞社 デザイン_原 路子 イラスト_南川史門 SNSなどを見ていると、ふと世の中が何者かになることを(振る舞うことを)強制しているかのように感じることがある。「何者でもない」ままでは自分に価値

        • へきちの本棚①(いい装画)

          第1回のへきちの本棚では「いい装画」をテーマに松田洋和と田渕正敏がそれぞれ6冊の書籍を選びレコメンド文を用意しました。会期中はそれをもとに参加者と対話しました。 下記にレコメンド文をアーカイブとして掲載します。 神様のボート 江國香織 発行日_1999年7月1日 発行元_新潮社 デザイン_安西水丸 イラスト_安西水丸 初めて「装画」という言葉を知ったのは、この本だった。中学2年だか3年のときに、表紙の涼しさに惹かれて手に取ったのだった。未だになぜこの絵が良いのかは、きちん

        へきちの本棚6(写真の本)

          へきちの本棚

          概要調布駅近くの調布スペースというアトリエでテーマに合わせて選書して見て話すイベント「へきちの本棚」を開催します。 初回となる今回のテーマは「いい装画」。 へきちのメンバーであるイラストレーター・田渕正敏とグラフィックデザイナー・松田洋和がそれぞれ「いい装画」という観点で選んだ5冊、計10冊の書籍とそれについてのテキスト(レコメンド文)を用意します。 開催時間を1時間の枠で区切り各10人募集します。 調布スペースではこれまでにへきちで制作してきた本も見られます。 へ

          へきちの本棚

          学び直しの英語(始めたこと)

          2021年2月、英語をやり直すにあたって何から始めようかなと考えながら書店の英語本の棚の前に立っていた。 なんとなく単語からかなと思って優しそうな内容の薄い単語本を手に取って気持ち良く目が通せたので購入した。音声がダウンロードできるので毎朝早起きして公園でストレッチをする際に聞いた。単語を覚えて聞いて声に出す30分が習慣になった。 現在38歳。 この歳になると流石に自分の向き不向きや好き嫌いは明確になっていて、何か新しい事を始めたときなど即座に「これは続けられる、続けられ

          学び直しの英語(始めたこと)

          学び直しの英語(きっかけ)

          英語については一生無縁と思っていた。 中学2年、どこかでつまづいて英語とは距離を取って生きてきた。高校も大学も就職も英語が出来なくて苦労したり困った事など無かった。 2011年に会社を辞めた後イラストレーターになった。 日本でやっていく分にはやはり英語は必要無かった。 その後、作品集を作り始めたりART BOOK FAIRに出展する様になって英訳が出来たり外国からの来場者と話せたりしたら良いなぐらいは思う様になった。でも一緒に活動するデザイナーの松田が僕より英語出来るから

          学び直しの英語(きっかけ)

          田渕正敏展“Choice”

          来月10月20日からブルーのポスターカラーで描いた“Choice”という連作の個展を行います。 描きたいと思うモチーフについて考える時、いつからか言葉では無く絵で捉えようとしている事に気が付きました。言葉でも言えるけど絵ならもっと言えるという感じ。 10年以上飽きもせずにゾワゾワしながら描けてるのは頭かどこかの回路が変なのかなと考えたりする。けれど、絵を描く事を始めるずっと前から物が気になって暫し眺めてしまうというような事はあって、その場を離れてもあの感じはなんだったの

          田渕正敏展“Choice”

          デザインに対する覚書。

          何かを習得するというのは、等しく「身体を思考によって制御する」側面を持つと思います。何も考えずに出来たことも、なぜそれが出来たのかを考える。無意識の領域を発見し、意識によって定着させ、反復することで無意識に戻す。また、出来ないことも同様に、意識することで何を考え、どう動けば出来るのかを導き、反復によって達成する。デザインは、一見するとただの見た目ですが、アートディレクション(全体の指針)とは別のところにも、そこには思考が隅々まで存在しています。 デザインを分解すると、意味、

          デザインに対する覚書。

          菊地敦己展

          G8でやっている、亀倉雄策賞受賞記念の菊地敦己展がすごく良かった。すごく良かったのだけれど、この「すごい」と感じた部分は、ここ数年モヤモヤと自分の中にある課題でもあり、感想というよりはその課題について、ちょっと書いておこうと思います。 どんな展示だったか。とにかく大量の製作物が、ある程度案件でカテゴライズされた状態でひたすら並べられている、一種のアーカイブ展であった。キャプションはどこにもなく、製作年代は15〜20年分くらいに渡っていたように見えた。個人製作物は一切なし。そ

          菊地敦己展

          初心忘れるべからず。の巻

          コマンドN最高。コマンドN大好き。新規ファイルわくわくする。 今でこそ僕はそんな気持ちだけれど、いっとき、コマンドNに恐怖を抱いたことがあった。 大学生のときは、課題もやっていたけれどダントツに個人制作が楽しかった。特にシルクスクリーンに出会った大学2年のときから、シルク工房に入り浸っていた。家で1色刷りの版を作っては、翌日研究室のプリンタから出力し、版を作って派手な色でTシャツや段ボールに刷っていた。 新しく何かを作ることは、わくわくすることでしかなかった。そういう

          初心忘れるべからず。の巻

          音楽

          岩井澤健治監督・大橋裕之原作の映画“音楽”を、下高井戸シネマで観た。これがもう、すんごかった。 ストーリーは、不良たちがバンドを始めてライブをする、という、本当にただそれだけなんだけれど、それを「それだけ」で映画にしている。これがなんとまぁ、素晴らしい。 造形も良いし、動きも良い。フェスのシーンなんか、ずっと観ていたいと思った。絵の良さについては、いろいろな観点で素晴らしかったのだけれど、観終わった後の清々しさは、一体何だったんだろうと不思議な高揚感が続いている。

          読みながら描く

          本の読める店fuzkue店主、阿久津隆さんの著書「本の読める場所を求めて」 装画・挿絵を担当しました。アリヤマデザインストアでの装画打ち合わせの日の日記。 5月21日(木) 朝日出版の編集者、綾女さんから装画依頼のメールを頂いた。好きで読んでいた本を何冊も手掛けられている方だったので嬉しかった。デザイナーは有山達也さんと知り飛び上がる。 有山達也×イラストレーターといえばまず牧野伊三夫さんが思い浮かぶ、他にもミロコマチコさんやワタナベケンイチさんなど特定の方と何度もタッグ

          読みながら描く

          転校生

          孤立した湖や池に魚はどうやって移動する? 面白い疑問。興味深い記事を読んだ。 ある水場で魚卵を食べた鳥が別の場所で糞を排泄。その中に消化されずに残った卵が見つかったのだという。 この記事を読んだ時、小学校の時にやって来た転校生のことを思い出した。僕の地元は兵庫県、転校生は小学4年生の時に大阪からやって来た。教室は「大阪から転校生がやって来る」という事で浮き足立っていた。兵庫県には地方によっていくつか訛りがあり僕の地元は播州弁という方言がある地域だった。関西弁とは似ていると

          転校生

          田渕正敏との出会い(前編)

          改めましてこんにちは。へきちのデザインしている方、松田です。いつも通り思いつきと瞬発力で始めたnoteですが、ちょっと、こういう場所なので残しておきたいことを書こうと思います。 へきちはイラストレーターの田渕正敏とデザイナーの松田洋和の二人組なのですが、最初からそういう関係性だったわけではなく、出会ってから少しずつ今のかたちになっていったように思います。バンドメンバー募集で知り合った、というよりは、仲良い人とバンド始めた、みたいなのがへきちです。 いろいろな節目があると思

          田渕正敏との出会い(前編)

          みんなの本棚

          アーツ千代田3331の大ガレージセールで「みんなの本棚」という大きな本棚を譲り受けた話です。 アーツ千代田3331で大ガレージセールが催されている。7/5(日)までなので読んでピンと来た方は是非行って見て欲しいと思い急いで書きました。僕はtwitterで告知画像を見ただけで「面白そう!」と思ったので早速出かけました。 僕は個展開催の話を頂いた事をきっかけに制作のため1月からアトリエを借りています。店舗物件だったので作業場兼ギャラリーや書架にして作品やへきちの本を並べたりし

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