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Jクラブのツイートは誰に見られるか? 情報デザインと解釈の話

先日、きょんもりさんのnoteがバズっているのを拝見しました。

このnoteでは、僕がアドバイザーを務める湘南ベルマーレを1位に選出いただいています(純粋に嬉しかった笑)。

湘南ベルマーレの試合戦況コンテンツは、いろいろと情報設計を練り込んであるので、その工夫がうまく伝わってよかったなぁと。

で、そのnote内で言及があった 「スタメン選手名の表記は日本語にすべき?」 についてツイートしたところ、

思ったより多く反響をいただいたので、考えをまとめておこうと思います。

Jクラブのツイートは誰に見られるか

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Twitterの特性は、やはりライト層にもリーチすることにあります。もちろんこれはリツイート(RT)という仕組みがあるからです。この点において、他のSNSとは明らかに異質です。

その際に難しいのは、既存のコアサポのことばかり考えた情報発信ではダメという点です。

重要なのは、適切な情報を・適切な方法・適切なタイミングで伝達できるかどうか。「熱心なサポーター」と「無関心層」では、同じクリエイティブに対し、まったく異なる捉え方をします。それは、「適切な情報」が、情報の受け手の知識レベル、関心度合いによって大きく変わるためです。
カッコイイだけでは意味がない JリーグSNSクリエイティブ設計論 #Jリーグ
最もありがちなのは、熱心なサポのことしか考えていないパターン。近視眼的に、目の前にいる熱心なサポーターのことだけを考えていると、無関心層の興味を惹くことはできません。
カッコイイだけでは意味がない JリーグSNSクリエイティブ設計論 #Jリーグ

これをポジティブに捉えると、1つのツイートが興味の入り口になる可能性があるとも言えます。偶発的に情報を摂取できるメディアならでは、ですね。

このあたりの話は、以前noteにまとめたのでぜひ見てみてください。

「解釈の設計」、できていますか?

コアサポ以外にリーチできる特性を踏まえると、Twitterでは ①ライト層へのリーチ ②コア層への転化 を狙いたい。これはマーケ施策として必須のミッションです。

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こうしてみると、サポ層によって 解釈可能な情報 や ふさわしい情報発信が異なることが分かります。

知識が乏しい層は「FW」の文字を見ても「フォワード」の意味だと解釈できないし、年に数回来場する層は「18番は松田天馬だ」と解釈できません。

だから、デザインするときは前提知識に濃淡があることを踏まえて情報設計すべきだし、解釈しやすさを担保すべきだと思います。

もし、コアサポのことばかりを考えてしまい、ハイコンテキストな情報に偏ってしまうと、コアサポ以外は置いてけぼり状態に陥ります。
(しかも、そこで取りこぼしてしまうのが、本来獲得すべき潜在サポ層だったりします…)

そこで、ベルマーレのコンテンツ設計では、以下のポイントを重視しています。

【ライト層に優しい情報デザインのポイント】
①0.1秒で分かること
②文脈に頼らないこと(ローコンテクスト)
③平易でシンプルなこと
(ライト層ほど流し見する。複雑な情報は読まれない)
④選手の顔など、感覚で処理できる情報を据えること

このように、少しでも解釈をアシストしてあげることで、取っ付きにくさを解消し、ライト層にもコア層にも受け入れられるようになります。

まだフォローしていないユーザや、ツイートをほぼ見たことがないユーザといったライト層を、情報の垣根で遮断しないような工夫が必要です。

もしかすると、こうした問題はJリーグ全体が新規サポ獲得に苦しむ側面を象徴するかも…と考えるのは、少し大げさでしょうか?

英字表記とデザインの関係(余談1)

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きれいなデザインを作ろうとすると、英字を使いたくなる気持ちは分かります。でも、なぜ英字を使うと気持ちよくなるか考えたことありますか?(デザイナーはそういう時にこそ、メタ認知力を発揮すべきだと思います)

それは、日本語の字体がそもそもきれいではないからです。英字のほうがシンプルかつスッキリした構造をしている。日本語は数字もひらがなも漢字も混ざるので、どうしても統一性がなく、ゴチャゴチャして見える。

だから、初心者のデザインほど、日本語の文字を小さくしがちです。僕もそういう時があったので気持ちはよく分かります。なんだか文字が汚く見えてしまい、なるべく小さく配置したくなる。

ただ、こうしたデザインの決定的な問題点は、見栄えばかり気にしてしまい、肝心の意味や解釈のされ方について配慮していないことです。もっと言うと、受け手についての解像度が低いことです。

デザインには、すべて意図があります。見た人にどうなってほしいのか。どう行動してほしいのか。何を達成したいのか。この点においてアートとは決定的に違います。

これらをすべて設計することがデザイナーの仕事。言い換えると「仕向けること」がデザインの本質。

認知の設計も、行動の設計も、まずは「伝わる」ことからはじまります。

その点において、「なんとなく英字表記を採用する」は、然るべき機能を発揮しない点で、まず取れない選択肢なんです。デザインの役割や目的から考えると、文字はなるべく分かりやすいほうがいい。

一方、例外もあります。例えば、日本語表記だけだと、海外の人が理解できないかもしれません。名刺にローマ字を併記するのと同様、日本語が理解できない人向けにローマ字で補完するために使う場合は大きな役割を発揮します。このように、英字を採用する必然性や意味がある場合はうまく目的に沿って活用すると良いです。

意味もなく「とりあえず英字にしたらスタイリッシュに見える!」は、十分に設計ができていない証拠なので、もしそうなったら「何かがおかしいかも?」と疑ってみるべきです。

背番号を強調したデザインの必然性とは?(余談2)

冒頭で紹介したnoteを見ると、背番号を強調したデザインが多いようです。でも、背番号の情報ってそんなに大事? と疑問に思いました。

スタメン情報に関する情報は、

- 選手名
- 登録ポジション
- ローマ字表記
- 背番号
- 選手画像

の5つが存在します。

このうち、最も重要な情報は「選手名」のはず。なのに、背番号を最も大きく配置し、その次に選手名を配したデザインが多々あります。

このデザインの問題点は、視線誘導の設計ができていないところにあります。人の目は、まず目立つものから視線に入れます。つまり、この場合、背番号が最初に目に入ることになります。

ただ、情報の重要度順に照らして考えると、本来はまず選手名と選手画像が目に飛び込んでくるべきで、背番号やポジション表記はその次です。視線誘導の順序も、その重要度に沿って順序を整理するべきです。

これは恐らく 英字表記がかっこよく見える問題 に近い事象で、数字を大きく配置することでデザイン上のバランスをとろう、という作り手のバイアスが働いた結果なのではと推測します。

よく「なぜか分からないけど、なんとなく分かりにくいデザイン」がありますが、だいたい原因は「視線の導線設計が、重要度の序列と噛み合っていない」あるいは「余計な概念を含んでいる」ことによります。

一番重要な情報ではないはずの背番号がまず目に入ってきてしまうことで、脳内で0.1秒の無駄な処理が入り、パッと見たときの分かりづらさに繋がります。

選手の顔を押し出すべき理由(余談3)

選手の顔写真は、実はとても大きな意味を持つ情報源です。

サポーターがサポーターになるときには、何か受動的なきっかけがあるものです。例えば、恋人がサポだった、友達に勧められて初めて観戦してハマった、日本代表戦でイケメンを発掘した等。

このとき重要なのは、サッカーそのものを興味の入り口にするのではなく、「どんな選手(人)がいるか」だったりします。この傾向は特に女性に顕著のようです。

Jリーグに入れ込んでいると答えた18〜25歳の男女に、 ハマった要因は何か?を聞いたところ、男性は「好きなクラブができた」、 女性は「好きな選手ができた」が最多。
https://www.recruit-lifestyle.co.jp/news/pressrelease/travel/nw8713_20140116

この構図はアイドルの「推し」を生み出す原理に近いのかなと思います。

人間の顔は、貴重なノンバーバルコミュニケーションの材料です。サッカーに詳しくなくても、クラブのことを知らなくても、その人の顔なら直感的に理解できる。その点で大きな武器なので、活用しないともったいない。

Twitterのような受動的なメディアこそ、人間の顔を最大限強調し、少しでも目に止めてもらう工夫をするといいと思います。
(サッカー選手はイケメンが多いし。笑)

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