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こだわりは大事だが、それが顧客が求めるものとは限らない

先日出張に行ったときのこと。

ちょうど昼休み時間に移動を当てて
時間のロスが出ないようにしていたので
私は昼食を食べるタイミングを逃していた。

時間は13時過ぎ。

次のアポまで30分弱ある。

そんな状況で何か食べられないかと見渡すと
近くに吉野家があるのを発見した。

安い、早い、旨い の吉野家ならば
この時間でもゆっくりと食べることが
できるはずである。

私は迷うことなく吉野家に飛び込んだ。

店内は12時台のピークを越えて
満席というわけではなかったが、
依然として席の7割ほどが埋まっており
店員さんも忙しそうにしていた。

時間もあまりないので、座るなり牛丼の並を頼む私。

そうして牛丼が出てくるまで
店内を観察してみることにした。

比較的小さい店舗ではあるが、
オペレーションは2名で行われていた。

1人がホールメイン、1人がキッチンメインで
ホールが忙しくなると2人で作って出してを
連携しながらする方式のようである。

ところが、よく様子を見ていると
満席ではない状態にもかかわらず
明らかにオペレーションが大変そうなのである。

なぜなら、会計もホールメインのスタッフが
しなくてはならないからである。

同じような牛丼チェーンに
すき屋、松屋、なか卯があるが、
すき屋は半自動の会計機が入り口についているし
松屋、なか卯はそもそも券売機方式である。

なので、これらの店ではこんなにも忙しく
なることはないのだろうが、
私が見た吉野家の店員さんは明らかに
会計の仕事に時間を取られることで
余裕が無くなっていた。

今の時代、会計は現金、クレカ、ICカードなど
色んな方式があるし、
何かのポイントをためたり使ったりするとなると
さらに複雑になって時間がかかってしまう。

実際、私が見た時にはご老人の方が
会計で非常にもたついており、
その間に新規顧客が来店したので
店員さんは非常にやきもきしている様子であった。

一体なぜ吉野家は他のチェーンのように
券売機や自動精算機を設けないのだろうか。

別にインフラにお金をかけられない会社でもないだろう。
不思議に思い調べてみると
どうやら吉野家はこの方式にこだわっているそうである。

券売機にすると顧客に注文を尋ねるプロセスがなくなり、
自動会計にすると、支払いという接客行為が減るから
あえてこの方式を採用しているというのだ。

つまり、吉野家にとって、これらの接客は
自分たちの”価値”だと考えているということである。

しかし、実際に店員さんを見ていると
それが価値だと認識しているようには見えない。

会計は一刻も早く終わらせたいと思っているだろうし、
注文で顧客に呼ばれるたびに足を運ぶのは
明らかに面倒に見えた。

実際、私の隣に座った新規顧客の若いお兄さんは
忙しそうにしている店員に注文するのを
しばらく躊躇している様子であった。

これは実に皮肉な話である。

会社が価値と思うものにこだわることにより
店員や顧客が別に価値と感じているものを
失う結果になるからである。

当然店員さんが忙しくなれば、
注文された商品がアップされるまでの
時間は遅くなるだろうし、
仮にそのスピードを求めようとすれば
人を増やさざるを得ないので、
値段は必然的に上がってしまうであろう。

安い、早い、旨いのうち前半二つが
会社のこだわりによって脅かされているのである。

もちろん、素人の私がこんなことを言わなくても
吉野家の方々は何かしら対策を打っているとは思う。

しかし、このような事は実は私たちの身近にも
起こっているのではないだろうか。

自分たちが価値だと信じているものが
実は顧客にとっては価値ではなく
価値を感じるポイントがズレてしまっているとすれば
当然ながら顧客は離れてしまう。

中には吉野家の接客に大きな価値を感じる人がいるだろうが
その人たちだけが来店するような店では
到底経営は成り立たないものである。

このnoteのような発信も然りである。

時々記事を書き終わったときに
「今日は会心の出来だ」と思うことがあるが、
そのような記事はたいてい反応が悪いものである。

これはまさに書き手が”価値”と感じている部分と
読み手が”価値”と感じる部分が違うからこそである。

発信活動はビジネスにしているわけではないので、
別にそのズレがあっても問題ないのだが
ビジネスとなるとそのズレは致命的になる。

私は子供の頃から吉野家が好きで、
牛丼チェーンと言えば”吉野家”と思っているが、
だからこそこのこだわりには疑問を感じるのだ。

AIやロボットの登場でもしかすると
今後吉野家はキッチンの業務をそれらに任せ
接客に思い切り舵を切るのかもしれないが
今後どのようになっていくのか
ファンとして期待していたいと思う。

ちなみにこんなことばかり考えながら
食事をしていたせいか、
アポの時間にギリギリになって
慌てて走って行ったのはここだけの話である。

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