葉月

はらよわにんげん。30歳になりました。

葉月

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最近の記事

震災の記憶

大雪の朝。車でいつもの道を走っていると、道の両側に連なる一面灰色がかった景色に、震災のときの記憶が重なった。全く違う場所だし、もちろん瓦礫なんてひとつもないのだが、あのとき目の当たりにし脳裏に焼き付いた、瓦礫の街並みの映像が浮かぶ。こういうことが時々起こる。震災の記憶以外にも、9.11のニュース映像から、交通事故の現場、漫画に出てくる残虐な場面が想起されることもある。これはなんという現象なのだろう?フラッシュバックとはおそらく違う。鮮明さがない。動きや音や感情は伴わない。写真

    • 冬の街

      今朝の空は、異空間が開いたのではないかと思うくらい、煌びやかで厳かだった。 赤く透きとおった光を、山や川や家が吸い込んで、融け合っていた。 時間の感覚も、鮮やかな感情がどこにあるのかもわからない身体で、私も、朝を浴びた。 一月が終わりを迎える。 新年の真新しさは瞬く間に消え、何もない日常がただただ続いている。 同じことを繰り返す、慌ただしい日々。 お客さんの顔もわからなくなってくる。 そんな時、今日のような朝日や、自分の体温を浮き彫りにする凛とした風、寒空に広がる一面の

      • 似ている

        今日は(と書いているうちに日付が変わってしまった)、大好き星野源さんの誕生日。 もうずっと、飽きもせず追いかけている。 最初に彼の著書を読んだとき、「この本は私が書いたのか?」という錯覚に陥った。 日本中から怒られそうだし、自分でも「本を1冊読んだくらいで何をわかったつもりになっているのか」と今ならツッコミを入れられるけれど、当時はそう思ってしまったのだから仕方ない。 もちろん、著者は自分ではないので、書いてある出来事は知らないことばかりだ。 でも、生き死にや、嘘と本当

        • 専門職は、辞めにくい?

          あけましておめでとうございます。 新年ってありがたい。いつも新鮮な気持ちでいようと思っても難しいので、世の中全体が仕切り直す感じは、ありがたいです。 さて、今年は、仕事について考える1年にしたいと思っています。今年は本格的に、辞めることも続けることも考えたい。 私は専門職と呼ばれる仕事をしています。「私、専門家。」なんて思ったことは一度もありませんが、養成校を出て、資格を生かして働いています。 正直に言うと、興味があるから程度で入学したのに、疑問も持たずにこの仕事に就きま

        震災の記憶

          結婚するって、なんですか?

          友人たちの結婚式ラッシュは既に2回くらい収束し、第1子出産ブームもひと段落。 お祝い役に徹してきた私にも、「そろそろ結婚しないの?」という有難いお言葉が飛んでくるようになりました。 私は、結婚することの意味が、わからない。 人はどうして結婚するのか? 疑問に思った私は、友人や先輩たちに幾度となく質問してきた。 納得できる答えは、まだない。 特に解せないのは、 「責任をとるため」。 責任をとるってどういうこと? 誰が、何に、どんな責任を負うのだろう。

          結婚するって、なんですか?

          おばあちゃんと雪の降った日

          うちのおばあちゃん、83歳。 もう何年も前から、認知症の症状がある。 新しい事柄はほとんど覚えておくことができない。 日付や曜日はわからないが、今でも畑仕事をしているためか、季節の感覚はある。 * この数年、毎年見られる現象がある。 寒い季節の、夜の食卓。 おばあちゃんが毎日毎日、同じことを私に訊くようになるのだ。 「葉月ちゃんの通勤路には、雪はまだ降ってないの?」 おばあちゃんは記憶がアップデートされない。 そのため、私は片道2時間かけて通勤しているこ

          おばあちゃんと雪の降った日

          トイレの花子さん

          小学生の頃、学校のトイレが嫌いだった。 暗いし汚いし臭いし和式だし、 なにより当時「トイレの花子さん」が流行っていたのである。 幸い今のようなハラヨワ人間ではなかったので、なるべく近づかないようにしていた。 それでもトイレのお世話になる時はやってくる。 3番目の個室は避け、息を止めて入り、最速で出る。 結局、トイレに間に合わないことはあったが、花子さんに遭遇することはなく、小学校を卒業した。 でもきっと、花子さんはいる。 小学校のトイレ、手前から3番目。 今となってはト

          トイレの花子さん

          温度

          土曜日の夕方。 現実感をようやくつなぐように、車を走らせる。 休日の騒々しさは景色に溶けて壊れ、 違和感の輪郭だけが浮かび上がる。 どうにもならない自意識が襲いかかってくる。 大海に、ひとり。 私は、無色彩の海に落ちていく。 #詩 #エッセイ