トイレの花子さん

小学生の頃、学校のトイレが嫌いだった。
暗いし汚いし臭いし和式だし、
なにより当時「トイレの花子さん」が流行っていたのである。
幸い今のようなハラヨワ人間ではなかったので、なるべく近づかないようにしていた。
それでもトイレのお世話になる時はやってくる。
3番目の個室は避け、息を止めて入り、最速で出る。
結局、トイレに間に合わないことはあったが、花子さんに遭遇することはなく、小学校を卒業した。
でもきっと、花子さんはいる。
小学校のトイレ、手前から3番目。

今となってはトイレのことを考えずにはいられない人間になり、
どこのお店のトイレがきれいか、混んでいないか、普段歩くような場所のデータは頭の中に蓄積されている。
それでも常に警戒しているせいなのか、トイレの夢をよく見る。
ドアが低くて中が丸見えだったり、水が流れなかったり、おしりが落ちてしまうほど便座の円周が大きいトイレだったり。
個室は大量にあるのだが、どこも使えそうにない。
絶望して目が覚める。
最悪な朝。
ここまでトイレに支配されると、笑えてくるから不思議だ。

今朝、ふと花子さんのことを思い出した。
花子さんのいる個室は、いつも空いている。
みんな入らないし、きれいそう。
それに、なぜか、花子さんには汚くて臭いイメージはない。
あれ?そういえば花子さんの歌は、「来たらたーすーけーてーくーれーるーよー」じゃないか。
怖くもないのかも?
30歳になって、新たな発見である。

ところで、私の実家は小学校の目の前にある。
つまり、花子さんも、徒歩1分のところにいる。

#エッセイ
#ハラヨワ人間

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