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インタビュー「はざまで働くひと」『ぴーさんの場合』

はざまで働くひと、つまり、「障害者雇用の枠で働いてはいないけれど、働くことにおいてなんらかの支障があるひと」にインタビューして、働き方、生き方に迫るインタビュー企画の第一弾!

就職してから、休職、復職を経験しているぴーさんからお話を伺いました!

プロフィール

お名前:ぴー さん
年齢:23歳
職業:会社員(観光業)
状況:パニック障害。新卒1年目で適応障害、うつ状態と診断され休職→復職。
インタビュー日:2022/02/26

『就職まで』

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大学生の頃

はざまきお(以下 は):これまでの経緯を、就活の頃からお話いただけますか?

ぴーさん(以下 ぴ):はい。就活のときはまだ発症していなくて、本当に普通の大学生って感じで就活をしていました。大学四年生の6月くらいに内定がもらえたんですけど、(同年の)11月くらいにパニック障害を発症したんですね。そのときはもう内定もらって、内定式も終わった状態だったので、「どうしたら良いのかな」って病院の先生に相談したら「別に言わなくて良いよ〜」って感じだったので、そのまま入社しました。

は:大学ではどのような内容を専攻していたんですか?

ぴ:心理学を専攻していました。元々、(心理学などに)興味があったので、自分の変化にも早めに気づけたかなと思っています。

パニック障害について

は:パニック障害になったきっかけや原因について、思い当たることはありますか?

ぴ:電車に乗ったら、心臓がバクバクしてとかはよく聞くんですけど、私の場合は胃が痛くなって立ってられない状態になって、電車から降りる、降りたら治るという感じで。
乗り降りしないと辿り着けない感じでした。
きっかけや原因には特に心当たりがなく、突然先ほどのような症状が現れるようになりました。

は:大学の時は、パニック障害があることで何か支障はありましたか?

ぴ:大学はもう四年生で授業があまりなかった(週1回の授業と週1回のゼミ)ので、そこまで支障はありませんでした。
発症してからは授業に行きにくくなったりしたんですけど、友達が心理学専攻で理解がある子たちだったので、代わりに出席してくれたりするのが何回かありました。あと、パニック障害を発症する前までは自分で運転して大学へ通学していましたが、発症後は運転ができなくなり公共交通機関も乗れなくなったため、母が送り迎えをしてくれるようになりました。

『就職〜休職』

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コロナ流行下で観光業界に就職

は:次に就職してからの話を伺いたいと思います。新卒での就職は「会社員」という枠組みでの就職でしたか?

ぴ:そうですね。

は:どんな業界でしたか?

ぴ:観光業です。(コロナ禍なので)入社してから大変さを実感しました。コロナの影響でこの一年で休業を3回してるんです。入社して半年間くらいは休業が半分、実際の仕事が半分、ってくらいで。本当の仕事はなんなんだろう、っていうのは結構感じてました。コロナ前の先輩とかの話を聞けば、「もっと大変なんだろうな」って思うんですけど、その大変さをまだ経験できていないです。

は:就職してから、仕事と休業の繰り返しだったんですね

ぴ:はい。その間に、コロナが落ち着いた時期があって、急に仕事が忙しくなったんです。そこで、体調を一気に崩しました。

は:仕事量の偏りが激しかったんですね。休業している間はどんな業務だったんですか?

ぴ:元々はお客さん相手の仕事なんですが、休業ってなると事務作業ですね。

は:では入社して仕事の内容もよくわからないうちに業務内容も業務量もコロコロ変わっていったんですね。

ぴ:そうなんです。

体調の変化

は:体調を崩しているときはどんな状態でしたか?

ぴ;新卒だったらよくある、というか、まあ新卒じゃなくてもよくあるんですけど、本当に仕事に行きたくなくなったのがまず最初です。そのときはまだ体に支障はなかったんですけど、だんだん朝起きれなくなったり、遅刻をしたりするようになりました。あとは極端に痩せ始めて。ご飯が食べれなくなったり眠れなくなったりしてきて、突然布団から起き上がれなくなってしまって。で布団の中で、ちょっともう今日行けないので休みますっていう電話を入れて。
パニック障害で心療内科に通っていたので、そのまま病院に行ったら、適応障害です。っていう診断が出ました。

は:それは就職してからどれくらい経った頃ですか?

ぴ:11月ですね。

は:適応障害の診断を受けたあとの経緯を伺えますか?

ぴ:病院で診断されて、主治医から「病院に来たってことは働けないってことなんだよ〜」と言われて、そのまま休職です。

休職までの流れ

は:診断が出たことは会社にはすんなり言えましたか?

ぴ:なんだか、直接会ったら言えないなって思って、病院行ったあとすぐに(会社の連絡手段である)LINEワークスで伝えました。「診断書出されました」、って言って、その日が出勤日だったんですけど、遅刻して出勤して、直接会ってお話をしました。

は:上司の方との話はスムーズに行きましたか?

ぴ:いや、いかなかったです〜〜。「本当に体調悪いの?」とか言われたり。あとは、「マスク取ってみて」、とか言われて。「そういうのってよだれ出たりするでしょ」、とか言われて、「はぁ?」って感じだったんですけど。結構それがもう、うわ〜〜って感じで。

は:大変でしたね。

『休職期間』

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過ごし方

は:どうにか休職はできたんですね。期間はどのくらいですか?

ぴ:ちょうど2ヶ月半ですね。

は:最近復職されたと伺いました。休職期間は何をして過ごしていましたか?

ぴ:うーん、本当に寝て。寝て、寝て、って感じでした笑 なんか散歩とか、したほうがいいよとは言われてたんですけど、散歩とかもできずに。病院に行く日に図書館に行くくらいですね。

は:基本的にゆっくり休まれてたんですね

ぴ:あ、でも、妹が実家から離れたところに住んでたので、2週間くらい妹の家に行きました。私が実家暮らしだったので、実家と職場がある地域から離れようと思って。でも、そこでも結局寝てばっかりでしたね。

でも、私と同じような経験をされている方のTwitterとかネットの記事とかみると休職中に有意義な過ごし方をしている人が多いんです。趣味をやってみたりとか、活動されてる方が多くて。私みたいにずっと寝ていた方、あまり見かけないので、いい時間の使い方をされているなって思いました。

は:自分自身も、もうちょっと有意義に過ごしたかったっていう感覚なんですか?

ぴ:そうですね

は:私個人の体験になりますが、休職中の過ごし方の記事ってプレッシャーになったりしませんでしたか?

ぴ:あ〜、確かにそれはあったかもしれないです。こうしなきゃいけないのかな、って思ったりしてました。でも内心、それが羨ましいなって。親とか病院の先生から散歩とかして、って言われても、できないので。それを毎回言われるのは結構辛かったのかもしれないですね

は:できないことを良かれと思って薦められてる状態ですね。

ぴ:私は、復職に向けた訓練とかそういうのは一切してないんですけど、復職をして、仕事に行き始めたら体力ついてきたなって感じるので、無理に散歩とか、汗をかく運動とか、勧めなくていいのになって、思いました。

は:働く中で戻っていけたから大丈夫だったんですね。

困ったこと・助かったこと

は:休職期間で困ったこと、逆にこういう助けがあったからよかった、というエピソードはありますか?

ぴ:そうですね、私は実家暮らしだったので、父親からの圧と言いますか。父親が精神的な病に理解がないほうだったので、「なんでそんなにダラダラしているんだ」とか、「仕事はいつから行くんだ」とかそういうのがきつかったですね。

よかったのは、同期の子とか先輩とかがちょくちょく連絡をくれたりしていて。ちょっと元気な時は職場に顔を出したりとか。友達ではないけど、それに似たつながりをずっと、関係を保ってくれていたので、復職の時にあまり緊張とかがなかったです。

は:職場の人間関係がよかったんですね

ぴ:はい

復職のタイミング

は:復職のタイミングはどう決めましたか?会社などの規定で決まっていたんですか?

ぴ:病院の先生から、診断を受けたとき最初とりあえず2ヶ月半、って言われたんです。で、(復職の1ヶ月前の)1月くらいにまだあまり体調が戻ってなかったので、このままだと2ヶ月半で戻れないねって話だったんですけど、その間にちょっとずつ良くなったのと、あとは休業が重なったので復職しました。お客さんと接する業務より、事務作業から始めた方がリハビリになるんじゃないかっていう提案を受けました。

は:会社との相談しながら決めたんですか?

ぴ:病院の先生とだけです。会社は病院の意向に従うと言うような感じだったので、診察中に先生と私の間で決まったことを、そのまま会社に伝えるだけでした。

は:復職のタイミングはどう思いますか?

ぴ:遅くはなかったです。でも、今実際に働けてはいるのでちょうどよかったのかなと思います。

『休職後の選択肢』

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は:休職期間に、休職後の転職や復職の選択肢はいろいろ考えましたか?

ぴ:うんうんうん。考えました。復職するか、辞めてアルバイトとかするか、休職期間中に転職活動するか、とか。

は:実際に行動に移したことはありますか?

ぴ:興味がある仕事があったので、そういう活動をしている人に、お話を聞いたりとかしたんですけど、その仕事をするまでの行動はできなかったです。

あとは、障害者手帳とかを取ったらもっと働きやすい働き方もできるのかな〜とか(障害者雇用枠での再就職)は思ったりもしたんですけど、ちょっとそれはまだ、まだ早いかなって思って。今の職場に戻ってみて、もう一回休職ってなったら、もうちょっと考えてみようと思って。とりあえず復職っていうのを一番に考えました。

は:復職以外の選択肢などについて、主治医やご家族など誰かに相談しましたか?

ぴ:いや〜、できなかったです。おんなじ境遇の人がいないので。主治医には転職の話をしてみましたが、復職を勧められました。

『復職後の状況』

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現在の状況

は:復職という選択肢をされて、職場に戻られましたが、今はどのように感じていますか?

ぴ:いや〜やっぱりきつい。きついですね。多分、今の職場に一生いることはないかなって思っていて。多分またそのうち休むことにはなってしまいそうだなっていうのは最近感じています。

は:きついっていうのはどこに原因があると思っていますか?

ぴ:そうですね〜仕事内容も自分に合ってないと思いますし、あとは、シフト制なんですよね。時間とかが決まってなくて。それも自分に合わないなって思うし。人間関係とかは全然いいんですけど…… 同僚はいいけど上司がちょっと、うーんって思う部分もあって。なんかできれば、組織に所属するんじゃなくて、自分が動かす側をしてみたいなー、自分の融通が効くようなことをしたいなーって思ってます。

は:フリーランスみたいな働き方?

ぴ:そうですね 

やりづらさの原因

は:今の職場で働くうえで、やりにくさを感じる部分はありますか

ぴ:自分の体調が自分にしかわからないことなので、他の人に伝えたら甘えとか思われるんじゃないかっていうのは結構感じてますね。そこがやりにくいところです。

なんか、今のご時世、コロナ陽性とかになればもう絶対休んで、ってなると思うんですけど、適応障害だったら、働けるっちゃ働ける状態にはなるじゃないですか。働けるかどうかを自分で決めなくちゃいけないっていうのが、結構きついかなって思います。多分適応障害になる人って、自分で決めれないから、自分で自分の首を絞めちゃうのかなって思います。そういう、ラインがあればもっと休みやすいんだろうなって思うんですけど、それも人それぞれのものになるので。それがこの病気の、私はあまり病気って感じで捉えてはいないんですけど、難しいところだなって感じてます。

は:今は体調はどれくらい回復されてますか?

ぴ:そうですね。2月に復職した時は、(会社が)休業してたんですよね。今週(2.21から)くらいからやっとまた休業が解けたので、業務内容が変わって、体調もちょっと波が激しい感じになってます、今。ちょうど。

でも、休職する前までは、甘えだっていう意識が強かったので、なかなか体調が悪くても周りに気を遣ってしまう部分が多かったんですけど、今回復職してからはきついって言えるようになって。ちょっとだけ楽な生き方を見つけれたかなって感じです。

は:休職前の甘えだって思っていたのは、自分自身に対してそう思っていたんですか?

ぴ:自分もだし周りからの目もありますね。

は:ある程度今は体調のこととかも発信しやすくなっているんですね。

ぴ:はい。

有給の取り方

は:働いている中で悩むことなどはありますか

ぴ:はい。新入社員なので、有給が少ないじゃないですか。それが結構きついなって思いました。もっと有給が多ければ休めるのにって思ってて。それも結構、プレッシャーになっています。遅刻もたくさんしてるし、有給も体調不良で使ったりしているので、次行けなかったらどうなるんだろっていうプレッシャーが大きいです。

は:体調不良だけど、有給も残り少ないから無理しちゃう部分があるんですね。

ぴ:そうですね。

『理想の働き方』

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働きやすさ、とは

は:今の職場で、こういう制度や雰囲気があればやりやすいのに、って思うことはありますか?

ぴ:そうですねー うーん…… なんか、なんですかね。出勤時間がフレックス制がいいなーとか思うんですけど、今の職場ではそれは絶対できないので。

うーん。こうなってればいいなっていうのはあまり浮かばないかもしれないです。会社を変えないと無理かなってなりますね

は:じゃあ、会社を変えるってなった時に、自分が働きやすい条件や理想の職場の要素はありますか?

ぴ:そうですね。やっぱり自分の体調に合わせて出勤ができるのがいいです。

は:仕事量や仕事内容には希望があったりしますか?

ぴ:うーん、それは特にないかもしれないです。自分がもともと体調を崩す前までは、バリバリ働きたいと思っていたので、できれば仕事はたくさんしたいです。

は:そうなんですね。仕事はしたいけど、体調に波があるからその日にできる範囲で働きたいってことなんですね。

ぴ:はい。

意識の変化

は:体調を崩す前は、とおっしゃいましたが、体調を崩したことで働き方や働くことへの意識や考え方の変化はありますか

ぴ:ありますね、結構。前までは、仕事を一番に頑張りたいと思ってたんですけど、体が一番だなって思うようになりました。仕事よりも体だって。給料とかよりも自分が一番元気に過ごせるところで働きたいなーっていうのはあります。

は:上司や父親とか周りの人から心無い言葉をかけられたとおっしゃっていたんですけど、周りにこうなってほしい、こんな知識をつけてもらえたらって思ったりしますか?

ぴ:実際には言えないけど、そういう人にも自分と同じ経験をしてもらいたいなって思います笑。

は:それは自分自身がイメージと違ったっていう感覚がありますか

ぴ:そうですね。大学でそういうのを勉強はしてたけど、いざなってみると文章を読むのとでは全然違うので。いくら知識があったとしても、体感しないとわからないなっていうのはあります。

は:なかなか難しそうですけど、すごくわかります。文章にするとうまく伝わらない部分があるのかなとは思います。

ぴ:そうですね。

『今後のビジョン』

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は:今の会社にずっといるのが難しいと感じているとおっしゃっていましたが、今後のビジョンはありますか

ぴ:そうですね、それをちょうど今考えていて。働きながら、どうしていくのがいいんだろうって思っていて。私の会社が、メンタルの悩みを相談できる人がいなくて。誰にこういう悩みを相談すればいいんだろうっていうのがあるので、自分がそういう立場になれたらいいなっていうのもあります。先ほど言ったように自分がフリーランスみたいな形でやりたいようにやりたいことをやるみたいなのも考えたりしてます。まだ、まだ考え中かなって感じです

『なぜ今の会社を辞めないのか』

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ぴ:今の職場は仕事環境(シフト制や休みの取り辛さなど)や仕事内容(接客業、繁忙期と閑散期の時期の違いで忙しさが異なるなど)が私自身にあまりあっておらず、職場を変えなければどうにもならない問題ばかりです。しかし辞めた後の費用のことを考えると、今の私にはまだ貯金がありません笑 

ひとまず生活をするために今の会社に身を置かせてもらっている感じです。 あとは自分がやりたいことを探す期間にもしています。理想の働き方や自分がやりたい仕事はこれだ!というのがわかるまでは今の会社で頑張りたいなと思っています。が、もう一度休職したら、速攻でやめようと思っています。

逆質問

はざまの今の仕事について

(現在の仕事内容などについてご質問いただきました)

は:(前略)コロナの影響で、しばらく時短勤務なので、休職後の再始動にはちょうどよかったんです。

ぴ:コロナが意外といい方向に転がったりもしてるなっていうのは感じますね。

は:そうですね。

ぴ:意図が伝わっていたら嬉しいです

は:伝わりました。ありがとうございました。



編集後記

今回お話を伺ったぴーさんとは、入社年や体調を崩した時期が重なっていることもあり、とても親近感をもってインタビューをさせていただきました。

シフト勤務や業務内容の変化によって体調を崩したことも私と共通しており、やはり人に合わせる、相手に合わせる業務で、なおかつ休んだ後のリカバリーが期待できない働き方は、働く人へのプレッシャーになるのかもしれないな、と感じました。接客業や対人支援、医療などの「サービス」を売っている業態だと、顧客や利用者が第一優先になるため、従業員の働き方が重視されない傾向があるように思います。

働く難しさのテーマでは、「休むか出勤の線引きが難しい」と語ってくださいました。適応障害をはじめとする精神的な疾患や不調は、怠さや身体の重さ、憂鬱などの症状が中心です。熱や咳といった外から見てわかりやすい症状とは違って、自分の中でしか判断がつかないため、周りから理解がされない、というような問題提起は今までもされてきましたが、自分自身も判断が難しく、無理をしすぎてしまい、悪化に繋がりかねないという視点には、目が開かれるような感覚になりました。

学ぶことの多いインタビューでした。

改めまして、インタビューを受けていただきありがとうございました!


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