榛名山のはるなさん 9話

第9話 才能のかけら

「はるな、はるな!!」

「ふにゃ、、、プリンはプッチンしないで食べるのが美学です!」

「何の話よおバカ!次体育だよ!」

「え、、、やば!」

本日の体育の内容は卓球であった。
はるなはサツキと一緒に卓球台でしょぼいラリーを繰り広げていた。というよりさせられていた。サツキのせいで。

「くらえ!!我が魂、スピリットオブ、、、ジャベリン!!!」

名前とは裏腹に、信じられないくらいヘロヘロの玉がはるなを襲う。仕方なしにヘロヘロ玉を打ち返すはるな。

「ねぇ、そのいちいち名前叫びながらヘロヘロのスマッシュ打つのやめてよ、、、恥ずかしくて死にそう、、てかそろそろ利き手で打っても良い?」

「ちょっと!人が厨二病全開で気持ち良くやってるのに水差さないでよ!てか、利き手はだめ!」

ピピー!
体育教師が生徒全員を注目させる為、笛を吹いた。
「よーし、今日はクラス全員でトーナメント戦をやろうと思う!とりあえずみんなこのクジを引いてくれ。」

「うっわ、マジ?私いきなり男子とじゃーん!負けたわ、、、はるなはー?」
サツキがクジを確認したとたんグチを大声で言う。

「私は、、、うわっ、シズカとだ、、」

「げ、、あたしよりついてないじゃん。」

高橋シズカ、卓球部のエースであり、高1から始めたのにもかかわらず、始めて半年でレギュラーに入り、高2では部内最強になった。その年の県大会ではベスト3に入ってしまったバケモノ部員である。

「はるなってさぁ、、、本当ついてないよねぇ」

「はぁ、本当やめてくれないかな、、運動は嫌いなんだよね。」

トーナメント戦が始まり、サツキは一回戦目はるなは三回戦目であった。
そして、一回戦目が始まったとたん事件が起こる。

「そ、そんな、、、嘘でしょサツキ、、、早すぎる、、。」

「ふふふ、、、って無理だよおおおぉぉー!!!男子なんかに勝てるわけないし!!てゆうかあんな全力でやらなくてもいいじゃない!!バカ!!」

「い、いやー、、、相手も大分手を抜いてたと思うんだけど、、、」
実際、相手の男子はとてつもなく手を抜いていた。利き手とは逆にラケットを持ってラリーしようとしていた。しかし、サツキがラケットを振っても10回に1回程度しか打ち返す事が出来ていなかった。それなのにも関わらず、サツキは厨二病全開でなんちゃらダークネスだ、なんちゃらレイなどと言葉と動きだけはド派手だった。

「お願い、はるな私の敵を討ってよおおおー!!」

「いや、無理だって、、、相手は卓球部エースだよ、、。まぁ、やるだけやってみるよ、、」

その後もサツキの敗戦処理、もといなぐさめているとあっと言う間にはるなの出番になった。
はるなは器用にラケットをペン回しの様にくるっと回した。

「よし、、、お互い準備はいいか?それじゃ始め!」
教師の掛け声で始まった。
最初のサーブはシズカから。
「ねぇ、はるな。あんたって右利きじゃん。卓球部のあたし相手に左ってナメてるの?」

「、、、わかったわよ、ちゃんとやる。」
はるなは右手にラケットを持ち変える。

「その見下してる態度が、、気に入らないのよ!!」
シズカはスピンを加えた強烈なサーブを放つ。
手加減なしの本気モード。とてもじゃないが卓球部でない人が打ち返すのは至難の技。
それにもかかわらずはるなは冷静に卓球台からたっぷりと距離をとりボールの勢いが弱まった所で鋭いカットでボールに回転をかけ余裕で打ち返す。

その後は一瞬にして信じられないくらいのスピードのラリーに突入した。
本気モード全開のシズカに対して、はるなは冷ややかな表情で打ち返す。

「サァッ!!」

シズカの本気のスマッシュが、はるながいる方向とは逆に打ち込まれる。

「おっとっと。」

はるなはややヨロけながらもスマッシュをカットで勢いを殺し、打ち返す。

「え、、何でこれ卓球部同士のガチ試合みたいになってるの、、てゆーかさ、、、はるなってこんな運動神経良かったっけ??」

ギャラリーは理解が追いつかない。それもそのはず、はるなはクラスでそれほど目立つ存在ではなかった。というか毎日来てはいるが、大体居眠りばかりをしており、まともに喋る相手と言えばサツキぐらい。サツキは誰とでも分け隔てなく話す明るい娘ではあったが、はるなは正反対でクラスでも可愛い部類に入ってはいるが愛想も悪く、あまり自分から積極的に話さない為、全く存在感が無かった。

「ちょっとサツキ、、、これどーなってるのよ?」

「いや、私もビビってるってゆーか、、あれ、、、はるなさーん?聞いてないんですけどー?」
ギャラリー同様、サツキも理解出来ていなかった。

ズダダダダ!!!と音が聞こえるくらいの高速ラリー、その間にシズカが挟み込む超高校生級のスマッシュが続く。はるなは距離をとってカットで打ち返してはいたが、受けるので精一杯なのか防戦一方に見えた。

「いけー!!はるなー!!打ち返せー!」
「シズカー!!そんな目立たないヤツに負けるなー!!!」
そんな状態を見ていたギャラリーは否が応でも盛り上がる。

そんな中でも焦るシズカ。それもそのはず、運動部でもなんでもないクラスメイトにここまで食いつかれてはエースの名が折れる。
「くそっ!どうして!?どうしてスマッシュが通らないの!?てゆーかなにその華麗なカットは!?あんた何者よ!?」

「やってないけど、、、、まあ、ギャランで攻めてる時の方がもっと高速だし、、、でも、流石にこのボール捌き切るのは峠走ってる時と同じくらい疲れてきたから、そろそろ仕掛けるか、、」
卓球台から距離をとり卓球部も惚れ惚れするようなはるなのカットマンスタイル。はるなは一気に卓球台との距離を詰め、超速攻型に変化する。

ジュパアァァン!!!
いきなりの変化に同様した瞬間を狙ったかのように、はるなのスマッシュが打ち込まれシズカの後方にボールが飛ぶ。

「嘘、、、でしょ、、、!?」

「、、、、さあ、私も体あったまってきたし、、お互い本気でやろっか。」

はるなのレーザーのようなスマッシュ一閃。
ただの体育の授業の時間が一気にバトルと同じくらいの熱気に体育館を包んでいた。

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