スポーツファンは、フィールドに近づきたいのだろうか。/ 【アフターコロナのスポーツリノベーションVol.2】イベントレポ
以前noteに書いたオンラインイベント『アフターコロナのスポーツリノベーション』のVol.2が開催されました。
▼Vol.1のイベントレポ
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スポーツイベントの再開に向けて
トークテーマとして事前に設定されたのは上の通り。「ここから始めると話が繋がっていきそうだよね」といって最初の話題になったのは、スポーツイベントの再開に向けての話だった。
「いろいろなことが、徐々に再開までのカウントダウンをする雰囲気になってきそうだよね」
しかし、例えばJリーグを例にとっても、現実的な開催方法として無観客での開催する可能性は大いにある。フットサル選手の星さん、バスケットボール選手の石井さん含めトップアスリートも参加する中で「無観客の試合って、どうすれば盛り上がるのだろうか」という話題となった。
ここで特に印象的だったのは、スポーツの「音」について。それには観客の「声」も当然含まれる。興行でもあるスポーツイベントにおける観客の観戦体験として、スタジアムやアリーナで響く「音」や「声」は、非常に大きな影響があるはずだ。
実際、自分がJリーグを観に行ったときのことを思い浮かべても、チャンスになって、そこからゴールが生まれる時にスタジアム全体で起こる、一瞬固唾を飲んだところから一気に興奮と落胆が押し寄せるあの感じは、スポーツ観戦の醍醐味だと思う。文字にすると「「……!…っっっぅワァっ!!!」」という感じ。ダメだ、やはりこれは”生”でないと伝わらない。
無観客試合ではこれが共有できない。ファンがスタジアムに行って感じることはできないし、テレビで見たって疑似体験ができない。そもそも「それ」はそこにない。
「ファンやサポーター、お客さんの声が選手に届くようにどうすればいいのか」という話は、プレーする選手にとってもそれらが少なくない影響をもつ前提でのことだ。いままで、どうやって家にいながらスタジアムにいるかのように、あるいはそれを超える観戦体験を得られるかという文脈でのテクノロジーの進化が語られるのを見聞きしてきたが、今回話したのは逆の話と理解していて興味深かった。
話を聞きながら自分で考えていたことだが、目の前にない試合をどう見るかという側面ではなくて、そこにいない「観客をどう感じるか」という思考は今までなかった。ふと考えると、前者については、これまでにも試行錯誤されてきた。パブリックビューイングは、「目の前にない」試合を映像で大勢で観戦して、誰かと一緒に楽しんだり応援するという体験をイベント会場、バーなどで楽しめるものだし、観戦対象が「バーチャルなもの」が興行として成功を収めている例は日本でもみられる。
▼見たことない方はぜひ。初音ミクのファンではないが、これはすごい。
一方で、後者は観る人が「そこにいない」「一緒にいない」という点で新しい課題といえる。会場に自宅からの声援をオンラインで届けるだとかは、技術的には不可能じゃないと思うし、スタンド全部をディスプレイ(強引だな…)にして応援しているお客さんの映像を流すなんてこともイメージはしたけど、それにどれだけの価値があるのか。
▲この取り組みも「声」まではカバーできていない。
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サッカーでまだ起きていないイノベーション
「サッカーでは、競技備品だけイノベーションが起きてないんですよね」
JリーグクラブFC今治に努める中島さんが新たな観戦体験についてアイデアを出してくれた。数年前から話題のVAR、ゴールラインテクノロジー、試合の撮影・放送の方法など競技まわりのテクノロジーは進化をつづけている。一方で、「ゴールポストはただの金属だし、コーナーフラッグはプラスチックの棒にナイロン製の布がついているだけのものなんですよね」という話は、「たしかにそうだ」と気づきをくれた。
例えば、ゴールポストにスピーカーが埋め込まれていて、ボールが直撃した音や選手の声、さらには振動までもが遠隔で体感できるようになれば、観戦体験は大きく変わるかもしれない。そういえば、任天堂からWiiが発売されWiiリモコンがゲームの中で起きている出来事に合わせて振動するのに、子どもながら興奮した記憶がある。
現実的かどうかはおいておくが、無観客なら無観客でより様々な角度から撮影するようにカメラを配置したり、さらにもっと近くで収音するマイクを用意するなどして、実際のフィールドに近い視覚的・聴覚的情報がファンに届けられれば、多種多様な観戦にニーズの中にある「臨場感」の追求には近づいていくのかもしれない。振動や温度、匂いまで届いて映画の4DX上映のようにスポーツを楽しめる未来はそう遠くないのだろうか。
ただ無観客なら無観客で、とはいいつつやはり寂しさはある。
▼昨日、無観客で再開したブンデスリーガ
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アスリートとの距離感
話は変わって、マラソンランナーの神野大地さんが中心となって行われたオンライン面談の話へ。取り組みについては、記事を見てもらえれば大枠はつかめるはず。COVID-19の影響で3年なり4年なりの集大成を失ってしまった学生アスリートと対話をするこの取り組みには、多くの賛同者・協力者が集まった。
競技ができない中で、アスリートはいまファンやサポーター、そしてトップアスリートを目指す後進たちにとって近い存在になっている。インスタライブやYouTubeでファンとの交流を図ったり、noteを始めるアスリートもよく見る。神野さんのように未来のトップアスリートと話をする機会をもって支援をするという動きもある。
多くのアスリートやスポーツ関係者が、いわゆる”本業”の舞台がなかったり、”本領”を発揮できなかったりするいま、「自分たちができることは何だろう」と考えての結果である。
ところである疑問が話題にのぼる。
「この距離感は、競技活動が再開した後にはどうなるのかだろうか」
競技者としてだけでなく、人としての魅力が求められる
(競技以外に)人と違うことをやらなければ価値が大きくならない
選手としての発信力を活かす
ファンやサポーターとの交流は大切さ
なんとなくこういうことがこれからのアスリートに求められている雰囲気も感じる。もちろん否定すべきことは一つものないが、”本領”でないという意見もある。ようはあくまで付加価値だという話だ。
イベントの発端でもある長尾彰さんは「ほんとは、他の人と違うところっていうのを試合の中で、プレーでみせてほしいと思っちゃうんだよなあ」と話していた。
誰にもできないことをやってのけたり、誰にもできないところまで何かを追求するアスリートの姿は、観る人を興奮させ勇気や動機を与えるものだ。
それを最大化するための「適切な距離感」とはどんなものだろう。
たしかに「試合後に選手とご飯を食べに行く」ことを心から望む「いちスポーツファン」はあまりいないかもしれない。(大いに諸説ある)
人それぞれ価値観はあるものの、一度近づいた距離感をどうしていくかはこれから各々の動向が気になるところだ。
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スポーツファンは、フィールドに近づいていきたいのか?
イベント自体、”スポーツ側”の人が多い集まりなので自然な流れではあるが、「アスリートやクラブがファンとの距離感をどうするのか」という文脈で話が進んだように思う。
一方で、スポーツを観戦して楽しむスポーツファン(サポーター含む)は、その距離感をどう思っているかが非常に気になる。
「観戦体験」という言葉をよく聞くようになったが、臨場感を求められているのだろうか。テレビ越しでもスタジアムにいるような、スポーツの迫力を感じられるような進化する技術。その時、目指すのはまさにピッチレベルでの迫力なのか、スタンドの1階席やサポーターゾーンなのか、それとももっと上のスタジアム全体が見渡せるような高い位置なのか。
僕は高校サッカーのテレビ放送を好きになれない。サッカーの試合を観たいのに、試合中にプレーに直接関係のない選手のアップが入ったり、スタンドの応援団や選手の家族の姿が映される。
そもそも高校サッカーに限らず、テレビで試合を観ていて「もっとカメラ遠ざけて!」と思うことがよくあった。ディフェンスラインでボールを回しているときの、最前線のフォワードの駆け引きなんかも気になるのだ。
ただ当たり前だが、それは人それぞれだ。
選手の顔がアップで観れて嬉しい人もいるし、コーナー付近での1対1のアップに興奮したり、スタンドのお母さんがお守りを握りしめる姿に感動する人も当然いる。
どの距離感でスポーツを観たいなんて人それぞれなのだから、選手自身との距離感がどうであってほしいのかも、きっと人それぞれだ。
選手の発信によって、人柄見えてきて親近感が増すことでファンを増やすこともあるし、内省的なブログで選手の思考に触れることができるケースも増えている。それらは全部、応援者をそのアスリートが闘っているフィールドに近づけているのだと思う。
いまテレビ観戦での臨場感の話も、選手の発信やファンとの交流も、応援者を「フィールドに近づけていく」ことを生んでいるような気がする。
そして近づいていった先にあるのは、なんだろう。ゲームに直接影響をあたえるような「関与」なのだろうか。よく考えると、チャントやブーイングも選手に影響を与えるだろうから、すでに関与をしているといえばそうなのだけど。
スポーツを観て楽しんでいる人には、その競技や競技者との距離感、フィールドとの距離感をどう捉えて、どうであれば心地よいと感じる人が多いのだろうか。
もちろん多種多様なことには変わりないが、スポーツはしてないが観戦は好きだというような人に聞いてみたいことだと思う。
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途中から驚くほどまとまりがなくなりましたが、簡単なメモということにしておいてください。素敵なイベントに参加できてうれしいです。
ただオンラインでみんなで話をするのってやっぱり難しいですね。話を回してくださっていた西原さんに感謝です。お疲れ様でした。
途中、「西原さんに話を振ってもらったら喋る」という感じで、みんなが待つ雰囲気を感じました。自粛ムードが落ち着いて、リアルに集まってご飯でも食べながらみんなでざっくばらんにお話しできる日が、近いうちに来ればいいなあと思っています。
次回があるかはわかりませんが、楽しみにしています!
▲自己紹介以外、喋ることのなかった人。積極的になろうというのと、話を聞きたいと思ってもらえる価値のある人を目指して頑張ろうと思いました。