母の見送りへの道 【気付きと感じた事⑤】(訪問入浴)第28回/全35回
母の旅立ちと私の見送りの記事は終了しました。ここからは母の旅立ちと私の見送りで道のりの中で、気付いた事や感じた事を紹介していきます。今回は訪問入浴について話してみたいと思います。
【はじめての訪問入浴の世界】
母と私の場合は実際に訪問入浴にお世話になったのは1回きり。予定では週に1回は訪問入浴にお世話になるはずだったが、2回目の訪問入浴を前に母が入院する事になった為である。
なので訪問入浴の経験は僅か1回きりだが、その時に感じた事と気付いた事を書いてみたい。
正直なところケアマネさんに訪問入浴の事を説明されるまでは、こういうシステムがあった事自体を知らなかった。さらに母の部屋に浴槽を入れて…という説明を聞いた時「本当にそんな事が出来るのか…?」と結構懐疑的だったのを覚えている。家の風呂に入れてくれるというのであれば十分に想像は出来たのだけど…。
母の部屋が病室へ改造された翌日、ケアマネさんの紹介で早々に訪問入浴会社のHのMさんが来訪。そこで訪問入浴についての見積もりと詳しい説明を受け、翌日に入浴風呂をお願いすることになった。
【訪問入浴をお願いしての感想】
入浴の当日。母の部屋に浴槽がセットされるまでは部屋で見ていたが、母が入浴する際には部屋の外に出た。なので実際にどういう感じで入浴させてもらっているのが分からないのである。何をしているかは部屋の様子を何となく伺うか、部屋の中の人の声で判断するしかないのだが…。
訪問入浴の方々は男性1名(統率者&体を抱える係)、女性3名(看護師、入浴介助者2名)。さらに研修係として女性1名(事前に説明は受けてた)の合計5名のチーム編成。浴槽の設置からホース繋ぎ、また終了時には浴槽、ホースの解体と手際の良さ目立った。
また入浴中は男性の方が常に母に声掛けをして、気持ちを前に向かせるような感じ(部屋の外から聞いていた…盗み聞きでは無い(笑))。天気の話やら、出身地の話、いろいろと話しかけてたのが印象的。介護関係のプロって感じがしましたね。
またシャンプーまでされて最後はドライヤーとセットまでしてもらっていた。更にはベッドのシーツまで無料で新しいものに変えて頂いた。本当に感謝しかない。
【スタッフの方々の手際の良さが目立つ】
事前の説明では所要時間は45分程度との事。ホントにそんな短時間で出来るのか?と懐疑的だった。しかし実際の入浴風呂は本当に40分程度で終了。狭い部屋でも上手く浴槽を配置していたし、何よりも準備から撤収までの手際の良さが目立っていて、まさしくプロの仕事と思えた。
母はお風呂に入ってさっぱりとして気持ちよくなったのか、この後はそのまま眠る感じになった。急に具合が悪くなってドタバタしていた事もあって、お風呂そのものは4日ぶりだったからね。そりゃお風呂でサッパリとすれば気持ちよくもなるでしょう。
またこの入浴の前に訪問看護師さんによる点滴を受けていたものの、途中で点滴が止まった事もあって、最後まで完了せずという状態だった。でも訪問入浴のチームに看護師さんが居ると事前に聞いていたので、点滴の外しをお願いすると快く引く受けてくれた。またフェントステープの交換時刻も丁度入浴の時間と被ってしまったが、このチームの看護師さんに貼り替えてもらえたのも助かった。
私としては点滴の外し、フェントステープの交換、ベッドのシーツの交換と思ってもいなかった所でお世話になったのでとても感謝している。もちろん母も気持ちよくなってその後は意外と長い時間眠る事が出来たし、至れり尽くせりだったと思う。
【残念ながら2回目の訪問入浴は実現せず…】
訪問入浴終了の1時間後、ケアマネのYさんから連絡あり。訪問入浴の件はどうでしたか?と聞かれ、さらに次回の訪問入浴はどうしましょう?というお伺いの連絡があった。この時点で母の入院日は決まってない状況下だったので、即座に1週間後も同じ訪問入浴の業者さんに頼む事にした。しかし残念ながら次回の訪問入浴を前に母は入院する事になったので、母と私の訪問入浴の経験はこれが最後となった。
ただ総じて訪問入浴のスタッフの方々には好印象を持っている。手際の良さといい、サービス内容といい本当に申し分ない内容だったと思う。もし2回目の訪問入浴があれば安心してお任せしただろう。
【自宅で気持ちよくなれた事に大きな意味がある】
後に病院でもお風呂があって、さっぱりとして気持ちよくなって眠る…という事は何回かあったけど、母にとって自宅で気持ちよくなれたという所に大きな意味があったと思う。母の場合はこの家で最後にお風呂に入った(自力で入った)日の深夜、あの出来事が起きてしまった。お風呂との因果関係はハッキリとしていないものの、当然母はあの日以降にお風呂に入ることは出来なかった。
このままではこの家で最後に入ったお風呂が原因であんなことになって…という思い出で終わる所だった。だが今回こうやって訪問入浴のスタッフの方々によって無事にお風呂に入れた。何度も言うが母の大好きな家で、しかも自分の部屋の中で入れたのである。
今こうやって全てが終わった後で振り返っても、母の大好きなこの家でお風呂に入れた事は「最後に出来て良かったね」と思える出来事の一つ。母としての本音は家のお風呂に何の苦労もなく自力で入る事だったとは思うが、それでもあの時の母の状況で最大限に出来る限りの事がこの訪問入浴だった。
実際に母はこの訪問入浴が終わった後私に「さっぱりした~」と少しご満悦な様子を見せ、そのまま夕方まで眠る事になった。そんなに長くない時間だったと思うが、それでも身体の痛みや嘔気の苦しみを忘れ、結構ぐっすりと眠っている母の姿を今でも覚えている。
残念な事にこの日の夜には早速嘔気が出始め、翌未明には身体の痛みを訴え始める。そして翌日にはH総合病院で塩対応を受けまくった後、聞きたくもない事実を通告される事になる。その嫌な出来事の前に平穏なひと時を得られた事は幸せだったのかもしれない。
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この記事を書いている私は医療に関しては素人なので記事の中で間違った認識、表現、名称を記述している可能性は高いです。さらに一部で感情論に走っている面もあると思いますが、なにとぞご理解と温かい目で見て頂けるとありがたいです。