お題

#恋愛小説が好き

恋愛小説への愛や、好きな作品・作家を語ってください!

急上昇の記事一覧

居眠り猫と主治医 ㉗病み医者 連載恋愛小説

かみ合わない会話に疲れたのか、祐の言葉がそこで途切れた。 どことなく彼らしくない気がして様子をうかがうと、顔色が悪いし覇気がない。 「あの…体調大丈夫なんですか。クリニック大変だって里佳子さんが」 「大丈夫なわけないし」 いきなり失踪されて寝れるか、と吐き捨てる。 あれほど自己管理が行き届いている人なのだから、ここまで憔悴するのはどう考えてもおかしい。 「…おかんボックスは?」 「作ってない。ひとりじゃ食べる気しない。なにも手につかない」 まるでメンタルをやられた守屋文乃

スキ
57

【毎週ショートショートnote裏お題】真夜中万華鏡

 真夜中、妖怪小豆あらいは一人の少女と出会った。  少女はうずくまって泣きそうな顔をしていた。  みると足を挫いている。  小豆あらいは、少女を背負い、家に送ってやった。  少女は何度も御礼をいい、庄屋の家の門をくぐった。  それ以来、小豆あらいは胸が苦しい。  妖怪と人間、しかも庄屋の娘、叶わぬ恋であることは重々分かっていた。  それでも止められない。  深夜、人目を忍び、逢瀬を重ねた。  それは真夜中万華鏡のように一刻一刻が夢のように煌めいていた。 「会うのを最後

スキ
59

春の終わり、夏の始まり 11

同窓会、当日。 12時に羽田空港を発った漆黒のスターフライヤーの機体は、定刻通り関西国際空港に到着した。 関西空港のターミナルに足を踏み入れると、即座に懐かしい匂いと音が唯史を包み込んだ。 有名な大阪土産の豚まんの匂い、そして関西ならではの勢いのある大阪弁。 故郷に帰ってきたという実感とともに、唯史の心の中には安堵感が広がっていった。 関西空港駅から、唯史は電車に乗った。 窓の外は、南大阪の田園風景が広がっている。 田植え前の田んぼからは、春先の土の匂いが漂ってくるように

スキ
11

春の終わり、夏の始まり 9

美咲との離婚後、唯史の日々は変わり果てた。 情緒がきわめて不安定になり、些細なことで落ち込むことが増えた。 夜な夜な睡眠は乱れ、質の良い眠りからは遠ざかっている。 深夜に目が覚めると、そのまま何時間も天井を見つめることが増えていた。 寝返りをうつたびに、唯史の心と体は安息を求めていたが、心の奥底に渦巻く感情がそれを許さない。 この睡眠不足は、日中の仕事にも影響を及ぼし始めている。 勤務中にあくびが絶えず、会議中にはうとうとしてしまうこともあった。 「離婚してからあいつは

スキ
11

恋なんか (詩)

恋はジェットコースターよね 上がったり下がったり、せわしない 今日、幸せに包まれたとしても 明日には気分は急降下 あなたの言葉や仕草に翻弄されてる 心の平安からは、遠ざかる一方 だったら ジェットコースターから降りればいいだけの話し でもね、降りたくても降りられないの あなたがいる限り

スキ
82

伏見の鬼 9

 大門屋は老舗である。  かの店舗前に五条大通りと、この遊郭を分かつ白木の門が立つ。  外籠はこの門で止められ、如何な大名籠であろうと徒歩でそれを潜らなければならぬ。謂わずと知れた娼妓の門抜けを防ぐためである。  総司は肩に隊服の羽織を引っ掛けて、懐手のままで、その構えを眺めている。件の店よりも余程商いに厳しいのか、張り見世には容色の劣る娼妓が既に居並び、艶のない嬌声をあげている。  あら、いい男。  お上がんなさい、お上がんなさい。  あら、眼がうちきに。  細い格子窓を介

スキ
15

長崎異聞 32

 門司とは不遇な港である。  今やその港は異国となる。  凡そ四半世紀は昔のことである。  つまりは英吉利には香港ありて、仏蘭西には門司ありて、と西欧では見られている。  視界が、絶え間なくうねる。  目元に紺碧の海面が迫るかのようである。  船体が持ち上げられ外輪が空転したのか。  耳に切込む轟音が、暫し途切れたようだ。 「到着まではあと一両日はかかる。まあ昔話を教授してやろう」と黴臭い船室で、村田蔵六が語り始めた。  橘醍醐は、意外にも舟に強かった。  逆にユーリアは自

スキ
24

カメリア~紅蓮~

■前回までのお話はこちら■本編「椿、着替え終わったか」  ノックもせずに扉が開けられ、その向こうには着物姿で腕組みをした父が立っていた。椿はその無作法を咎め立てする元気もなく、ベッドに腰かけたまま、「まだだけど」と仏頂面で答えた。ベッドの上には過剰なまでにフリルのついたどぎついピンクのドレスワンピースが広げられていた。  父はため息を吐くと、「先方がお待ちだ。急ぎなさい」と言ってドアを閉めようとした。 「今のお父さんを見たら、お母さんは何て言うかな」  矢島家から贈って寄越し

スキ
126

青春はらすめんと シロクマ文芸部

子どもの日だからって、浮かれる歳でもない。 高校生だからって、みんながみんな青春しているわけでもない。 まして、今年は受験生。入試の日まで、1年切っている。 夢の影すら見あたらないまま、リタイヤの許されぬ登山はすでにはじまっていた。なんのためにがんばっているのか、わからなさすぎて笑える。 息苦しい毎日の清涼剤は、塾だ。 もちろん口やかましく暑苦しい講師などではなく、他校の女子生徒。 いちど僕のスマホを拾ってくれたことがあり、なんとなく言葉を交わすようになった。 送迎バス

スキ
82

居眠り猫と主治医 ㉕狙われた獣医 連載恋愛小説

すべてを遮断する気でいたけれど、里佳子とは何度か会っていた。 彼女も夏目祐のゴッドハンドにひれ伏したクチで、あっという間に意気投合した仲。そういう人との絆は、切っても切れない。 「ルリルリ元気ですか?」 彼女のインコはマメルリハという種類で、鮮やかなブルーの美女だ。 「ちょっとそれが聞いてよー」 英国王室御用達の超高級シードを買ってみたところ、愛鳥はそれ以外受け付けなくなったという。 「もー、破産。オーガニックって単語、聞きたくもない」 「うわ。真のプリンセス」 「ほんと

スキ
74

恋愛小説を描いてます。

小学校を卒業した後、愛知県に引っ越した私。 私には引っ越したくない理由があった。 それは、あいつの存在。 あいつと中学生生活を送ることができなかった。 もし、あいつと一緒に中学生生活を送れていたとしたら...。 第15話は、後日描きます。

スキ
10

居眠り猫と主治医 ㉔猫の雲隠れ 連載恋愛小説

事情があって地元の動物病院に戻ることを、里佳子にだけは伝えた。 和気あいあいとした患者会は大人のサークル活動みたいで、心のよりどころだった。 横恋慕みたいな姑息なマネをするから、大切なものまで手放すことになるのだ。 文乃は物心つく前から、親にほめられた記憶がない。 とくに母親は極端な長男至上主義で、たとえ妹が兄より成績優秀でも完全無視を決めこんでいた。 調子に乗って生意気だという認識らしかった。 やることなすことにケチをつけられていると、心の体力が削り取られ、ただ無気力に

スキ
52

本当に読者に届く小説の書き方とは?

1.自己紹介 出版社って、閉ざされた世界ですよね。 本や電子書籍が出版されているのは知ってるけど、 数々の新人賞や小説の賞もあるけれど、 その裏側って実はほとんどの人が知りません。 私はフリーランスの小説編集者です。 小説の編集歴は長く、20年以上になります。 主にライトノベル、恋愛小説をメインに編集をしてきました。 出版の裏側は実はあまり面白いものではないのですが(笑)、 アマチュアの方たちがああでもないこうでもない、 と出版や賞へ向けて、そして読者に届けるために試

スキ
53

第1話 赤いハイヒール(海辺の少女)

 突然名前を呼ばれ、思わず「えっ?」という声が漏れる。人が行き交う駅の雑踏には、何種類もの音が飛び交っている。音に敏感で雑音が苦手な僕は、イヤホンをつけて音楽を聴いていた。その音楽の遥か上をいくような甲高い声が、微(かす)かに耳に届いた気がしたのだ。  それは僕にとって、とても耳障(みみざわ)りの良い声であり、物心ついた時には既に聞こえていた懐かしい声である。昨日も電話で聞いたばかりなのに、どこか新鮮で嬉しかった。感情が顔に出やすい僕は、にやけた顔を見られるのが恥ずかしい

スキ
5

三毛猫ランプとうたたね-文フリ作品紹介-

こんにちは、桜田です。 今日は5月の文フリ東京で出す作品についてお話ししますー。概要は前の出展告知の時にやったのですが今回はもう少し詳しくやっていきます! 今回の文フリでは「うたたね」と「三毛猫ランプ」という小説が主な頒布物となります。「三毛猫ランプ」は一年前の文フリで出した作品ですが今回再販して持っていきます。その続きにあたるのが新刊「うたたね」です。 ・三毛猫ランプ(既刊/B6サイズ/約15000字/800円) 人間の女の子タマと猫の男の子ミケが不思議な夜の世界を旅す

スキ
16

キラキラのそのあとで【二〇〇〇文字の短編小説 #9】

もっと何かできたのではないかと思うと、胸が張り裂けそうになる。救いの声を聞き流した自分の愚かさを突きつけられると、心底、幻滅してしまう。 幼なじみの幸子が自ら命を絶った。まだ三十四歳だった。子どもを二人残して、急に人生を終わらせた。 幸子と僕が最後に会ったのは一年前だった。僕が田舎に帰省したとき、高校時代に同級生の何人かとよく通っていた喫茶店で二時間ほど近況を伝え合った。幸子はあの頃と同じく紅茶を飲みながら、「うつ病なの」と打ち明けてきた。二人目の子どもを産んでから二週間

スキ
13

『虞美人草』⑦夏目漱石

(2,923字) 十二 (藤尾と小野さんの攻防)漱石の小説観(小野さんの詩観) 私の好きな小説も贅沢な生活が散りばめられていた。やっぱりそうなんだな。今回は小野さんの主張を認める。  小野さんの詩人観からの、藤尾と結婚したい理由。算段。腹づもり。(腰抜けぶりあるいは、戦略)  ついでに恋愛観も認めちゃう。  そう言われてみれば、そうなのかも。胸に手を当ててよく考えてみれば私にも覚えがある。お金を好きになったのか、その人を好きになったのか、分けて考えることはできない。

スキ
6

居眠り猫と主治医 ㉑獣医の推し 連載恋愛小説

軽やかに波間を縫い、船を追いかけてくる野生のイルカの群れ。 挨拶をしにきてくれたかと思いきや、船の作り出す波に乗って省エネしたいだけ、という説もあるらしい。 ガイドさんによると、本日イルカたちのご機嫌が麗しいようで、希望者は一緒に泳ぐ許可が下りた。 *** 里佳子が何度もまばたきする。 「…え。少年っぽくてかわいくない?」 とうとう彼の真の魅力が公のものになってしまった。 その日、朝から祐は見違えるように表情が明るく、そばにいる人間が感染してわけもなく楽しくなってくるほ

スキ
49

読書まとめ「汝、星のごとく」

本屋さんに行くと、必ず「汝、星のごとく」(凪良ゆう著)が週間ランキングに入っていて、お店の見えやすいところに置いてありました。なんとなく気になっていたものの、なんだか難しそうなタイトルに購入を渋っていましたが、インスタでの評価と「2023年本屋大賞の大賞」を受賞していることを知り、購入してみました。 これからの文章はネタバレも含まれるので、見たくない方はご遠慮ください。 精神的に不安定な母親と暮らす暁美(アキミ)と男がいないと生きていけない自由奔放な母親と暮らす櫂(カイ)

スキ
8

居眠り猫と主治医 ㉓猫の限界 連載恋愛小説

そもそも文乃が祐に興味を持ったのは、不純な動機だった。 親友が告白され、一時期付き合った相手。 彼女のお店で何度か見かけて、頼りがいがありそうな腕の良い獣医師という印象を抱いた。 幸い、文鳥を飼っている口実もあったので、夏目祐の勤めるクリニックを訪ねてみる気になったのだ。 *** 川上かの子は、フランチャイズの小鳥カフェを個人事業主として経営している。 いつ職を失うか知れぬ不安定な塾講師とは、雲泥の差だ。 しかも、性格はしっかりしているようで、圧倒的な癒やし系。 女から見

スキ
49