花澤薫

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花澤薫

2023年9月に短編小説集『すべて失われる者たち』を出版。プレスリリースは→ https://presswalker.jp/press/20259 noteでは著書の下書きや未収録作品、新作を掲載しています。 お問い合わせはstaff@nowhere1011.comへどうぞ。

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  • 八〇〇文字の短編小説

    原稿用紙二枚分の、物語が始まるまでの物語たち。

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  • 夭折の画家、ウィリアム・キーツの話

    夭折の画家、ウィリアム・キーツの知られざる話を紹介

  • 夢の話、または短編小説の種たち

    いずれもっと広げたい夢の話、または短編小説の種たち。

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【自己紹介】花澤薫について(二〇二四年四月十四日時点)

花澤薫(はなさわ・かおる)は二〇二三年秋に短編小説『すべて失われる者たち』を出版し、小説家としてデビュー。普段は別名義で編集者やライターとして活動している。 福島県生まれ。大学時代は英米文学を学び、ジョン・キーツやサミュエル・ベケット、ポール・オースターなどの論文を執筆した。特に好きなアーティストはサニーデイ・サービス、ライド、ストーン・ローゼズ、ティーンエイジ・ファンクラブ、プライマル・スクリーム、ペイル・ファウンテンズ、ジェイク・バグ、カネコアヤノなど。好きな揚げ物はア

    • 何もかもが思うようにいかない【八〇〇文字の短編小説 #28】

      夕方ホワイトチャペル駅を降りたとき、雨が降り出した。リアンは自分の髪が濡れるままに歩いていく。スカートの裾が少し濡れる。 昨日の夜、アリス・マンローの短編を読み始めて、すぐに本を閉じた。「プライド」と題された作品の書き出し──何もかもまずいことになってしまう人というのがいる。どう説明したらいいだろう? つまり、何もかもが思うようにいかない人がいる、ということだ──に落ち込んだ。 映画監督を夢見てワイト島からロンドンに出てきてから十年がたつ。もうすぐ三十歳になるのに、自分は

      • チェコ系フランス人の作家ハナ・ネドヴェドの『目隠しの季節たち』という短編集の一篇にふれるショートショートを投稿したら

        七月十三日に投稿した「世界それ自体と同じくらいに【一二〇〇文字の短編小説 #16】」が、「#海外文学のすすめ」で「先週特にスキを集めました!」だそうです。スキを押してくれた方には心から感謝申し上げます。 この作品は──ほとんどいつものように──勢いに任せて書き上げたもので、チェコ系フランス人の作家ハナ・ネドヴェドの『目隠しの季節たち』という短編集の一篇にふれている部分が個人的には特に気に入っています。 未読の方は、お時間がある際にぜひご笑覧ください。

        • 答えとまちがいさがし【八〇〇文字の短編小説 #28】

          三時すぎ、玄関の鍵ががちゃりと開いた。小学四年生の娘が帰ってきた。小気味良いリズムで階段を登ってきて、声をはずませた。 「ねえねえ、ママ、わたしの作文が句のコンクールで教育長賞に選ばれたよ!」 「すごいじゃない! なんて題名?」 「『答えとまちがいさがし』っていうの。結構時間がかかったんだから」 「どんな内容なの?」 「うーん、それは秘密」 表彰式で朗読するから、それまでの楽しみにしてほしいのだという。娘なりに親を喜ばせたいのだろう。わたしは「楽しみだわ」とだけ答

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        • 何もかもが思うようにいかない【八〇〇文字の短編小説 #28】

        • チェコ系フランス人の作家ハナ・ネドヴェドの『目隠しの季節たち』という短編集の一篇にふれるショートショートを投稿したら

        • 答えとまちがいさがし【八〇〇文字の短編小説 #28】

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          28本
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          16本
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          18本
        • 夭折の画家、ウィリアム・キーツの話
          2本
        • 夢の話、または短編小説の種たち
          13本

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          世界それ自体と同じくらいに【一二〇〇文字の短編小説 #16】

          日曜日になったばかりの夜、わたしはトムとし終えたあと、裸のままでベッドに横たわっている。 トムとは恋人同士ではない。なんと言うか、それだけの関係だ。リリー・アレンのギグに一人で出かけた際、隣にいたのがトムで、どういうわけかわたしたちはリリーが「Not Fair」を歌っているあいだにキスを交わし、誘われるまま帰りにトムの家に寄って一夜をともにした。 それから、ずっとそういう関係が続いている。わたしはトムのことをほとんど知らないし、トムも同じだ。気が向いたときに、何かを埋める

          世界それ自体と同じくらいに【一二〇〇文字の短編小説 #16】

          仄暗い夜に三人は【二〇〇〇文字の短編小説 #18】

          イアンはノーザン・クォーターの一角にあるパブで待っていた。サリーは約束を覚えているだろうか。一カ月ほど前、彼女の二十七回目の誕生日の十九時にここで落ち合おうと伝えた。ただし、もう一度やり直す気があるのなら、という条件つきで。 電気工事士の職を追われて一年が経つ。失業保険暮らしが続く。不安から逃げ出すように夜ごとマンチェスターの街に繰り出し、クラブからクラブへとふらつき歩いた。マリファナを吸い、職のない現実を忘れようとした。朝方にフラットに帰り、テスコで働くサリーと入れ違うよ

          仄暗い夜に三人は【二〇〇〇文字の短編小説 #18】

          夭折の画家、ウィリアム・キーツの話──No.02

          一九七六年、スウォンジーの骨董屋で発見された作品。署名はないものの、ウィリアム・キーツがスウォンジーで描いたものと理解されてる。 キーツは十四歳のころ、貸し馬車屋を営んでいた親戚の手伝いをするために三カ月ほどスウォンジーに滞在していた。親元を離れた生活で故郷が懐かしくなったのか、バンゴールの風景を描いたものと推測されている。実際、友人のサミュエル・ブレイクに向かって、早く家に戻りたいという内容の手紙を何通も送っている。 ところで、あちらを向いている羊の存在は──。同じバン

          夭折の画家、ウィリアム・キーツの話──No.02

          生まれてこなかったあの子は【八〇〇文字の短編小説 #27】

          東京駅から新幹線が滑り出す。東子は窓越しに手を振る呼人を振り返って見ることなく前を向いた。故郷までの暇つぶしに音楽をと、スマートフォンにささった真っ白いイヤフォンを両耳にしのばせた。 里帰り出産が終わるまでの約二カ月間、別々に暮らすことになった。父や母のもとで産む最後の準備をしようと決めたのは東子自身だ。二年前の早期流産があったから、万全を期したかった。ただでさえ、会社勤めで忙しい呼人にあらためて重圧をかけたくなかった。 早期流産を電話で伝えたとき、実のところ、東子は呼人

          生まれてこなかったあの子は【八〇〇文字の短編小説 #27】

          もしもAIが村上春樹風に超短編小説を書いたら、という意識で仕上げた作品を投稿したら

          七月三日に投稿した「(もしもAIが村上春樹風に超短編小説を書いたら)ゴドーを探したら【八〇〇文字の短編小説 #25】」が、「#恋愛小説が好き」で「先週特にスキを集めました!」だそうです。スキを押してくれた方には心から感謝申し上げます。 この作品は特に初期の村上春樹さんを意識して書いたもので、実は二〇〇〇文字バージョンも存在します。そちらはいずれ投稿するつもりです。お時間がある際に八〇〇文字バージョンをぜひご笑覧ください。 「ゴドーを探したら【八〇〇文字の短編小説 #25】

          もしもAIが村上春樹風に超短編小説を書いたら、という意識で仕上げた作品を投稿したら

          勢いに任せて書いた短編小説を投稿したら

          七月四日に投稿した「夜、カレル橋で【夢の話、または短編小説の種 #13】」が、「#海外文学のすすめ」で「先週特にスキを集めました!」だそうです。スキを押してくれた方には心から感謝申し上げます。 この作品は──ほとんどいつものように──勢いに任せて書き上げたものですが、投稿してからしばらくして、最後の段落に一文を追加しています。さて、あらためて加えたのはどの文章でしょう? いずれにせよ、お時間がある際にご笑覧いただけますと幸いです。 ◤短編小説集が発売中◢

          勢いに任せて書いた短編小説を投稿したら

          新しい命に名前を【八〇〇文字の短編小説 #26】

          東京駅のホームで、呼人は不安を感じていた。これからしばらく、一人の生活を送る。だが、心のざわつきの種は孤独になることではなかった。 新幹線のガラス越しに東子と向き合う。自分の席を見つけ、水色のコートを脱いだばかりの東子の小さなあごがオレンジ色のタートルネックに埋もれている。呼人が声を出さずに「体を冷やさないように」と口を動かすと、東子は照れくさそうにうなずいた。 あと数分で新幹線が出発する。西へ二時間足らず、東子は故郷に帰る。やわらかく膨らんだ腹部には命が宿っている。里帰

          新しい命に名前を【八〇〇文字の短編小説 #26】

          5──noteにまつわる数字の話

          昨日新たに一つ立ち上げ、マガジンの数が五つになりました。お時間がある際にぜひご笑覧ください。どれも一分程度で読み終われる作品ばかりです。 ◤短編小説集が発売中◢

          5──noteにまつわる数字の話

          夭折の画家、ウィリアム・キーツの話──No.01

          アングルシー・ミュージアムに飾られている一作。ウェールズのバンゴールで一生を終えた夭折の画家、ウィリアム・キーツが五歳のときに描いたものと言われている。 郵便配達人だった父が残した日記によると、「何を描いているんだい?」と尋ねたところ、「My own」という答えが返ってきたという。 同じウェールズ生まれの著名な美術評論家マーク・ベルは、「キーツは自らの名のKeatsが、中世の英語で鳥を意味するkiteに語源があることを無意識に感じていたのだろうか。いずれにせよ、ひたすらに

          夭折の画家、ウィリアム・キーツの話──No.01

          夜、カレル橋で【夢の話、または短編小説の種 #13】

          その夏、わたしたち家族はプラハに旅行に出かけた。ブリストルから出るのは初めてのイベントで、家族の誰もかもが国外旅行は初体験だった。息子のニックはまだ八歳で、レイチェルは五歳になったばかりだった。 プラハに着いてからの三日間、カレル橋の近くにあるアモール・ホテル・レジデンスに四人で泊まっていた。夫のサイモンが何カ月も前からインターネットで予約してくれていた。 最初の日、チェックインしてメゾネットタイプの二階建ての部屋に入ると、その広さと優雅さに家族全員が興奮した。どういうわ

          夜、カレル橋で【夢の話、または短編小説の種 #13】

          (もしもAIが村上春樹風に超短編小説を書いたら)ゴドーを探したら【八〇〇文字の短編小説 #25】

          僕が十九歳になったばかりの夏の話だ。夜の十一時か十二時か、とにかく暗闇のなか、僕はイタリアンレストランでのアルバイトを終えて家賃六万円のアパートに帰る途中だった。 向かいから歩いてきた女性が突然、「黒いチワワを見かけませんでしたか?」と訊いてきた。僕が「見てませんね」と答えると、その女性は「一緒に探してもらえませんか?」と言ってきた。僕はそうすべきだとすぐに思った。今振り返ると不思議だけれど。 二時間か三時間か、僕らは夜の住宅街を回った。チワワは見当たらず、その女性は途中

          (もしもAIが村上春樹風に超短編小説を書いたら)ゴドーを探したら【八〇〇文字の短編小説 #25】

          「スキ」が少ない短編小説たちにだっていいところがある(六月の振り返り)

          二〇二四年四月一日に始めたnoteは昨日でちょうど三カ月が終わった。ほとんど誰も気づいていないだろうけれど、(ほぼ)毎日作品を投稿してきた。 「スキ」が少ない短編小説たちにだっていいところがある。というか、自分で「なかなかいい感じで描けたな」と思う作品でも「スキ」が少ないときは心が折れかける。 六月に投稿した短編小説群のなかで、七月二日二十二時時点でスキが少ない作品をちょっとした解説とともに五つ紹介する。もし「面白いな」と思ったり、心が動かされたりした作品があったら、スキ

          「スキ」が少ない短編小説たちにだっていいところがある(六月の振り返り)