伊賀焼作家・小島陽介さんの黒い器は、朽ちて醜怪になったものを嫌うことなく、寄り添って照らします。それは高田郁の時代小説「銀二貫」で、大火によって顔半分に火傷を負った真帆を妻として迎えた、松吉の深い愛の様です。そして、川月清志さんによる敷板は、井川屋にまつわる心優しき人々の様です。
川月清志さん作の一輪挿で、木のフレームに試験管がしつらえてあります。それは野辺の花の横顔を引き立てます。花は優美なS字カーブを描き立っているのが解ります。その曲線はリラックスして立った時のヒトの脊柱と相同です。見つめていると首筋と肩から体がほぐれてきて、やさしい気持ちになれます。