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川月清志さんによる栗の木のトレイ
画像は、倉敷市本町「アートスペース路ゞ」で遭遇した、岡山・成羽町「工房 川月」の、川月清志さんによる、栗の木でできた小さなトレイです。
大きさは、14.5cm×23.8cmで、湯飲みやカップと、お菓子を載せるのにちょうどよい大きさです。木材が年月をかけてよく乾かされており、とても軽く感じます。
![IMG_1499のコピーのコピー](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/52969530/picture_pc_e2759c528f881f2950ac145895daf2ae.jpg?width=800)
栗の木は、実の生産性が高く、里の人々や森の動物を養ってくれる重要な落葉樹です。落葉樹は、冬には光合成に見切りをつけて葉を落としてしまいますので、常葉樹よりも、環境に柔軟に生きていると言えます。そんな栗の木の木質は、柔軟に生きた歴史を反映して、複雑な様相を呈します。
川月さんはそれを、エグリカッターで手の感触を頼りに木と対話しながら、彫り出します。トレイの表面は、木の繊維や木目、刃物の跡が組み合わさって、複雑な造形を成して行ったことでしょう。
出来上がったトレイは、見かけもさることながら、表面を手で撫でると、凹凸や摩擦感が様々に入り交じった楽しい感触が生まれます。とりわけ、「➡」の部分に木の最も硬い部分があって少し盛り上がっており、左手の親指が吸い付けられるような、心地よさがあります。
その日、幸運なことに、ちょうど納品に来られた製作者の川月さん本人にお会いすることができました。
![IMG_1115のコピー](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/52969998/picture_pc_8064235801ce4661e6301fab473dc276.jpg?width=800)
川月さんは、とてもお優しい方で、日々、木に愛情を注ぎながらお仕事をされているのだろうな、と想像しました。奥様は染色家の、川月 紅 さんです。
追伸
川月さんのトレイは、縦が14.6cm、横が23.7cmで、縦横の比率は、1.623となります。これはなんと、人間が最も美しいと感じる黄金比1.618に一致します!
追伸2
川月さんのトレーの、黒ベンガラ漆塗りバージョンです。
![](https://assets.st-note.com/img/1641909330995-AeS0c98kb8.jpg?width=800)
太古の木の化石のような、枯れた落ち着きが感じられます。白木のバージョンと交互に使い分けて抹茶を楽しんでいます。
番外編
画像は、クレド岡山のセレクトショップ・douceの店頭に展示してあった工芸品の栗の箸です。
![](https://assets.st-note.com/img/1648300107755-BRREcX2Hzx.jpg?width=800)
栗は硬性が高く、重量や振動がダイレクトに身体に伝わります。とりわけ麺を食すときに、麺の重みに、はっと、気付かされ、新鮮な体験ができます。器や食材と接触した振動を増幅して手や耳に伝えてくれるのが、擦弦楽器(ヴァイオリンやチェロなど)のようです。
この箸は、栗の木目の自然な捻れを残して仕上げられています。それは里山のような、手入れされた自然の趣です。
筆者は、3歳頃、祖母と荘園領主の館跡の小高い丘に出かけた時のことを思い出しました。お弁当の箸を忘れてきたので、祖母が急遽、山に自生するツツジの枝を折って、箸代わりにしてくれました。この箸は、そんな筆者の最も古いノスタルジーを思い出させてくれました。
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