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三宅木工房、三宅智之さんによるシロクマの造形

岡山市にある三宅木工房の、三宅智之・隆恵ご夫妻は、家具や日用雑貨の製作の傍ら、無垢の木を使ったアートフルな作品を製作されています。
画像は、三宅智之さんによるシロクマの造形です。

三宅智之さんによるシロクマの造形

無垢の木の元の形を生かして、削り込み、彫り込み、は最少限にして、彫刻刀の刃のあとを残した、素朴な仕上がりになっています。

像を前および横から見たポイントは、浅いが、しかし、像で最も深く刻まれている顎の造形です。

顎は、最少限度の削り込みで造形されていて、水平な頭部と相まって、神妙に顎を引いているのが伝わって来ます。
浅く彫られた腕が、体側に腕を付けて、やや体を硬くしているのを表現しています。
小さな眼には、ちゃんと光があって(画像を拡大してみて下さい)、ストレートな喜びが伝わってきます。

後ろから観たシロクマ

像の後ろを観ると、クマ特有の小さなシッポが造形されています。フラットな背中からは、何故か哀しみが伝わってきます。・・・シッポの造形と広い背中から、燕尾服を着た花嫁の父親がイメージされました。
そうか!神妙さと喜びと哀しみとが同居する、複雑な像の内面は、世間でよくあることだけれども、娘の結婚式に望む父親の心情を象徴していたのか!

彫刻には、全盛期のミケランジェロによるピエタやダビデ像のように、芸術家が素材の塊の中に見出したイメージを、そのまま彫り出した造形があります。芸術家の激しい情念が成せる技です。その一方で、最終的な完成形のイメージを決めないで、素材と対話しながら、言わば、素材が望むように造形するような方法もあります。とりわけ、造形の素材としての無垢の木には、一木々々、異なった来歴があるので、製作した芸術家も予想しなかった、多義的な像が出来上ることになります。

今回の作品は、きっと三宅智之さんが、木と対話しながら、木が望むように彫刻刀を入れられたのでしょう。三宅智之・隆恵ご夫妻は、木工技能者から出発されたので、木の命を大事にされる優しい気持ちが伝わってきます。

筆者は、三宅ご夫妻の優しさとユーモア溢れる木工作品に嵌まってしまった次第です。


追伸

我が家のリビングでは、春の使者、白木蓮の花が咲きました。シロクマが小さな目で花を眺めています。白つながりの、微笑ましい情景です。

追伸2

2022年1月22日にJR山陽本線・北長瀬駅にある広場で、「冬のマーケット」が開催され、三宅智之・隆恵ご夫妻が出店されるとお聞きして、是非ともご夫妻にお会いしたいと思い、出かけてきました。
三宅ご夫妻は、想像通り、とてもお優しい方でした。お二人は、岡山県総合技術専門校の同級生だったそうで、志を同じくするもの同士が家庭をもって一緒に仕事をするという、とても幸せな出会いをされています。仲睦まじいお二人は、まるで本当の姉弟のようです。筆者が敬愛する工房川月の川月清志さんが恩師だったそうで、不思議なご縁にびっくりです。

お店では、新作のシロクマを2体購入し、我が家のシロクマは3体になりました。

シロクマたちは、一言でいうと、「シュールなかわいさ」といいましょうか、非日常的で、不思議な存在感があります。
普通の「かわいさ」は、赤ちゃんや幼児の体型をしていて、体に丸みがあって、頭と目が大きいようなキャラクターです。シロクマたちは、体は長方形で、頭が大きくなく、目が小さいので、この条件に当てはまりません。でも、直立し、手を体側に着けた礼儀正しい立ち姿をしていて、それでいて、口元には笑みをたたえて緊張感がない、矛盾した風貌に、ユーモアと何とも言えない愛らしさが感じられます。
作者の三宅智之さんが、シナの木と対話しながら、一本一本の木の来歴を生かして造形したので、シナの木の妖精といえる、魔術的な存在なのかもしれません。3体は、我が家によいめぐりあわせを運んでくれそうです!

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