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多数の人が犠牲になったのは事実だが、人間の社会がウイルスによって崩壊してしまうことはない。しかし、カミュがペスト菌によって喩えた全体主義体制は死なない。 コロナウイルスは、「国家体制と疫病」という重大な問題をわれわれに突きつけたのだ。

『ペスト』は、第二次世界大戦時にドイツ軍に占領されたフランスの隠喩だといわれる。 「ペスト菌が決して死ぬことも消滅することもない」というのは、ナチスが崩壊しても、それと同じようなものが再び現れることへの警告なのだ。

天安門事件当時と比べて、SNSの力は格段と強くなった。投稿は削除しきれないほど多いとも言われる。

中国のサイトを見ると、「外国で働きたい」という書き込みがたくさんある。中国の若者たちは、グローバル志向を強めている。 中国で、こうした考えは、マグマのようになって、地表に近づきつつあるのではないだろうか?

国と国の間には外交関係があるし、企業の取引関係もある。また、さまざまな分野に、交流を促進するための団体が多数ある。こうしたルートを通じての交流は、もちろん必要だ。しかし、これらは、特定の目的を持って設立されたものであり、しかも、組織を通じるものだ。

疫病に関して現場の医師の情報は重要だ。このとき、それを重視して即座に対応すれば拡大を防止できたかもしれない。しかし、その当時、中国当局は情報を抑え込むことに終始していた。その結果、感染が拡大してしまったのだ。ここに、中国という国の重大な欠陥が現れている。

リウーは、心の平和に到達するためにとるべき道について、何かはっきりした考えがあるか、とタルーに尋ねる。「あるね。共感ということだ」とタルーは答える。タルーは言う。「人は神によらずして聖者になりうるか──これが、今日僕の知っている唯一の具体的な問題だ」。

中国から広がった新型コロナウイルスの感染が、日本を含む世界各国に拡大し、予断を許さない状況になっている。 この状況の中で、多くの人が、アルベール・カミュの『ペスト』を思い出したようだ。

李医師の警告は、責任感の強い知的な人々が中国に存在することを示している。こうした人たちの発言が、さらに広がっていかないだろうか?

スティーヴン・キングの小説に『ザ・スタンド』という作品がある。 これは、軍の研究所から致死率の高いインフルエンザウイルスが流出してしまい世界中のほとんどの人が死亡してしまうというホラー小説だ。こんなことは現実にはありえないと思っていたが、現実に起こっているという恐怖に襲われる。

SNSに見られる世論には微妙な変化が見られると言われる。当初は当局の対策の不手際を指摘する声もあったが、その後は政府の対応ぶりを賞賛する声が多く「人口が1000万人の大都市を封鎖したりわずか10日間で病院を造ってしまうようなことは中国だからこそできる」といった声も増えているという

2017年に、中国テンセントと米マイクロソフトが共同で開発した会話ボット「BabyQ」が、「中国の夢とは何か?」という質問に対して、「アメリカに移住すること」と答えたことが話題になった。

コロナウイルスはいつかは終息するが、そのまま忘れ去られてしまうものではありえない。 これによって、平時には取り立てて議論されることはなく放置されてきたものごとの本質に対して、あからさまな問題が投げかけられたのだ。

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李医師は、2020年1月30日にメディアの取材に対して、「健全な社会であるならば、声は一つだけになるべきではない。公権力が過剰に干渉することには同意できない」と語った。この発言は大変重い。

社会信用システムでは、善行を積む人のスコアが高くなるから、社会をよくするのだと言われる。

中国の強硬的な姿勢を感じさせたのが、WHO(世界保健機関)への圧力だ。WHOは緊急事態宣言を遅らせただけでなく、2020年1月30日にようやく出された宣言では、中国政府の対処を賞賛するという異例のものとなった。そして入国制限などに対して否定的な見解を示した。

2003年当時、中国のGDPの世界経済に対するシェアは4%程度だった。しかし、2018年には約16%と拡大した。2019年の訪日中国人は約960万人と、03年の21倍超だ。巨大市場中国の成長減速で、世界経済の需要が減少する影響も深刻だ。

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SARSが流行した2003年と現在を比べてみると、世界経済に与える中国の影響は桁違いに大きくなっている。

新型コロナウイルスは、中国経済に大きな影響を与えた。まず、各種サービスや小売、航空、保険など多くの業種が、感染の拡大と政府の対応の影響を受けた。

1月20日に、習近平の重要指示が出された。それを境に中国国内はパニックに突入。発表される感染者の人数は、19日までの62人から20日には198人に急増し、それ以降、加速度的に増えた。

米中経済戦争は、トランプ大統領の個人的判断によるのではなく、アメリカの支配層や政府全体の広範な合意を背景としている。 https://note.com/yukionoguchi/n/n8eff9a093b28

かつて、経済学者フリードリヒ・フォン・ハイエクは、現場の人(man on the spot)が持っている情報を、社会全体の情報として共有するための仕組みについて論じた。

中国は、「寛容」の条件を満たしていないので、覇権国家になりえない。しかし、アメリカも中国も、これらの点に関して変質しつつあるのかもしれない。

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コロナウイルスの感染拡大も、それが経済活動に与える影響も、いつかは終息する。しかし、そうなっても終わらない問題がある。それは、「国家体制と疫病」という重大な問題だ。 https://note.com/yukionoguchi/n/n8eff9a093b28

製造業への影響も大きい。武漢は、世界の自動車産業の製造拠点で、日本のホンダなど自動車大手や関連の部品メーカーが集積している。そして、生産が大きな影響を受けた。

「自由と安全のどちらをとるのか」という極めて困難な問題から、われわれは顔を背けることができなくなった。 https://note.com/yukionoguchi/n/n8eff9a093b28

『中国が世界を攪乱する』はじめに(その3)

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さまざまな声があってこそ、そしてそれを調整するメカニズムが機能してこそ、健全な社会が実現できるのだ。中国にはそうしたものが欠如している。これこそが、信用スコアリングや顔認証等について問題としたことだ。

ここでカミュが「ペスト菌」と言っているのは、病原体であるペスト菌そのものではない。これは隠喩なのである。直接には第二次世界大戦当時のナチスを指すと言われる。もっと広範に、全体主義国家、強権国家、監視国家などを指すと解釈することができるだろう。

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『中国が世界を攪乱する』:目次

『中国が世界を攪乱する』はじめに(その1)

中国工場の閉鎖は海外企業に混乱をもたらしている。中国のサプライヤーに依存している多くの企業が、部品調達の困難に直面した。

しかし、半面において、こうした技術が国民管理の道具として用いられ、管理社会化を招く危険もはらんでいる。 https://note.com/yukionoguchi/n/n8eff9a093b28

強権国家は、国民にとってマイナスの面だけではない。もしかしたら、プラスの面があるのかもしれないのだ。 そうであれば、人々は強権国家を求めるかもしれない。 https://note.com/yukionoguchi/n/n8eff9a093b28

現代世界では、アメリカがローマの考えを引き継いだ。アメリカは世界中の能力のある人々に成功のチャンスを与え、それによって発展してきた。中国はその対極にある。

中国は「軍民融合体制」で軍事革命を進めている。極超音速滑空ミサイルなどいくつかの分野で、世界最先端の兵器システムを保有しており、これに対するアメリカの危機感が強まっている。

米中経済戦争の根底には、中国が未来世界のヘゲモニーを握ることに対するアメリカの焦燥がある。 https://note.com/yukionoguchi/n/n8eff9a093b28

「強権国家が人々の権利やプライバシーを犠牲にして対策にあたれば、国民は安全を得ることができる」ということなのかもしれないのだ。 https://note.com/yukionoguchi/n/n8eff9a093b28

しかし、それこそが、本書のエピグラフで引用したカミュの警告だ。 https://note.com/yukionoguchi/n/n8eff9a093b28

『中国が世界を攪乱する』はじめに(その2)

人類の長い歴史において、中国は世界の最先端にいた。しかし、16世紀頃からこの状態が変わり、とくにアヘン戦争以後は、衰退の極みに達していた。 https://note.com/yukionoguchi/n/n8eff9a093b28

実際、米中経済摩擦は関税以外でも生じている。それは、ファーウェイ叩きに代表されるアメリカの一連の攻撃に見ることができる。これは、ハイテク産業における覇権をめぐる戦いなのだ。 https://note.com/yukionoguchi/n/n8eff9a093b28