バラの短歌

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遺されし小さき文机 母の日に我の描きし花の絵のあり/安原健一郎

しなやかな生命線を背に添えて水筒は子の旅を見守る/ナイコ

久方の朝日を受くる海鳥のかな文字のごと空へひらけり/ぷくぷく

千羽鶴千へと至るはじまりの一羽の深き谷折りの線/文月郁葉

これもまた方言だろう故郷とはちがう響きの波音を聴く/小泉キオ

夏服の子らアナベルの群生のやうに屯す梅雨晴れの駅/ともえ夕夏

白地図で国を覚えて境界の脆さは知らずにいた地理の時間/飛和

臥す母に朝餉の匙を運びつつ知らず左の手を重ねをり/ふにふにヤンマー

サイダーを淋しさとともに飲み干せばわたしのなかに満ちる潮騒/さえ(colorfultwigs)

タラの芽をさっと揚げればほろほろと冬の苦さが淡くほどける/小川萌

コーヒーの黒い鏡に現れる疲れた顔にミルクを垂らす/みよおぶ

さっきまで愛されていた残響としてブランコはきいきいと鳴く/葉村直

花は散るときにはじめて一枚の花びらとなる 遠き学び舎/長井めも

菜の花の色したパジャマを差し入れて寝たきりの祖父に春を届ける/GT

少しだけ子供になりたい日のために戸棚の奥で眠るいちご酒/川下知世

奥様もどうぞと医者に通されてあなたの妻で過ごす10分/RUKA

伸びすぎて危険だという街路樹が伐り倒される前日は雨/小倉るい

透明の鉄格子から星ばかり眺めるレジのホァンさんの夜/ryu.0_0

幼いに扌がついた字のごとく、拗ねるぼくには撫でる手がいる/三冬つくし

それぞれの発車のベルとして響く廃校前の最後のチャイム/柿本なごみ