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さっきまで愛されていた残響としてブランコはきいきいと鳴く/葉村直

2022年3月29日(火)の7時部屋の題「さっき」でバラ秀歌となった短歌。

子どもだろうか、大人だろうか、ブランコに乗っていた人がいる。作中主体が乗っていたのかもしれない。

ブランコの側からすれば、乗られることは愛されることなのだ。乗る側からすれば夢中になると、ブランコの軋む音は聞こえなくなることがある。作中主体が乗っていたとすれば、ブランコを降りてから軋む音に気づくということだ。それを「残響」と表現する。ブランコから降りた後も少しの間揺れは続くからだ。

結句「きいきいと鳴く」では、ブランコを鳥か獣などのように捉えている。「ぎいぎい」ではなく「きいきい」というのが物悲しく聞こえる。

ちなみに、ぶらんこは、鞦韆(しゅうせん)と言って春の季語だ。

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