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久方の朝日を受くる海鳥のかな文字のごと空へひらけり/ぷくぷく

2022年11月3日(木)のうたの日19時部屋の題「題『文』を文語で」で首席(薔薇)を取った短歌。

「久方の」は、「日」を導く枕詞。「海鳥」の種類はわからないが、朝日の光を受けて、海の上を飛んで漂っているのだろう。ウミネコやカモメが飛翔する姿は、平仮名で言えば、「ひ」や「へ」のように見える。そのため、「かな文字」というのは平仮名ということだろう。結句「空へひらけり」で「ひらく」という動詞を用いていることからも、平仮名であろうと予想できる。

何が「ひらく」のだろうか。鳥自体は翼が「ひらく」ようなのだろう。文字としては、漢字が仮名になることを「ひらく」と言うので、鳥の姿が「かな文字」のように見えてくるということも表していよう。この「ひらく」は掛詞のように機能している。上句で漢字を多く用い、下句で平仮名が多くなっていることは象徴的である。

「海鳥の」の主格の「の」は短歌でよく用いられるが、音調をととのえるために「の」という響きを選んだもので、「海鳥が…ひらけり」や「海鳥は…ひらけり」という意味合いである。「の」は、「海鳥の飛ぶ海」などと連体修飾句で用いるのが本来の形である主格の助詞。

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