見出し画像

遺作の断片


「結神末松山(むすぶのかみすえのまつやま)1837 年(天保 8年) 

 「東海道中膝栗毛」で有名な十 返舎一九作の本の表紙です。上下巻合わせると一枚の絵になります。本資料は序文に「十返舎一九遺稿」とあり、一九の死後に出版された作品で、現段階では、一九最後の作品といわれています。

 この作品は近江国(滋賀県)の櫻谷(さくらだに)藩の真野兵太郎(時連)が宝剣を手に入れてから、自分の才能に慢心してしまい、邪道に落ちて、最期には非命の死を遂げる様子を描いています。

 絵は歌川国貞。「香蝶楼国貞」という名は1827年(文政10年)から用いています。この時代の美人画は最も高い評価をされています。

香蝶楼国貞

左の女性は紋付無地の着物を着て、帯は一ツ結び。この結び方は長い帯が揺れて動きがあるため美しく見えます。


紋付無地の着物と一ツ結びの帯

二人の女性の髪型は「丸髷」で江戸時代では既婚女性の代表的な髪型です。

丸髷

上巻と下巻どちらも女性が振り返った様子の絵です。「見返り美人」は日本女性が美しく見える仕草なのかもしれません。

※この話を書いた後にこの本には「中巻」もあることがわかりました。国立国会図書館デジタルコレクションで見ることができます。

参考文献:・福井県文書館 学校向けアーカイブズガイド ・『歌川国貞 これぞ江戸の粋』


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?