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変形性股関節症 変形性関節症について学んでリハビリプログラムを再考しよう!

変形性関節症は臨床でも数多く経験する疾患の一つです。

退行変性疾患であるため適切なリハビリプログラムを選択しないと症状が悪化してしまいます。

痛みがあるから積極的な運動ができないと諦めていませんか?

運動制限の多い疾患ですが注意点を守りながらアプローチできると日常生活に復帰できる可能性もあります。

今回は、変形性股関節症について学習していきましょう!



好発

40〜50代以上の女性や重量物取り扱い作業の従事者、寛骨臼形成不全や発育性股関節形成不全の既往のある人です。男女比は1:1〜4です。

原因・病態


・一次性股関節症
原疾患が明らかでないものです。
重量物取り扱い作業、肥満、加齢など
一次性のものは日本では少なかったが、最近は増えてきています。

・二次性股関節症
下記の原疾患に続発するものです。

・寛骨臼形成不全
・発育股関節形成不全(DDH)
・大腿骨寛骨臼インピンジメント
・ペルテス病
・大腿骨頭壊死症
・外傷(脱臼、骨折)

日本人は臼蓋形成不全より派生するものが多いです。

症状・所見


・疼痛
初期は運動開始時の疼痛が特徴的です。
進行すると持続性になり、安静時痛や夜間痛をきたすこともあります。

・関節可動域制限
進行に伴い股関節の可動域制限が起こり、日常生活動作が困難になります。
靴下履き、足の爪切り、しゃがみ込みなど

・跛行
疼痛、脚長差、筋力低下で跛行をきたします。
疼痛回避跛行、トレンデレンブルグ歩行など

・関節変形
股関節が変形(屈曲、内転、外旋拘縮)します。
患肢の短縮により脚長差をきたします。

X線

変形性股関節症の画像診断は、X線正面像を基本に行われます。

・関節裂隙狭小化
・軟骨下骨の接触
・骨頭や寛骨臼に骨硬化像や骨嚢胞
・骨棘形成
・臼底の骨増殖(二重底)

関節裂隙の狭小化の程度などにより病期を判定します。

治療

目的は疼痛の軽減と関節運動制限の改善であり、根治療法はありません。

疼痛の軽減、機能障害、変形の防止と進行の抑制、関節安定性の獲得が目的になります。


保存療法

保存療法は疼痛の軽減や病期の進行の予防を目的に行います。病期が進行した場合には、手術療法を検討します。

・日常生活指導
股関節にかかる負荷を軽減します。
減量、動作回避(正座、あぐら、長時間の立位、階段)、歩行補助具

・運動療法
股関節周囲の筋力を鍛えて関節を安定させます。
可動域訓練は関節炎を助長するおそれがあるため積極的には推奨されません。

・装具療法
股関節の動きを制限・固定することで疼痛を軽減します。脚長差を補うことで歩行を補助します。
 股装具、補高靴、足底装具

・薬物療法
疼痛に対する対症療法です。
・鎮痛薬(NSAIDs、アセノアミノフェン、弱ピオイド、デュロキセチンなど)内服
・関節内注射(ステロイド)


手術療法


手術療法は、関節温存術(骨切り術)と人工関節置換術(主にTHA)に大別されます。

術式の選択は、病期や年齢、病態、社会的背景などを考慮します。

原則的には関節温存術を行うが、進行期・末期の高齢者には人工関節置換術を行います。

・関節温存術(骨切り術)
大腿骨頭と臼蓋の適合状態、骨破壊の状態から転子下内反骨切り術あるいは転子下外反骨切り術を行います。
 
・臼蓋形成術・キアリー骨盤骨切り術
前および初期股関節症に適します。
臼蓋の股関節への被さりを増すもので、理学療法としては術直後は免荷での日常生活動作訓練が行われます。

・人工関節置換術
骨セメントを使わないセメントレスとセメントを使うものがあります。感染の問題、人工股関節の耐久性の問題、脱臼の問題を除けば成績は良好です。

理学療法

変形性関節症の評価


①年齢
老化による退行性変化のため重要な情報です。

②現病歴
痛みや関節可動域制限が長期間続いた場合には、手術療法を選択しても筋力や関節可動域制限の改善が長期化します。

痛みの発生した時期や正座、和式トイレが使用できなくなった時期を確認しましょう。

③既往歴
先行する外傷の有無は、一側性の場合に既往があるものが多いです。変形性股関節症の場合は、先天性股関節症脱臼、臼蓋形成不全の確認をします。


④職業
長期にわたる特定の動作や重量物の運搬などの過負荷が影響します。

⑤スポーツ
スポーツをやめた頃から症状が悪化する意見もあります。そのため筋力増強が症状の発現を抑えると考えられます。

⑥身長・体重
肥満は変形性関節症との関係が大きいです。

⑦疼痛動作とストレス方向
変形性股関節症では歩行時に疼痛が増悪します。関節に屈伸などのストレスをかけて疼痛の発生する動きを理解します。


⑧圧痛点
ストレスのかかっている部分で生じます。
股関節前面、膝蓋骨上部、鵞足付着部、大腿筋膜張筋付着部、下腿三頭筋、舟状骨部など。下肢以外では腰部も多いです。

⑨アライメント・姿勢
立位と臥位の両方で確認します。

⑩下肢長
股関節部・骨頭での問題を区別するため転子果長と棘果長の両方を見ておきます。手術により脚長差が解消されると、急な下肢延長により違和感を訴えるものも多いです。

⑪周径
筋萎縮の有無を確認します。

⑫腫脹・熱感
炎症の状態を把握します。
症状が強度であれば運動療法は軽減または中止します。

⑬関節安定性
股関節の安定性は立位や歩行時の骨盤傾斜として確認します。

⑭筋力
可動域とともに罹患関節の上下一関節は最低限見ておきます。抗重力の運動は痛みのため下肢が落下することがあるため注意します。

⑮関節可動域
靴下の着脱、足の爪切り、和式便所の使用などは関節可動域制限の把握に役立ちます。関節の過度の運動は無用の痛みを生じさせるため注意します。

⑯歩行
股関節痛を伴う場合は、患側に乗りかかるような歩行を生じます。ドゥシェンヌ歩行、代償性トレンデレンブルグ歩行など。

⑰片脚立位
Trendelenburg徴候
患側肢で片脚立位したときに患側外転筋力の不全のため健側の骨盤が落下します。

⑱スクワット動作
正しい方向は、つま先と膝の屈伸方向が一致します。

⑲足部異常
立位と臥位でみておきます。

⑳X線
X線上の変化と痛みとは一致しないことも多いです。
物理的なぶつかりの理解に有効で可動域改善の可能性の目安にもなります。
FTA・アライメントも確認しておくと確実です。
骨頭の被覆率などSharp角やCE角をみる程度で十分です。

変形性股関節症の理学療法


①筋力増強訓練
変形や疼痛のため局所的に廃用性の筋力低下を起こしています。

股関節の安定性を確実にするために、中殿筋を中心に股関節周囲筋および膝関節周囲筋の筋力増強訓練を行います。

疼痛が激しい場合には等尺性収縮を優先します。

疼痛がない場合は等張性収縮を第一選択とします。

スクワットのような荷重下での運動は効果的ですが、疼痛が強い場合には臥位で行ったり牽引を加えて関節の負担を軽減します。

外来で治療を受けるものも多いため、家庭内で可能な訓練を指導します。


②関節可動域訓練
変形や拘縮に伴う運動制限に対して実施します。

牽引をかけて関節面が離開するように行うことで、比較的疼痛が少なく可動域を改善できます。

しかし、関節炎を助長するリスクもあるため積極的には推奨されません。


③姿勢調整訓練
脚長差や、股関節の内・外転制限による「みかけの脚長差」を代償するため骨盤が側方傾斜していることも多いです。

骨盤を水平化に保つ筋活動を再学習します。


④有酸素運動
体重減少により関節への負担を軽減します。
また、長時間運動ができる体力作りにもなります。

⑤物理療法
・水中療法
渦流浴などの特殊な装置を使わなくても、浴槽の縁に座り、屈伸運動を行えば家庭での抵抗運動が可能です。

・温熱療法
ホットパックの使用で、股関節周囲の血行を改善し疼痛の緩和や関節可動域の改善が可能です。


今回の記事で参考にした書籍はこちらです↓

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今回の記事は以上になります。

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