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『ミギとダリ』第13話「ミギとダリ」感想 園山秘鳥の物語のおわり、園山ミギと園山ダリの物語のはじまり


◆これまでの感想

◆後日談

季節は廻りクリスマス。
自首した瑛二くんだが、警察は流石にそのまま証言を鵜呑みにはせず。
お父さんが必死に弁護してくれたり、丸太が残したビデオテープがなんとか再生できたり(でも恐怖映像だよねあれ)、罪が軽くなったのはみんなで瑛二くんを支えてやった感がある。それでも少年院へ出所したが、彼ならこの機に更なる成長を遂げられるだろう。少年院故に丸坊主にならざるを得ないとはいえそうなるのは心底意外だったが、瑛二くんなりのケジメとも捉えたくなる。

丸太は華怜ちゃんと遠距離恋愛ああうん…
ていうか、マジで付き合っているのかよ!?この丸太の約束された不憫さは笑えるし、でもやっぱりかわいそうなので「つよくいきろ」と念じたくなってきた。このバランス感覚は秀逸だなあ。
当時はもちろんケータイが存在しないので、なんとか電話や文通でやり取りするしかない。だがそれはそれでワクワクドキドキで楽しみじゃないかなと思う。つよくいきろ、丸太。お前ならやれる。

そしてミギダリは…あれ?

ミギだけ…?というか、ミギには火傷跡がないのか。いちおうダリはこれまで通りテーブルの下に潜伏していたのだが、

ダリはこのまま姿を現すにはいられないのだという。ありゃりゃ…秋山くんや丸太くんにも秘密をバラしたんだから、今になって隠し続けるのも時間の問題だろうに。過去に何度も述べたが、園山夫妻なら受け入れてくれるだろうと。ミギもそのつもりのようだが。
だがしかしここはダリを尊重してやりたい。「ダリの幸せがミギの幸せ」というのはやっぱりお兄ちゃんやってて好きすぎる。だが、それは本当に幸せなんだろうか?もっと本音を引き出してやりたい。

校内でも「実はふたりなんです」とあまり騒ぎは起こしたくないのか、園山秘鳥のまま在籍。ここでもダリのサポートは続く。のはいいのだが、跳び箱で自分の手を足場にするのは視覚的にキツいよ!幼稚園の頃うっかり事故って手を足で踏まれてアギャースと泣いたのを思い出すよ!そもそもどうやって跳び箱の中に潜伏したのさ!

数少ない秘密を知る友人・秋山くんもこのまま秘鳥として生きていくのかと気に留めてくれている。ミギの本心はやはり「ミギとダリとして生きていきたい」。だがダリの気持ちを尊重したうえでこの生活を続ける…本当にいいのだろうか?

孤独故に置いてけぼりにされる恐怖を抱くダリ。
冷静に考えてみれば、火傷跡のせいでこれまで通り入れ替えることはできない。それどころか、オリゴン村を迂闊に散策することもし辛くなった。
まあ、ここまで隠し続けるのも自分たちの選択なのだが。園山夫妻はともかく、他の人々もそうすんなり受け入れられるか分からない。とんでもない事態に巻き込まれるかもしれない。それを避けようとも、誰一人味方してくれない未来は恐怖しかないだろう。

◆気づき

クリスマスパーティーを過ごした翌朝、2人分のプレゼントがそこにはあった。これはもう確変演出としか思えないのだが、それもそはず、

前々から予感していたことではあるが、園山夫妻は秘鳥がふたりであることに気づいていたのだ。流石に最初からではなく途中からだったのだが、この瞬間からもうぼくは涙がボロボロ零れ落ちていた。

園山夫妻が真実を知ったときは一体どんな心境だったのだろうか?ずっと秘密を隠し通していることに心を痛め、だがそこに言及することすら躊躇っていたのだろうか?「ねえ秘鳥くん、実は二人いるんでしょう?」みたいな言葉は恐怖へ返り咲く可能性だって有り得る。
このように、園山夫妻視点で物語を構築できる楽しみが生まれたのはやはり作劇力が高い。

園山夫妻の前に初めて、ついにようやっと、ミギとダリとして。最初は片方だけ足元を映して、数秒後にもうひとり無事に写されただけでも勝利のガッツポーズを決められた。

夢にまで見ていた4人で食卓を囲む、当たり前のようで尊い日常。
特におばあちゃんがダリの大好物がオムレツなのを覚えてくれたのが本当に涙腺崩壊の瞬間だった。こんなん泣くに決まってるじゃん…嬉し涙しか出ないじゃん…粋過ぎるよ園山夫妻。

涙のせいでダリじゃなくてダミとか園山ダミとか言い間違える、アメリカンエッセンスを感じるギャグも今はもう微笑ましい。良いんだ。こういうくだらない笑いを共有できることがみんなにとっての最高の幸せなんだ。

キャストが「園山ミギ」「園山ダリ」になってる!!!!
すげえ!これは粋がありすぎる配慮ですよ!こういう本編外での思わぬ変化良いなあ!ハルタ本誌は実は今まで手に取ったことがないのだが、本編前のページやハシラの余白に登場人物紹介としてしれっと園山姓を付け加えることが可能かもしれない。

◆数年後

1993年3月。
1989年12月からスタートで、今週冒頭はクリスマスだから1990年12月?ともあれ、あれからざっと3年が経過したことになるのだが秋山くんは園山家のなんなの??髪型もおじいちゃんとおそろになるとか、親戚を通り越して侵略者なの??もう家族になればいいと思うよ!

誰だてめ絵!?
出っ歯とイケボから丸太なのはすぐ察せられたけど、3年のうちに代わりすぎて一体何があったんだよこいつ!?インパクトすごすぎてクッソ笑ってBパートの感動が台無しにやりやがったよ!!

でもあれだな。
華怜ちゃんといつか再会できる日に向けて自らイメチェンしようと試みたんじゃないかな。勿論ぼくの勝手な妄想に過ぎないのだが、積極的にそう考えたくなったくらい丸太はすっかり成長して魅力的になった。…出っ歯のままなのが残念要素だが、そこは敢えてチャームポイントとして捉えたい。別人レベルに変わり果てたが、華怜ちゃんならきっと出っ歯だけで丸太だと気づいてくれるはずだ。寧ろ出っ歯がないと誰か分からんし。

ミギはアートを嗜むボーイッシュな子になっていた。他のみんなにも言えることだが、この3年で大きく変わったなあ…成長期がすごい。園山夫妻ならたらふくご飯を食べさせてあげたろうしな。成長に感慨深くなっていい。
それもあってか、おばあちゃんがミギダリと呼び捨てで呼んでいたのがより家族らしさが深まった気がする。

一方ダリは正統派イケメンに。未だに残る左頬の火傷跡が気にならないくらいイケメンだ。これまで髪型と性格、声以外はミギと瓜二つだったが、大分外見が変わったことでもうひとりひとりでいてもいい解放感があった。

みっちゃんはなんかおばあちゃんとペンフレンドになってたちょっと待とうか。
先週クールにこの世を去ったと思ったらまだ成仏していなかったと言えばいいのかこれ!?なんで!?つーかおばあちゃんはフツーに受け入れてていいの!?なんなの!?死後強まる念なの!?
しかしこれはこれで許容できるほどに面白要素になっているのが良いなあ。みっちゃんは容姿含めて面白いだけに、本当に惜しい方を亡くされたと喪失感が押し寄せてくるが…

瑛二くんが出所!!「おかえり瑛二」と声をかけてくれたのが理想通り、ここがひとつの故郷にしていいんだという嬉しさと尊さを感じる。

まさかのサリーちゃん復活!!
みっちゃんもだが、最終回だからもうオールキャストだな!まさかここでサリーちゃん出すとは思わなんだよ!かつてはダリがミギの初恋を奪ってしまった負の要素となってしまったが、今ではミギも瑛二くんも笑えるようになる喜劇を共有できているのが最高だ。

丸太お前…!華怜ちゃんをお願いしますいやマジでお願いします丸太様。

夢みたいだけど!!夢じゃなかった!!
前回瑛二くんを加えての理想郷が描かれていたが、まさか3年後にこうして形を変えてみんなで食卓を囲むとはいやはや、本当に夢にまで見ませんでしたよ…!今週はもう大満足すぎて語る要素も多すぎるんだけど、ここが最高に大好きなシーンです。

兄弟にして実の息子として、ようやくメトリーへの墓参りができた瑛二くん。これでメトリーも無事報われたことだろう。しかし最終回は残された課題を丁寧にクリアーしていくなあ。大分余裕のある構成になっている。

◆別れ

別れの日は誰にだって訪れる。このアニメもだが、直接血は繋がっていない園山夫妻その家族にも言えることだ。しかし、二度と会えないわけではない。その気になればまた会えるはずだ。
これにて『ミギとダリ』という物語は幕を閉じることになったが、物語の延長線は無限大に想像できる。

秋山くんは当然として、丸太も眼に涙を浮かべているのが嬉しい。彼らとの青春は時間を許す限りならまだまだ描けられただろうし、勿論見てみたい。空白の3年間もその気になれば描けることができるだろう。

旅立ち…えっ、ミギだけなの!?

まあそれもそのはず。
ダリは進学校、ミギはアーティスト。後者は地域によっては一緒に電車に乗るだろうが、途中で分かれて互いに背中を向け合い去っていくんだろう。こうも自由に臨むべき未来へ進んでいけるのは、「ふたりでひとり」という呪縛から完全に解き放たれた瞬間である。

「これは証明さ。僕らの心はどんなに遠く離れても…」

言うまでもなく、どんなに遠く離れても心はひとつ。なにも不安はない。再会する日がいるになるかは分からないが、それが待ち遠しくある。そしてダリを見送るみっちゃん。貴方は最後までMVPでしたね…

A la mēmoire de Sano Nami.

これはスペイン語で「佐野菜見先生を偲んで」という追悼の言葉を意味する。アニメスタッフの最後の粋の計らいが大変素晴らしかった。
フランス語にしたのは似非日本を舞台とした本作らしいチョイスだし、フランス語にすることで即座に読ませないのも余韻を失わせない気配りが出来ている。配信で見た方は「なんて書いてあったんだっけ」と再確認かつ翻訳したら「あっそういうことか!」となるわけだ。

◆総括

『ミギとダリ』全13話、無事放送終了・完結しました。
9話が神回過ぎてこの時点で今年度ナンバーワンアニメだと宣言していましたが、失速するどころか徐々に盛り上げてきて期待通り有終の美を収めてくれました。今季ではあまり注目されていなかったけども、もっと語られてほしい名作として完成されたなと喜ばしく思います。

全7巻を全13話でまとめるのは表面的に見るとむつかしそうだし、実際原作からカットされた部分は多いそうだけれど、特に違和感なくひとつのアニメとして楽しませていただきました。断腸の想いでアニメ化できなかったシーンはあったかもしれないけど、押さえるべきところは押さえられたな、『ミギとダリ』という作品の魅力が余すところなく映像化されたな、と満足しております。

アニメスタッフのみなさま、そして素晴らしい原作をこの世に送り出してくれた佐野菜見先生、本当におつかれさまでした。そしてありがとうございました。
これが佐野先生の遺作になってしまうのは大変名残惜しいのですが、今のぼくにできることはこのような素晴らしい作品を伝えることです。前作『坂本ですか?』も原作漫画・アニメ共々素晴らしい作品ですし、今見ても色褪せない名作だと自信を持ってオススメいたします。

勿論本作も今からアマプラ等で見ても全然大丈夫です。この感情のジェットコースターアニメーション。寧ろ今だからこそ一気見できる絶好のタイミングでもあります。

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