#21 少年期編 〜読書好きとハリーポッター〜
私は、読書が好きである。
ジャンルはこれ、と決まっているわけでなく、純文学からミステリー、自己啓発本やエッセイ、果ては詩集まで、過去色々な作品を読み漁ってきたと思う。
そんな話をすると、聞いた人によっては
「すごい、そんなにたくさん読むなんて読書家ですね。」
なんて言ってもらえる場合もあるのだが、それは大きな間違いだ。
そもそも私は胸を張って読書をしてますと言えるほど、頭に内容は入っていない。
馬鹿、と言われればそれまでなのだが、本当にただ“なんとなく”読んでいるに過ぎないのだ。
言い訳になってしまうかもしれないが、本の文字の一つ一つなんて追おうものなら、私は開始5分で夢の世界で旅立つ恐れがある。こればっかりは母から受け継いだ遺伝としか言いようがない。
多分、のび太と争ってもいい勝負ができるかもしれない。
そんな私の読書スタイルが確立して行くきっかけは、小学生の頃の、とある本との出会いによるものだと思う。
突然だが皆さんは、“ハリー”という名前で何を想像するだろうか。
ハリーウインストン?、絵本の“ハリーシリーズ?、色々と思いつくものはあるだろうが、私は真っ先に“ハリーポッター“と答えるだろう。
私は、というか同じ世代であれば多くはそう答えると思う。
それくらいに、私達は少年期をハリーポッターで過ごした世代なのだ。
作品との出会いは小学2年生の冬、暇で暇で畳の目でも数えていようかと思っていた私は、祖母が買い物で街に行くということなので、これ幸いとばかりに一緒にくっついて街に繰り出したのだ。
あわよくば何か買ってもらえるかも、と幼いながらに悪どい考えをしていたあの頃が懐かしい。
祖母はそんな私の思惑から、こいつと買い物をしていたら、きっと色々な物をねだられるに違いない、と感づいたのかもしれない。
とりあえず映画を見せておこうということで、ポイっと放り込まれたのが当時大人気上映中だった、ハリーポッターと賢者の石だった。
ちなみに人生初の映画がそれである。
そんな経験の人はいないだろう。時間潰しのために放り込まれた映画が初とは、当時の祖母はなかなかクレイジーだったなあと、今更ながら気づく。
映画館に放り込まれのだが、映画が人気だったので座席がなく、立見状態で一通り見た。
その後迎えにきた祖母に、
「すごく面白かった!!」
と目を輝かせて言っていたそうだ。祖母はしめたものだと思っただろう。
そんなわけで、一気にハリーポッター熱が湧き上がった私は、本があることを知り、すぐさま母に
「ハリーポッターの本が読みたい!」
としっかりねだったわけである。ねだりの対象はこれで祖母から母に移った。
すると割といつも否定する母の返事が、その時は違った。
「あー、ハリーポッターならお兄ちゃん達が読みたいって言っていたから、最新巻まで本棚にあるよ。」
とまさかの在庫あり発言だったのだ。
兄の言う事は聞くのか、と若干釈然としない気持ちもあったが、この際そんなことはどうでもいい。
いつもは意地悪くいたずらをふっかける兄達に、この時ばかりは
「グッジョブ!」
と本当に言ったわけではないが、それらしいことを思いながら、ハリーポッターを受け取った。
するとどうだろうか、このシリーズは一冊一冊がとにかく厚くて大きいのだ。
当時2年生だった私には、なかなか高いハードルだった。
しかも、映画を見終わったその時で、すでに小説は第3巻の“ハリーポッターとアズカバンの囚人“まで出ていた。
まさかの厚さの本が、3冊…これには幼い私もちょっと出鼻を挫かれそうになっていた。
しかし、あの映画の興奮冷めやらぬ今なら読めるかもしれない!
と奮起し、パラパラと読み始めた。
思えばそれが、大体で読む練習になっていたのだろう。2年生なので当然知らない言葉や漢字も出てくる。しかし、いちいち人に聞いてたら話が進まない。
そうして焦ったくなった私は、
「まあ、大体分かればいいか。」
と今につながる読み方を覚えていくことになる。
始めのうちは、うちの母も
「こいつはすごい速さで小説を読んでいる、もしかしたらハジメちゃん(バカボンの弟)のような才能があるのでは?」
と一瞬くらい期待したかもしれない。しかしよくよく見て、話を聞くと
「えー、そこは○○な感じでしょ」
とか
「うーん、あの人があの人に倒されそうになるんだよ…誰だっけ?」
と、記憶の穴が発覚したのだ。
「なるほど、こいつはなんとなく読んでいるだけか。」
と期待して損したとばかりに母は、早々私の才能に諦めをつけ、いつも通り仕事と家事に戻っていった。
そうして、大体で読み進めていったが、意外と飽きずに本を読む事ができた。足りない知識後から調べたり、後から読み返せば良いので非常に効率的だった。
幼い頃にそんな読み方を学んだ私は、以後“なんとなく”読むスタイルが定着していったのである。
今やハリーポッターも第7作目まで終わり、スピンオフ的に“ファンタスティックビースト“のような作品も出ていていまだに、面白さは衰えていない。
きっとJ・K・ローリングさんも面白い作品をまだまだ生み出してくれるだろう。
そんなことを期待しつつ、多分それらも“なんとなく“で読んでいくんだろうなあ、ごめんなさい。
と、一応謝っておく、今日この頃なのだった。
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