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琴線に触れたnote集

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何度でも読みたくなる。 出会えたことに心から感謝したい、素敵なnote集。
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#短編小説

短編小説「新春」(約5000字)

noteを投稿し始めてから5年が経ちました。 5周年記念として初めて有料の小説を投稿します。 …

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幸野つみ
6か月前
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ハイライト

                    前日の雨で桜の花はほとんど落ち、路面や水たまりに…

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ハイライト

 前の日の雨で桜の花はほとんど落ち、路面や水たまりに散らばっている。泥にまみれた花びらを…

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【小説】顔を隠す人

このままずっと、マスクをつけて生きていきたい。 誰もが一つは後ろめたく薄暗い願いを抱えて…

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掌編「カッシアリタ」 逃げて

 本当に久しぶりだねえ。  車いすの膝の上にお盆を乗せながら、マキははしゃいだ声を上げた…

月に吹く風

久しぶりにスーツケースとパスポートを用意する。 行先は日本から南へ3,210㎞。 パラオ。 * …

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短編小説 「現実の街」

「おれ、悪魔をつくる方法なら知ってますよ」 横川はそう言って、デミタスカップからエスプレッソを二滴、木のカウンターに垂らした。濃褐色のしずくが、ぽた、ぽたと不完全な円形に落ちて天井を見上げる。ほら、悪魔の目みたいでしょ。家に誰もいない時、こうやって遊びました。まだ子どもの頃。 4月から新しくアルバイトに入った横川は、大学を辞めてぶらぶらしていたのをマスターに拾われたらしい。 「愛想はいいし、覚えも早いんだけど、ちょっと変わってるかもな」 大学に入ってすぐこの店でバイト

短編小説_きみとうたたねの頃に

定時五分前になると時計に意識が向くのは、ミキちゃんの先輩になってからついた癖だった。 「…

七屋 糸
3年前
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茜色の中に

1時間に2~3便しか発着しない地方の空港。その土地で講演会の講師として呼ばれていた。講師と言…

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はじめてくれますか【短編小説】

1.  始業式の朝の校内は、とろりとした春の明るさに満ちている。  春休みはもう少し長くた…

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あの木陰にはユウレイが住んでる #月刊撚り糸

あの大きな木の名前、なんて言ったっけ。 ずり落ちる花束を左腕だけで抱え直すと、鼻先に百合…

七屋 糸
3年前
34

若草という男がいる。 引っ越しをした際、下戸なりの知識で購入した日本酒をお猪口に注ぎ、玄…

北木 鉄
3年前
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五月雨【短編】

 いつからだろう。こんなにも閉じ込められた自由のなかにいるのは、いつからだろう。もっと言…

よもぎ
3年前
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アイオカさん

何を捨てているんだろう。 何で捨てるふりしてるんだろう。 何で、こっちに気づかないんだろう。 そういう人なのだ。アイオカさんは。 コーヒーマシーンから出来上がりを知らせる音がして、コンビニの外に出た。 信号待ちをしていると、アイオカさんもコンビニから出てきて私の後ろで立ち止まった。コーヒーが熱い。持ち手を替えたいのに、どうしてか我慢する。右手が熱い。熱すぎる。 信号が青に変わる。人々に巻かれるように、アイオカさんは左に曲がっていく。私は右に曲がっていく。やっとコーヒーを持ち