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親の私にできること

金曜の夜、何だか娘の様子がおかしかった。言いたいけれど、言えないことがある、そんな感じ。

でも、なかなか話す勇気が出ないみたいで「何か思ってることあるなら言ってごらん」と伝えても、もじもじしている。

じゃあ、紙に書いてみる?と娘に提案してみると、さっそくノートにペンを走らせ始めた。

娘から渡されたノートには、こんなことが書かれていた。

ダンスの発表会終わったら、ダンスやめたい

理由を聞いたところ、ダンス自体がキライになったわけではなく、レッスン前や休憩中に誰とも話せなくて、いつも一人でいるのがつらいとのことだ。

「自分から誰かに話しかけるのは怖い」と言って、娘は泣いている。

そして再び、ノートに何か書き始めた。

そこには

○○ちゃんが同じダンス教室だったらよかった

と、書かれていた。

○○ちゃんは、年少のときから仲良のいい友だちで、娘が不登校になってからも、たまにお互いの家で遊んだりしている。

娘はおそらく、勇気を出して新しい友だちをつくるのではなく、もともと話せる子がいたら、楽に一人を回避できると考えたのだろう。

それでは、根本的な問題の解決にはならないと私は思った。人と関わることは習い事に限らず、生きるために必要な力だ。この問題は、多少しんどくても娘自身で乗り越える必要がある。

***

土曜日。ダンス発表会の前日であり、本番前最後のレッスンの日。

娘はいつもどおり起きてきたものの、パジャマのままリビングの床に転がって、動こうとしない。レッスンに行きたくないのが、見え見えだ。

一応、娘の気持ちを確認するためにノートとペンを渡す。

新しいページにたった一文

今日はダンス行きたくない

と書かれていた。ああ、やっぱりそうだよね。

娘の気持ちは痛いほど分かる。でも、行きたくないとはいえ、発表会の前日だ。今日休めば、明日だって行きたくなくなるだろう。先生や他のメンバーにも迷惑がかかる。

そんなこと、娘は分かっているはずだ。

それでも本音を教えてくれるのだから、曖昧な態度をとってはいけない。ここはきっぱり言わないと。今私にできるのは、娘の背中を押すことだ。

腹をくくって、娘の横に座る。

行きたくない気持ちは分かるよ。でも、○○の個人的な理由で本番前日に休むってことは、自分から誰かに話しかけるよりも、ずっとずっと覚悟がいることなんだよ。それでも行かないっていうなら、自分で先生とメンバーに説明しな。

そう私に言われた娘は、何度も頷きながら涙をこぼしている。

しばらくすると、気合いが入ったのか、起き上がって洗面所へ向かった。

その背中を見て、根拠はないけれど、この子は大丈夫だと確信する。親として伝えるべきことは伝えた。あとは、娘を信じて応援するだけだ。


▼娘が教えてくれたことを記録したエッセイです。

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