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第十幕:冬の本公演8 ミュージカル研究会の頃-汗と涙の青春ストーリー-

そこは駅からは結構遠く、徒歩で15分くらいある便利とはいえない場所にあった。3車線の大通りから横道に入った場所にあり、ちょっと見つけにくい劇場である。地下にあるのだが、春公演とは違い、照明から音響、座席まで、本物の劇場という事もあり、とても雰囲気がある場所だった。僕はここがかなり気に入った。

準備から公演が終わるまで一週間ほどだったが、毎日、緊張しながら、冷たい手をポケットに入れて、通ったのを思い出す。車がたくさん走っていたが、空気は新鮮に感じられたものだった。

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それでは、話しを戻して主人公が最後に訪れる象の世界に案内しよう。ネズミ、猫と食物連鎖の世界をさまよった主人公はボロボロだったかもしれない。彼は人間でも厳しい現実にぶつかった。さらに、この輪廻世界でも、生きることの辛さに直面したのである。

主人公は今度は象の赤ちゃんに生まれ変わっていた。最初に迎えるのはダンス部長の夏子さんである。
夏子さんは、ひょうひょうとして、いつも冷静沈着だ。感情的になりがちなミュー研女子にあって、珍しいタイプである。歌もダンスも芝居もやはりうまく、ダンスの振り付けもやっていた。彼女は安心感を与えてくれる中人だった。僕は何かと彼女とペアを組んで練習したり、面倒をみてもらう機会も多かった。
そんな夏子さんが象の世界では飼育係として、落ち込んだ主人公を最初にむかえる。
そうここは、動物園なのである。

さらに、今度は象のメンバーが出てくる。
象の長老は鉄郎である。この深いテーマに説得力を与えられるのは、彼しかいなかっただろう。
象は赤ちゃんやお母さん、男の象役の渡もいる。主人公は子供の象になっていて、お母さん役もいるのだ。
このお母さん役は、Wave4人衆の五月さんだ。彼女は松たか子にも似ている美人で、歌も上手く、舞台がとても好きな人だ。作詞、作曲、脚本まで書いてしまう。そんな彼女だから、華をもっているわけである。

こんなゾウたちが歌う最初の曲がこれだ。

つづく…(続きを見たい方は、ハルカナル屋根裏部屋へ!)

第一幕:未知なる舞台へ!
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/第一幕:未知なる舞台へ!

第二幕:衝撃! 初役はみんなが大嫌いなあれ!?
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act2

第三幕:最初の公演
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act3

第四幕:夏の発表会
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act4

第五幕:脚本会議、夏の陣
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act5

第六幕:夏休みも大変!? 音響スタッフで出陣!
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act6

第七幕:夏合宿
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act7

第八幕:猫たちが大騒ぎ!?
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act8

第九幕:試練の秋
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act9

第十幕:冬の本公演
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act10

登場人物

-新人-
僕:元帰宅部。歌、ダンス、芝居、3拍子そろわない珍しい新人。しかも、入部したのが2年生の時だったため、振り返るとかなり浮いた存在だった。
岩尾…親友。2浪しているフリーターながら、ミュージカル研究会に入る。
鉄郎:某都内に通う高校時代、伝説となった男。野性的で、繊細で、躍動的で、とても頭がよく、次元の違う存在感を放っていた。どこを行くのも裸足で歩いていた。
冴子…高校時代は声楽をやっており、作曲ができた。才能にあふれており、同期で最初に頭角を現した存在だった。彼女の作る曲は作品にしっかり寄り添いながらも、さらに作品を高めるような、素晴らしい曲が多かった。のちにNHKのみんなの歌に曲を提供した。
優有:歌と芝居が大好きで他の女子大学からミュー研に通っている。穏やかで性格が良く、みんなから好かれており、脚本家の坂上さん、美也子さんらに気に入られ、たびたび彼らの作品に主役で出演することになる。
芽衣…大阪出身でのりやよく、ダンスが好きだった。若くして亡くなってしまい、この作品を書くきっかけになった存在の1人。

-中人(2年目)-
美也子さん:容姿は少しボーイッシュで、性格は物静かで控えめ。宮沢賢治を愛しており、彼女が生み出す脚本は、独特で素晴らしい世界観だった。
江夏さん:新人の時はぺけをつけられていた僕や岩尾とかなり距離があり、あまり話す機会はなかった。坂上さんとおなじ愛知出身で、師匠と弟子のような間柄だった。普段はちゃらんぽらん、三枚目だが、ミュー研への思い入れが人一倍強く、男子では歌、ダンス、芝居が一番うまかった。とても個性があり、 後に百萬男 – フジテレビに出演した。
時子さん: 歌・ダンス・芝居、すべてのレベルがトップクラスの先輩だが、怒ると鬼より怖く、男子全員に恐れられていた。
松田さん:初対面の時に「俺、次の舞台で主役とっちゃうよ!」と言ってのけた自信家。実際は繊細で神経質な一面もある。一方でできの悪い後輩を気にかけ、面倒見の良い一面もあった。
夕実さん:松田さんの彼女。小柄でかわいらしく、親切な先輩。

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