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第十幕:冬の本公演5 ミュージカル研究会の頃-汗と涙の青春ストーリー-

しかし、この時は”通しっていうのはとても貴重な時間、無駄にしてはいけないということを話して、”ちょっと、気が緩んでいる。あくびなんてもってのほかだぞ”なんて、それほど怒られなかったので、かなりほっとした記憶がある。

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このように毎週末に通しをして、OB,OGからダメ出しを受けつつ、僕たちは緊張感を高めていった。これは後で聞いた話だが、メインキャストの男子2人、すなわち主人公の江夏さんと、謎の男役の幹事長である真壁さんは、1カ月間凄まじいことをしていたことがわかった。
真壁さんにあとから聞いたことだが、”あの時は大変だったよ”なんてことから始まった。
彼らは公式練習の間はとにかく、自分たちの練習はさておき、他のメンバーの練習を見ることにつとめていた。というのも、40人もいるから、美也子さんはいっぱい、いっぱいという感じで、隅々まで目が行き届いているとは言い難かった。メンバーたちも色々もめごとがあってテンションが下がり、雰囲気が悪くなった時期もあったから、盛り上げることも必要だった。真壁さんと江夏さんはつとめて明るく振舞いながら、何とか盛り上げるためにそういうことをしていたのだろう。

そして、終電の時間になった夜12時過ぎ、メンバー帰った後に、自分たちの練習を始めたということである。すごい情熱である。僕はこのエピソードを聞いた時、心から尊敬の念を抱いたものだ。なにが彼らの情熱にかりたてたのだろうか。
主人公の江夏さんはちゃらんぽらんなように見えて、 実はしっかり者である。主役という責任感もあり、やる気も高かったのだろう。
一方、旧人、幹事長の真壁さんは、この舞台が最後だったので、いわば3年間の総決算だ。だから、思い残しはないように全力を出そうという気持ちが強かったのだと思う。もちろん、幹事長になるほどの人だから、とてもしっかりしていて、みんなのよき相談役でもあった。彼の素晴らしい所は、阻害されがちな落ちこぼれ組に対しても、分け隔てなく 声をかけてくれたことである。とても公平で、穏やかな性格だった。もちろん、うちに秘めたものは強かったと思うのだが……ちなみに、真壁さんは時子さんの彼氏だった。

つづく…(続きを見たい方は、ハルカナル屋根裏部屋へ!)

第一幕:未知なる舞台へ!
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/第一幕:未知なる舞台へ!

第二幕:衝撃! 初役はみんなが大嫌いなあれ!?
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act2

第三幕:最初の公演
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act3

第四幕:夏の発表会
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act4

第五幕:脚本会議、夏の陣
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act5

第六幕:夏休みも大変!? 音響スタッフで出陣!
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act6

第七幕:夏合宿
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act7

第八幕:猫たちが大騒ぎ!?
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act8

第九幕:試練の秋
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act9

第十幕:冬の本公演
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act10

登場人物

-新人-
僕:元帰宅部。歌、ダンス、芝居、3拍子そろわない珍しい新人。しかも、入部したのが2年生の時だったため、振り返るとかなり浮いた存在だった。
岩尾…親友。2浪しているフリーターながら、ミュージカル研究会に入る。
鉄郎:某都内に通う高校時代、伝説となった男。野性的で、繊細で、躍動的で、とても頭がよく、次元の違う存在感を放っていた。どこを行くのも裸足で歩いていた。
冴子…高校時代は声楽をやっており、作曲ができた。才能にあふれており、同期で最初に頭角を現した存在だった。彼女の作る曲は作品にしっかり寄り添いながらも、さらに作品を高めるような、素晴らしい曲が多かった。のちにNHKのみんなの歌に曲を提供した。
優有:歌と芝居が大好きで他の女子大学からミュー研に通っている。穏やかで性格が良く、みんなから好かれており、脚本家の坂上さん、美也子さんらに気に入られ、たびたび彼らの作品に主役で出演することになる。
芽衣…大阪出身でのりやよく、ダンスが好きだった。若くして亡くなってしまい、この作品を書くきっかけになった存在の1人。

-中人(2年目)-
美也子さん:容姿は少しボーイッシュで、性格は物静かで控えめ。宮沢賢治を愛しており、彼女が生み出す脚本は、独特で素晴らしい世界観だった。
江夏さん:新人の時はぺけをつけられていた僕や岩尾とかなり距離があり、あまり話す機会はなかった。坂上さんとおなじ愛知出身で、師匠と弟子のような間柄だった。普段はちゃらんぽらん、三枚目だが、ミュー研への思い入れが人一倍強く、男子では歌、ダンス、芝居が一番うまかった。とても個性があり、 後に百萬男 – フジテレビに出演した。
時子さん: 歌・ダンス・芝居、すべてのレベルがトップクラスの先輩だが、怒ると鬼より怖く、男子全員に恐れられていた。
松田さん:初対面の時に「俺、次の舞台で主役とっちゃうよ!」と言ってのけた自信家。実際は繊細で神経質な一面もある。一方でできの悪い後輩を気にかけ、面倒見の良い一面もあった。
夕実さん:松田さんの彼女。小柄でかわいらしく、親切な先輩。

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