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【短編】ジェリービーンズ・ゴースト

【短編】ジェリービーンズ・ゴースト

最近よく奇妙な夢を見る。
飲んでいる薬のせいだろうか。
それはあまりに詳細で明確だから、時々現実がどれか分からなくなりそうになる。

でも現実には夢と違うところが一つある。
それは連続性があるということだ。まるで続き物のドラマのように。

そこで気づいた。
逆に言えば夢は基本的に一話完結なのだから、
見た夢を短編小説にしてみたら面白いのではないかと。

これから書くのは、4月末に私が見た夢の話だ。

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とある二人のお話(第三章)

とある二人のお話(第三章)

第三章

帰国の日。優斗と風花は空港で日本行きのフライトを待っていた。
「いやー、まいったよ。ビジネスクラスしか取れないなんてさ!」
優斗が笑った。
明るさが逆に痛々しい、少し乾いた笑い方だった。
風花はそんな優斗を見て、胸が締め付けられる思いがした。

「あ、ちょっとスタッフさんに用があるから行くね」
優斗が突然歩いて行き、空港スタッフに声をかけた。
何やら話し込んでいる。

しばらくするとVサ

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とある二人のお話(第二章)

とある二人のお話(第二章)

第二章

自分の寮に、新しく日本人が来るらしい。
留学期間も折り返しを過ぎた風花のところに、3月のある日そんな連絡が飛び込んできた。部屋で一人黙々と勉強していた風花は、驚きと喜びで思わず手を叩いた。

風花はとある東京の大学の学部3年生だ。
交換留学でイギリスに来て、マンチェスター大学で言語学の勉強を続けていた。
学業成績は教授陣から学科一と太鼓判を押されるほど優秀だったが、人付き合いは苦手な方。

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とある二人のお話(第一章)

とある二人のお話(第一章)

※この物語は、フィクションではありません。
 私自身と恋人をモデルにした物語です。

第一章

優斗はイギリス行きの飛行機の中で胸を躍らせていた。
この留学では、どんなものが得られるのだろう。
どんな経験をし、いくつの見たこともない景色が見られるのだろう。

優斗は長野県にある国立大学の院生だった。
修士課程の二年目、文科省の奨学金の選考に通り、念願のイギリス留学の切符を手に入れたのだった。

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